こばにゃんの2023-2024POG指名馬リスト

昨期POGの総括と今期POGの展望

 今年の日本ダービーも、またクビ差、届かなかった。目前にして叶わなかったPOG指名馬による日本ダービー制覇の夢を胸に、気持ちを新たにして臨む今期のPOG指名馬について皆さんにご紹介したい。

 昨期POGは、勝ち上がりが5頭で、ソールオリエンスが京成杯皐月賞を制覇しダービー2着、ラヴェルアルテミスSを制覇しオークス4着、ドルチェモアがサウジアラビアRCと朝日杯FSを制覇するなどG12勝、重賞5勝。牡馬、牝馬、そしてマイル路線に重賞馬をそれぞれ送り込み、望外の結果を得た。

皐月賞を制し日本ダービーで2着となった昨年の指名馬ソールオリエンス

 一方で、クラックオブドーンは頓挫続きで6月の1勝止まり、ルクスグローリアは調教中の事故で予後不良、ヴァンビスタは装鞍所で厩務員を蹴りレース中に骨折、ランドオブラヴは馬体が増えず気性難でコントロール不能になるなど、順調にレースに使って結果を出すということがいかに難しいかということも改めて実感する結果になった。

 とはいえ、初開催のうま同POGではPOGの先輩方に食い込んで2位の賞金を獲得。POG経験者として一定の実力を示すことはできたと言えよう。

 今期POGの方針は昨期の方針を踏襲し、以下の通りである。

〇高額馬、人気馬はできるだけ避ける。誰も知らない馬を指名してその馬が活躍するのが、POGの醍醐味と考える。

〇賞金のために早熟傾向が強い馬を選ばない。POGで優勝するより、競走馬として、更に種牡馬繁殖牝馬として、これからの競馬界を担っていけるような素材を見出すことを目指す。

〇牡馬5頭、牝馬5頭。様々な種牡馬の特徴を掴むために、できるだけ種牡馬は被らないようにする。

 今期はハーツクライが最終世代。これまでハーツクライ産駒はアクアテラリウム、アッシュフォードと指名してきたが、結果が出ていない。今年は血統というより馬体や評判を重視して、牡馬のエースとして堀厩舎のインクルージョン牝馬のスケール枠で斉藤厩舎のルシフェルを指名した。

 毎年2頭指名してきたキタサンブラック産駒は谷間の世代。母サンクボヌールや母タイキオードリー、あるいはダノンチェイサーやヴィクティファルスの下が人気となりそうだが、ミスヨコハマの走りを見て早くからリストに入れていたクリスマスパレードを指名。父がカレンブラックヒルからキタサンブラックに変わるのは絶対にプラスであろう。大穴と思っていたが、ノーザンファーム早来での評価が高く各種POG本で大きく取り上げられていたのは想定外だった。

 新種牡馬レイデオロとブリックスアンドモルタルから1頭ずつ。マウリノはドルチェモアの近親だが、馬体写真をみてピンと来たので指名。小顔で馬体のバランスも良く、直感に従ってみることに。テラメリタ新馬戦初日にデビュー予定。数多くの活躍馬を輩出した一族の出で、社台ファームが高い期待をかけるブリックスアンドモルタルの看板馬として期待通りの活躍をしてほしい。

 コイヌールは見つけた瞬間指名が決まったおしゃれ血統馬。競馬オタクはこういう馬に弱い。ダイヤモンドビコーの血統も魅力だが、それ以上に父リオンディーズでありながらエピカメサンデーの配合を実現させている芸術点の高さが光る。「血統枠」にふさわしいロマンあふれる1頭。満場一致でJRA賞を受賞して祖母の名を高めたい。

 ベゼルファセットは完全に先物買い。姉のシャドウディーヴァは好きな馬だったが、この母からはまだ活躍馬が出るだろう。2022年産の弟はキタサンブラック産駒で、こちらにも熱視線。既に指名候補にリストアップしている。サトノダイヤモンド×ダイヤモンドディーヴァという絶対に砕けないダイヤモンド配合だが、馬体や気性には不安も多い。宮田厩舎には今年こそ期待に応えて大きなタイトルを奪取してほしい。

 今年はキズナエピファネイアの繁殖の質が高い。しかしエピファネイア産駒の最近の成績はあまりに不信感が強く、キズナ産駒を選ぶことになった。キズナ産駒から2頭指名するプランもあったが、やはりキズナ牡馬が走るイメージが湧かない。キズナ牝馬の中で、これを指名しなかったのに走られたら悔やんでも悔やみきれないということで、イクイノックスの半妹ガルサブランカを指名。兄は既に歴史的名馬の領域に足を踏み入れており、兄ほどの期待は禁物だが、むしろ配合の良いキズナ牝馬らしく堅実に走ってくれるだろう。

 今年からダート路線が大幅に拡充されることから、ダート馬の指名に走ったPOGプレイヤーは多いだろう。しかし、ダート馬の指名は高額良血馬が順当に走るわけではなく、知識の蓄積もないから非常に難しい。当初はシニミニやコパノリッキーホッコータルマエなどガチガチのダート種牡馬から指名する手や、あるいは昨年結果を出したマインドユアビスケッツ産駒の指名も考えたが、JRA-VANPOG動画をみてひとめぼれしたオルフェーヴル産駒のウェックスフォードを指名。姉のサラスやシャムロックヒルは芝重賞を勝っているが、高木登厩舎は芝・ダート両方で受賞制覇の経験がある実力派トレーナー。芝からダートに転向してあっという間に世界の頂点まで上り詰めた厩舎の先輩ウシュバテソーロの後を追いかけて、芝ダート兼用二刀流の怪物として活躍を期待する。

 最後まで迷ったのが牝馬のエースだった。母サミター、母スウィートリーズン、母ウィクトーリア等、様々な候補から選びきれずにいたが、Twitterで出資者の方の最近の馬体写真を見て、非常に良かったのでロードカナロア産駒のティーサファイアに決定した。先日シャンパンカラーがNHKマイルを勝つなど勢いのある血統で、牧場での評価も良くPOG本でも大々的に取り上げられていた。社台Fは近年改革によって成績を再浮上させ、スターズオンアース、ソールオリエンスと2年連続クラシックで結果を残している。今年の社台Fのエース牝馬として、母子桜花賞制覇へと邁進してほしい。

 10頭揃って最後まで心残りだったのが、ドゥラメンテ産駒が入らなかったことである。リバティアイランドの2冠制覇など飛ぶ鳥を落とす勢いのドゥラメンテだが、今年は良さそうな馬が高額馬に集中し、泣く泣く指名なしとなった。最後までリストに残っていたのが母プリティカリーナで、この馬がクラシックホースになったときは悔やんでも悔やみきれないであろうが、それでも悩んで悩んで選んだ今年の10頭を信じて、2024年のクラシックを全力で楽しんでいきたい。

 

指名馬(牡馬)

牡馬 エース

インクルージョン Inclusion

牡/黒鹿毛/1月24日生

ハーツクライ/母インクルードベティ(Include)/美浦・堀/ノーザンF/キャロットF/包括。世代をまとめるような活躍を期待して。

ハーツクライはダービー馬を2頭輩出した名種牡馬で今年が最終世代。母インクルードベティはマザーグースS(米G1)などアメリカで重賞2勝。母父のIncludeは新潟大賞典勝ちのサンデーウィザードやダービー卿CT勝ちヒーズインラヴを輩出したシーズインクルーデッドの父として知られるが、日本では馴染み薄い血統である。デインヒルストームキャットを持たないからハーツクライ産駒の定番POG向け配合とは言えないが、母系にDanzigNijinskyを内包するのはサリオスと同様であり、1月生まれのアドバンテージを活かしてクラシックの時期から一線級の活躍を期待する。セレクトセールではやや案外という価格であったが、ノーザンファーム早来では馬体の成長につれてクラシックを目指せる逸材と日々評価が高まっている。ついにダービートレーナーの称号を得た堀調教師の高い育成力のもと、その活躍で世代を、そして競馬界全体をも包み込む。

 

牡馬 血統枠

コイヌール Kohinoor

牡/青鹿毛/1月21日生

リオンディーズ/母ウインジュビリー(シンボリクリスエス)/美浦・鹿戸/新冠本牧場/キャロットF/世界最古のダイヤモンド

リオンディーズは名牝シーザリオの産駒で、デビュー2戦目にして朝日杯FSを勝利した。種牡馬としてはテーオーロイヤル、インダストリア、アナザーリリックなど多彩なタイプの競走馬を輩出する。本馬はリオンディーズに母父シンボリクリスエス、母母父サンデーサイレンスだから、エピファネイア産駒のデアリングタクト、クラヴェル、スカイグルーヴとは7/8同血の関係にあたる。祖母ダイヤモンドビコー阪神牝馬Sなど重賞4勝。曽祖母ステラマドリッドは米G1を4勝した名牝で、ミッキーアイル、アエロリット、ラッキーライラックなどを輩出した超名牝系の出である。気性面の不安こそあるが、背中の良い馬との評判でマイル〜2000mでの活躍が期待される。既にゲート試験には合格しており、7月にデビューする見込み。血統的にも早期からの活躍を期待できる。美しさすら感じる好配合で、名牝の血はとびきり大きな結晶を生み出す。


牡馬①(スケール重視)

ベゼルファセット Bezel Facet

牡/鹿毛/2月27日生

サトノダイヤモンド/母ダイヤモンドディーバ(Dansili)/美浦・宮田/ノーザンF/サンデーR/ブリリアントカットに8つある輝きを放つ面

サトノダイヤモンドは3歳で菊花賞有馬記念を勝利。種牡馬初年度からサトノグランツ、シンリョクカを輩出したが、種牡馬としてはやや晩成で、距離が伸びる程良いという傾向を見せた。半姉シャドウディーヴァは府中牝馬S勝ち馬。母父父がデインヒルでDanzig5×4だから配合としてはサトノグランツに似て、本馬も3歳になってから本領を発揮するややズブめの中長距離馬だろう。姉のシャドウディーヴァやハウメアが5歳になっても活躍したように、本馬も3歳夏を超えて本格化し、中長距離G1の常連として息の長い活躍を期待する。育成段階の今はフォームや成長度に関してやや不安なコメントも見られ、秋冬のデビューが想定されるが、血統と骨格からみて素晴らしい素質を秘めていることは疑いない。素質馬を数多く預かりながら結果が物足りない厩舎の現状だが、焦ることなく砕けぬ才能を磨き上げ続けることができれば、厩舎、ひいては父の産駒を代表して抜群の輝きを放つだろう。


牡馬②(早期デビュー)

マウリノ Mau Lino

牡/黒鹿毛/3月6日生

レイデオロ/母マウレア(ディープインパクト)/美浦・手塚/下河辺牧場/落合幸弘/永遠の輝き(ハワイ語)

レイデオロはキンカメ産駒のダービー馬で、今季から産駒がデビューする新種牡馬レイデオロ種牡馬としてのポイントはやはりサンデーを持たないことと、それでいてウインドインバーヘアの血を持っていることで、ディープ牝馬との配合はウインドインハーヘア4×3のクロスになる。このクロスがどのように作用するかが、種牡馬としてのレイデオロの未来を左右するであろう。本馬はそのレイデオロにディープ産駒を配合するパターンで、母マウレアは桜花賞アユサンの妹で阪神JF3着。おいのドルチェモアが昨年朝日杯FSを勝利するなど、勢いのある血統である。本馬は初子ながら、馬格は十分で、牧場ではドルチェモアと遜色ない動きと評価が高い。既に6月18日東京芝1600mの新馬戦でデビューが決定している。早い時期からマイル重賞で輝きを放ち、父に待望の初タイトルを届ける。


牡馬③(ダート)

ウェックスフォード Wexford

牡/芦毛/4月18日生

オルフェーヴル/母ララア(Tapit)/美浦・高木登/社台F/社台RH/アイルランドの州名

オルフェーヴルはラッキーライラックオーソリティなどを輩出。近年マルシュロレーヌでBCディスタフ、ウシュバテソーロでドバイWCと産駒が海外のビックタイトルを次々と勝利し、種付け数が増加するなど注目度を増している。母ララアはアメリカの2歳G1馬。全姉のサラス、半姉のシャムロックヒルが共にマーメイドSを勝利しているが、ともに4歳での戴冠で、シャムロックヒルが10戦目で初勝利を挙げたように、晩成傾向の強い血統と言える。母系にSeattle Slew、Sadler's Wellsを持つが、これはどちらもオルフェーヴルの成功配合パターン。母の産駒はサラス、セラピア、シャムロックヒルと牝駒が結果を出す一方で牡駒がこれまで結果を出してこなかった点はやや気がかりだが、牧場では抑えきれないほどの前進気勢で坂路を力強く駆け上がっており、担当する高木登調教師も期待の2歳馬と名前を挙げる。ダート転向から僅か5戦でG1タイトルを奪取したウシュバテソーロを育てた名トレーナーの元、芝ダ兼用二刀流の怪物として活躍し、父が僅か届かなかった憧れの大舞台へと歩を進める。

 

指名馬(牝馬)

牝馬 エース

ティーサファイア Teal Sapphire

牝/鹿毛/4月15日生

ロードカナロア/母ジュエラー(ヴィクトワールピサ)/栗東・杉山/社台F/社台RH/オーストラリアで産出されるブルーグリーンのダイヤ

ヴェールランスの半妹で、母ジュエラーは桜花賞馬。祖母バルドウィナの一族はジュエラーの他にもワンカラット、ワンダイレクト、アラタ、シャンパンカラーら国内で活躍馬を多数輩出。ロードカナロアといえばSpecialの牝系が外れない鉄板配合だが、本馬はSpecialを持っていない。とはいえ、同牝系から、ほぼ成功パターンの近いドゥラメンテとの配合でシャンパンカラーが出ているのだから、カナロアとの配合でも十分成功できる可能性があると言えよう。ただし、ワンカラット、ワントゥワン、ワンダイレクトの親子にしても、シャンパンカラーにしても、母ジュエラーにしても距離適性はほぼマイラーといった状況で、おかげに父がカナロアだから本馬も間違いなくマイラーだろう。生産された社台Fでは芝向きの素軽さを高く評価され、吉田照哉氏は「走る」と太鼓判。馬体重も順調に増え、課題であった前進気勢の足りなさも解決。牝馬三冠の経験を持つ杉山晴紀厩舎のサポートも心強い。へこたれない芯の強さで自身の才能に磨きをかけ、桜の仁川で偉大な母を超える輝きを放つ。

 

牝馬 血統枠

ガルサブランカ Garza Blanca

牝/鹿毛/4月16日生

キズナ/母シャトーブランシュ(キングヘイロー)/美浦・木村/ノーザンF/シルクR/白鷺(西)

シャトーブランシュはミスビアンカ、ヴァイスメテオール、イクイノックスとどんな父との配合でも成果を出し、母としてすでに名牝と呼ばれる域に足を踏み入れつつある。兄イクイノックスはLyphrdとHaloのクロスによってその血統表にちりばめられた名馬の才能を一頭に凝結させた名配合の傑作であったが、父がキズナに代わった本馬は、シンプルに母父キングヘイローや母系のNureyevとの相性の良さを評価すればよい。キズナは既にフィリーサイアーの傾向を示しており、牡馬はディープボンド、バスラットレオン、アスクワイルドモアと切れ味に欠け勝ちきれない先行馬がほとんどなのに対し、牝馬はソングライン、アカイイト、ファインルージュと既にG1級の名馬を輩出している。キズナ産駒最大の傑作も、おそらく牝駒となるであろう。5歳で大成した母の産駒は晩成の傾向が強く、本馬も馬体の完成は早くて4歳に入ってからだろう。しかしながら、その素質の高さからクラシックにおいても兄のように十分な成果を出してくれるであろうし、将来的には父の産駒の代表馬として大きな舞台に羽ばたいていくことを期待する。


牝馬①(スケール重視)

ルシフェル Lucifer

牝/鹿毛/4月8日生

ハーツクライ/母アルアリングスター(Exchange Rate)/栗東・斉藤/ノーザンF/キャロットF/明けの明星(ラテン語)

ハーツクライ産駒の活躍馬を見出すのは難しい。それは一重に、「これが鉄板の黄金配合」という単純な配合傾向がなく、どんな血統の牝馬とも結果を出し、また狙いすましても走らないケースがままあるからである。本馬の母アルアリングスターはBCジュベナイル2着。母母父Jump Startだから配合はハーパーに似るが、全姉のキャラメルシフォンは苦戦した。しかしながら、本馬は牧場において「切れるハーツ」、「背中がいい」等一貫して高評価で、成長曲線はゆっくりだが、クラシックを目指せる馬との評価を受けている。既に入厩の目途も立っており、ある程度早い時期から走れそうな点も良い。距離が伸びていいのは間違いなく、オークス、そして古馬になってから中距離戦線での活躍を期待する。馬名の「ルシフェル」は命名理由こそ「明けの明星」だが、どちらかと言えば「堕天使」の印象が強く、特に海外においてはマイナスイメージもついて回るだろう。しかしながら、「堕天使」は日本においては特にサブカルチャーの分野においてポジティブに使われてきた。「かわいい堕天使」ルシフェルはまずは国内でアイドルホースとして頂点に立ち、「Kawaii」カルチャーを背負って海外進出を目指す。


牝馬②(早期デビュー)

テラメリタ Terra Merita

牝/芦毛/2月14日生

父ブリックスアンドモルタル/母テラノヴァ(ヴィクトワールピサ)/栗東・須貝/社台F/社台RH/素晴らしい大地(ラテン語)

父ブリックスアンドモルタルBCターフ馬で、社台ファームが期待をかける新種牡馬。どのような配合が結果を出すかはまだ未知数で、米国産馬だがやや欧州的な要素が多く、基本はサンデーサイレンスを持つ国内の繁殖牝馬との配合でスピードを補うことになるだろう。祖母は阪神牝馬S勝ちのエアトゥーレで、スキーキャプテンスキーパラダイス以来、長年にわたってJRAで重賞馬を出し続けている点からも血統の優秀さが分かる。また、皐月賞を勝ったキャプテントゥーレ(父アグネスタキオン)や古馬になって長距離重賞で成果を出したシルヴァーソニック(父オルフェーヴル)を見れば分かるように、父の血統の美点を活かす牝系で、かつ母父ヴィクトワールピサだからサンデーサイレンスのスピードも受け継いでおり、父のポテンシャルを最大限生かすにこれ以上ない配合といえよう。父がStorm Birdの3×3と強いクロスを持つから、あまりクロスが濃くならない点も良い。牧場では吉田照哉氏が「超ピン」と評し、6月3日阪神芝1600mの新馬戦に早速エントリーされるなど、父の評価を高める孝行娘としての高い期待が伺える。クロノジェネシス以来の芦毛牝馬スターホースとして、父の名を上げる活躍を期待したい。

 


牝馬③(穴馬)

クリスマスパレード Christmas Parade

牝/青鹿毛/3月29日生

キタサンブラック/母ミスエリカ(Blame)/美浦加藤士津八/ノーザンF/G1レーシング/ツツジ科エリカ属の常緑低木の品種名

キタサンブラックは初年度からイクイノックス、2年目にはソールオリエンスらを輩出し、低評価を覆し次代のリーディングサイアー候補に躍り出た。しかし、今季は種付け頭数が少ない「谷間の世代」で、繁殖牝馬の質も高くない。本馬の半姉ミスヨコハマは赤松賞勝ち馬で、昨年の阪神JFにも出走した。父がカレンブラックヒルからキタサンブラックに変わることで、マイルをスピードで押し切る姉とは違い、本馬は中距離戦でキレを発揮するタイプである。牧場では既に抜群の動きを見せ、クラシックを意識できる馬との高評価を受ける。トップラインの美しさ、量より質の面で優れる筋肉など走るキタサンブラック産駒の特徴を持つ本馬は、厩舎に初のタイトルを、そしてキタサンブラック産駒に初の牝馬G1をもたらすことができる隠れた逸材である。まずは姉が届かなかった年末のビックタイトルを狙い、早速我々にクリスマスプレゼントを届けてくれることを期待する。

 

※競走馬の各種情報はnetkeiba(https://www.netkeiba.com/)の各馬のページを、その他POGに関連する各種情報については

競馬王編集部 『競馬王のPOG本2023-2024』 ガイドワークス 2023

須田鷹雄監修 『POGの達人』 光文社 2023

『Gallop臨時増刊 丸ごとPOG2023-2024』 産業経済新聞社 2023

栗山求 望田潤 監修『パーフェクト種牡馬辞典』 自由国民社 2023

を参考にした。

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こばとんのPOG日記 #1 ウマ娘オタクによるPOGのススメ

こばとんのPOG日記#1 ウマ娘オタクによるPOGのススメ

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2021年こばとんのPOG馬・アグリと川田将雅騎手(写真はかずや氏提供)

「この一年で週末の過ごし方が大きく変わった」。そう実感しているオタクは少なくないのではないか、私もその一人である。

 社会現象まで起こしたゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』は、コンテンツそのものだけでなく、競馬の面白さを教えてくれるコンテンツである。自分が好きな作品の中では、例えば『ガールズ&パンツァー』がそうであるように、題材としたコンテンツへの多大な愛とリスペクトを秘めて、「こだわって」作られたアニメは、私たちの世界を広げてくれる。

 『ウマ娘』もまさにそういったコンテンツで、レースのあれこれから競馬場、競走馬に関すること、競馬の様々な要素をみごとに取り込んでいて、コンテンツに触れるだけで競馬の魅力までも知ることができる。だからこそ、この1年でオタクの土日のタイムラインはカタカナの馬名で満ち溢れることになったのである。

 

 ウマ娘は昨年の2月にリリースされたが、リリース当初からダウンロードしてプレイしていた私はすっかりウマ娘の虜になった。アニメも徹夜して全部観た。「鉄は熱いうちに打て」である。ウマ娘を知って1か月、私はついに競馬の世界に足を踏み入れることになった。

 ちょうど一年前の大阪杯。人のいない府中競馬場へと足を運んだ時のことは、以下の記事を読んでほしい。

 

tsuruhime-loveruby.hateblo.jp

 そのころの私は、競馬の競争をどう楽しめばいいのかということを、もう全く知らなかった。馬券を買うこともなんとなく怖さがあった。買い方もわからなかった。

 次第に、レースを、予想を、馬券を理解してくると、今度はうっすらとした違和感を覚えた。確かに競馬は面白い。けれど、本質的に「馬券を当てたくて」競馬を見ているのではない。ウマ娘で知った競馬の面白さと、予想して馬券を買う競馬の楽しみ方では、同じ競馬を見るのでも、微妙にズレがあると気づいたのである*1

 きっと皆さんも、初めてウマ娘のURAファイナルズで育成をしたときに、泣いたことだろう。最後まで導いてやることがどれほど難しいことか。負けても負けても笑顔でいるウララを勝たせるために腐心して、最後に観たうまぴょい伝説は、涙なしには見られなかった。

 ウマ娘の感動を握りしめたまま競馬をみると、どうしてもその感覚のズレが気になるのである。もちろん、推し馬を見つけることも、それを追いかけていくことも、そう難しいことではない。だけど、あの「担当ウマ娘が決まって、メイクデビューからクラシックへ進んでいって、グッドエンドを目指す」という体験は、ただ競馬を見ているだけでは、なかなかたどり着けるものではない。

 

 結論から言えば、ほんとうの意味でこの経験をするためには、馬主になるしかない。しかし、もちろん馬主と言うのは、東京大学に入って有名企業に入ったって手に入らない額の収入が無ければなることができない。もちろん一口馬主といって、会費を払いながら一口数万円という金額を払えば、100分の1か1000分の1の金額を払って馬主になれる。それでも、決してハードルが低いというわけではない。

 

 困った......。でも、安心してほしい。お金が無くても、馬主気分を味わいたい。古からそういう競馬ファンはたくさんいたのである。そして、そんな競馬ファンが生み出したのが、ウマ娘から競馬にであった皆さんにこそオススメしたい「POG(ペーパー・オーナー・ゲーム)」なのである。

 

POGってなに?

 POG(ペーパー・オーナー・ゲーム)とは何か。とりあえず、Wikipediaを引いてみよう。

競走馬を参加者が仮想馬主として選択し、その競走成績によって得られた賞金などをポイントに置き換えて競うゲームである。実際に競走馬を所有するわけではなく、架空の(仲間内の書類のみの)馬主として参加するのでペーパーオーナーと言われる。

参加者が馬主気分を楽しむことができ、競馬ファンである職場の同僚や学校の同級生など限られたサークルで行われることが多い。

              Wkipedia「ペーパーオーナーゲーム」より引用

 要するに、POGとは、「仲間内で馬主気分を味わう馬主ごっこ遊び」のことである。

 もともと仲間内で行われていたものだし、ルールも様々だが、ここではnetkeibaなどで採用されている基本的なルールを説明しよう。

(この記事は身内オタクへのPOG参加への啓発も兼ねており、ここで紹介するルールはそこで行われるPOGや、筆者自身が経験したnetkeibaのPOGを基に説明をおこなうものである。したがって、決して一般的なものとは限らない。多くの場合仲間内でのPOGはドラフトの要素を含んでいるが、ここで紹介しないのはその理由による。)

 

 1.その年の6月以降の2歳新馬戦においてデビューし、翌年のクラシック(皐月賞日本ダービー桜花賞オークスNHKマイルカップ)を目指して走る競走馬を、10頭指名する。このとき、多くの場合最低何頭は牡馬・牝馬を指名するなどの規則がある場合もある。期間は翌年のダービーまでが一般的で、安田記念や夏競馬、菊花賞秋華賞などは含まれない。

 

 2.それぞれの競争において得られる賞金をポイントに換算して、最高のポイントを獲得した者が勝者となる。ここでいう賞金は、1着馬だけでなく2着~5着馬に対して(ここは各POGによって違う場合もあるので注意!)も与えられる。要するに、とにかく指名した馬がG3、G2、G1に出走して、そこで高い着順を目指すことができる馬を探すことが目標である。

 

 ちょっと固い説明になってしまっただろうか。砕けた説明をすれば、来年のクラシックを目指す馬の中から、「この馬ならダービーを勝てる!」、「この馬なら桜花賞オークスの二冠を狙える!」という馬を、10頭探してくる。指名したら、あとは見守るだけである。メイクデビューを迎える新馬戦から、応援馬券を握って愛馬のレースを見届けよう。2歳はどんなレースがあって、どういう順序を踏んでクラシックに向かっていくのかは、ウマ娘をプレイしている諸君には説明不要であろう。要するに、POGとは「期間がダービーまでになったウマ娘の育成シナリオ」なのである。

 

どうやって指名する馬を探すの?

 ルールが分かったところで、きっとここまで読んだ全員に浮かんだ疑問があるだろう。「2歳馬を指名することは分かったけど、その2歳馬はどうやって探してきたらいいの?」。ごもっとも。日本には、一年に7000頭ほどの競走馬が生産されているという。星の数ほどいる2歳馬から10頭を選び出すのは至難の業である。ここからは、指名する10頭を探す方法を説明しよう。

 探し方を教える前に、「競走馬がどうやってデビューするのか」を抑えておこう。

 牧場で生まれた馬(当歳馬)は、セリや直接の取引によって、馬主の元へと売却される。「〇億円の馬」と呼ばれるのは、このセリの時についた値段である。もちろん、値段が高ければ期待度は高い。でも、期待度が高いからといって走るとは限らない。ここが、競馬の面白いところであって、難しいところである。セリにかかっていない馬は多くの場合「庭先取引」といって、馬主が牧場から直接購入する。直接買いに行くんだから、もちろんこっちだって期待度は高い。

 日本競馬において、牧場はおもに「社台・ノーザンファーム」と、「中小牧場」に分かれている。社台・ノーザンファームは、大種牡馬サンデーサイレンスを購入してきた牧場で、様々な経営努力によって日本競馬を掌握した。昨年の皐月賞馬エフフォーリア、ダービー馬シャフリヤール、桜花賞馬ソダシはみなノーザンファームの生産である。

 とはいえ、中小牧場の馬にチャンスがないわけではない。昨年のオークス馬ユーバーレーベンはビックレッドファームの生産である。一昨年の牝馬二冠馬デアリングタクトに至っては、いかにも中小牧場というかんじの「長谷川牧場」の生産であるし、なんとセリの取引価格は1296万円であった(!)。もちろん、社台・ノーザン生産の馬の方が期待値が高いことは明らかであるが、中小牧場からの成り上がりにユメヲカケルのもまた乙である。

 購入した馬は馬主のものになるが、もちろん馬主がみずから馬を飼育できるわけではない。「預託」といって、馬主は牧場・厩舎に馬を預けることになる。ここで馬はさまざまなトレーニングを施され、レースでの勝利を目指す調教が行われる。まあ「トレセン学園」に通っていると思ってほしい。

 順調に育成されてきた馬は、まず「新馬戦」に出走する。この新馬戦というのは、2歳の6月から始まり、12月まで行われる。ウマ娘ではすべての馬が6月にデビューするが、実際の競馬はそんなことはない。育成の進捗が悪ければ、メイクデビューはどんどん後ろ倒しになってゆく。

 基本的に競走馬は、一つ勝つことによって上のレベルに挑戦してゆく。みなさんはきっと、ウマ娘でメイクデビューで負けた経験があるだろう。メイクデビューで負けると、「G3〇〇2歳ステークス」みたいなレースに軒並み参加できなくなる。実際の競馬もそれと同じである。新馬戦で勝てなかった馬は、未勝利戦へと向かう。未勝利戦を勝ち上がれば、その上のクラスや重賞に挑戦するチャンスを得るが、勝ち上がれなかったら、いつまでも未勝利に挑戦し続けなくてはいけない。

 ウマ娘でメイクデビューを負けたとき、一部のウマ娘で「出走できるレースがなくて困る」経験をした人もいるだろう。たとえば、マイル・短距離の適性が無いのに、メイクデビューがマイル・短距離しかないケースである。もちろん、実際の競馬も同じである(ウマ娘ってよくできてるよね)。順調さを欠くと、勝ち上がりのチャンスはどんどん遠ざかってしまう。デビューや、勝利が遅れたら、年末の2歳G1であるホープフルステークス朝日杯FS阪神JFに出走することもできない。重賞にチャレンジすることができなければ、獲得できる賞金は少なくなる。(なお、2歳のうちにデビューできずに、年が明けて3歳になった場合、新馬戦はなくなり、未勝利からスタートすることになる。しかしここでは経験豊富な馬たちとぶつかるため、一つ勝つのはより難しくなる。)

 長々と話したが要するに「POGでは、早期にデビューして早期に勝ち上がれる馬を指名しなければならない」のである。たとえばタマモクロスのように、クラシックが終わって秋が過ぎてから活躍するような馬を指名してもポイントは稼げないし、マンハッタンカフェのように、秋以降に活躍し、あるいは3000mのような長距離を得意とする馬を指名するのもリスクが高い。とにかく、日本ダービーなどクラシックまでに結果を出してくれる馬を選ぶのが、高ポイントへのコツである。

 

 前置きが長くなった。つまりはどういうことかというと、POGの「2歳馬を10頭指名する」ということは「早期にデビューしてクラシックで活躍してくれそうな2歳馬を10頭探しましょう」というゲームと言い換えることができる、ということだ。

 本題に入ろう。POGで指名する馬の探し方は、以下のようなものがある。

 

 1.指名する馬は、2022-2023年のPOGをするとしたら、2020年に生まれた馬の中から選ぶことになる。しかし、POGを指名するとき、まだ馬名が決まっていないことがある。まだ馬名が決まっていない馬は、日本の競馬では「母名+生まれた年」で表現する。たとえば、G13勝馬スイープトウショウの2020年生まれの産駒は、「スイープトウショウの2020」と表記される(現在はスイープアワーズという馬名がついている)。

 

 2.NetkeibaのPOGページには、「POGマル秘リスト」として注目馬が多数紹介されている。期待度順にランク付けされているため、POG界隈で高く評価されている馬を手軽に探すことができる。まずは、このようなリストを活用するのがいいだろう。ただし、このようなリストで紹介されたからといって必ず活躍するとは限らないということは、もちろん留意しておく必要がある。

 

 3.POG誌と呼ばれる、POGの専門誌を購入するのもよい。POGの専門誌には、その年にデビューする2歳馬が、馬体の写真と一緒に載っている。このような雑誌は、その年の有力馬を選び出して載せているから、掲載されている競走馬が活躍してくれる確率も高い。ある程度競馬の知識があって、自分の基準で手広く選びたい場合は、このような雑誌を購入すると選びやすいだろう。

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筆者が2021-2022POGにおいて参考にしたPOG誌。このほかにも様々なPOG誌がある。どれを選んでもそれほど問題はないだろう。リストアップした馬に付箋を貼っていた。(『競馬王のPOG本 2021-2022』ガイドワークス 2021)

 

 4.これは応用編と言うべきだが、かなり情報の収集に慣れている人であったら、Netkeibaなどのデータベースから直接探し出す方法もある。たとえば、競馬を見ているときに気になる活躍馬がいれば、Netkeibaの競走馬のページの「血統」の項目をみてみよう。その馬の血統表の下に、「兄弟」の項目がある。推し馬のきょうだいを指名するのもいいし、有力な馬のきょうだいを探してみるのもまた有力である(例えば、昨年のダービー馬シャフリヤールは、2019年に大阪杯を勝ったアルアインの弟である)。

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写真はコントレイルのページ。コントレイルには2020年生まれの弟「インタクト」がおり、この馬は2022-2023POGで指名することができる。(父:ハーツクライ)。(画像はnetkeibaホームページを加工して引用)



 あるいは、Netkeiba等のデータベースを使って、「キングカメハメハ」、「ハーツクライ」といった種牡馬のページから2020年産の馬を表示させて、その中からリストアップしてゆく......という方法もあるが、なにしろ数が多い。種牡馬からさがすよりは、繁殖牝馬から探す方が効率がいいというのが、筆者の見解である。どのような馬が走るのか、ということに関しては、筆者もまだ競馬歴1年の初心者だから、ここでは解説できない。この方法はやはり上級者向けといえよう。

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netkeibaのデータベース→競走馬詳細検索から、「父名」に種牡馬の名前を入れよう。たとえば、ディープインパクトを入れてみる。年齢の項目は、2歳~2歳にしておけば2歳馬だけを表示することができる。(画像はnetkeibaホームページを加工して引用)

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検索すると、ディープインパクト産駒の2歳馬だけが一覧表示される。ディープインパクトはこの年は種牡馬として最後の年であり、体調を崩し種付けを終了したため、この年の2歳馬はわずか6頭しか表示されない。(画像はnetkeibaホームページを加工して引用)

 しかし、やはり競馬というのは「情報を制する」ことこそが他を制する最良の方法である。『種牡馬辞典』のようなものから種牡馬の特徴や成功している配合の傾向を掴んだり、POGに関する記事やニュースの中から有力な2歳馬を探し出したり......。様々なツールを駆使して、お気に入りの1頭を探しだそう。

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こういった書籍を活用するのも一つの手だ。(『パーフェクト種牡馬辞典』自由国民社 2022)

 上記説明した2、3の方法は、POGが開始される6月を前に、5月などに情報が出る。少しでも早くPOG馬をさがしていくなら、4の方法を使って探していくといいだろう。

 

 POG馬の登録方法は、各POG主催サービスによって異なる。それぞれのページにおける説明を参照されたい。Netkeibaの場合は、2歳馬の競走馬のページに「POG登録」のボタンがあり、それをタップ/クリックするだけである。

 

まとめ

 どういう馬を指名したらいいか、どうやって指名する馬を探すか。いろいろ説明してきたが、やはり大事なのは自分が良い、好きだと思った馬を指名する、ということである。競馬はデータのスポーツだ。だからこそ、「無数のデータを自分なりに解釈する」ことが、一番大事である。いろいろな情報があって迷うかもしれないが、そこはアニメを観るのと一緒、「自分が好きだ」と思える馬を指名して、応援しよう。それこそがPOGの醍醐味なのである。

 昨年のPOGを始める時に、ウマ娘ゆかりの血統馬であるピエドラデルーナ(父キタサンブラック、母スイープトウショウ)についてTwitterで投稿したところ、プチバズして驚いた。ウマ娘ファンにおけるウマ娘ゆかりの血統馬への注目は、やはり高そうなのである。そのような馬を探しだして推すこともできる。POGの楽しみ方は無限大なのだ。

 最後に、まとめとして、ウマ娘から競馬に入ったオタクにどうしてPOGがおすすめなのかを挙げて、この記事を終わりたい。

 

 〇POGは、勝ち馬を予想する以外の側面で競馬を楽しむことができる。メイクデビューからクラシックまで自分のPOG馬を応援していく体験は、ウマ娘の育成シナリオに近い。自分の指名馬が出走する、いや記事に取り上げられるだけで、ほんとうに嬉しい。自分の指名馬が重賞に出走するときの緊張感もまた、無性に楽しい。

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「推し馬」の関連グッズを集めるのも、また至福である。

 〇POGは、「競馬の教科書」と言えるほど、競馬に関するすべてが詰まっている。POGを始めれば自然と様々なレースを見るようになるし、血統や馬体など、競走馬に関する様々な知識を得られる。競馬は決して、重賞に出る有力馬だけで成り立っている者ではない。「競馬の全体を楽しめる」ことが、POGの魅力である。

 

 POGは、オタクに最も合った競馬の楽しみ方である。さあ、来年のダービーに向けて、推し馬と一緒に、自分たちだけのシナリオを始めよう!

 

[連載告知]こばとんのPOG日記は、連載記事として、2021-2022POGにおける筆者のPOG馬の記録を、何回かに分けて紹介する予定です。乞うご期待!

*1:ここで私自身感覚を述べたが、あえて注記しておきたいのが、「決して私は、ギャンブルとしての競馬の楽しみ方を否定しているわけではない」、ということである。そもそも、競馬番組を運用してくれているJRAに対して、金銭の形で貢献するためには、基本的には馬券を買うしかない。推し馬の応援馬券を握りしめて、競馬を楽しもう。もちろん競馬は公営ギャンブルだから、馬券売り上げの一部は畜産振興に用いられるから、「全く馬券を買わない」という楽しみ方はむしろ積極的に推す気にはならない。ただし、ギャンブルはそれ相応の危険性をもつものであることも、心しておく必要はある。

こばとんの徒然散歩 #1東京競馬場

 お久しぶりです。こばとんです。

 しばらくぶりの更新になりました。ここまで更新頻度が落ちたことにはいくつか複合的な理由がありますが、それはまたいつかお話しましょう。少なくとも、ブログを辞めてしまうわけではないことは間違いありません。あとはね、一時はラブライブ!専門ブログっぽくなりましたが、もうちょっと多くのジャンルの記事を書きたいなと思っています。ラブライブ!関連の記事を書いてたら、いろんな人と出会えたんだけど、その人たちとはまたいくつか別の共通点もあったんですよね。本来はなにかジャンル的な縛りのあるブログではないので、いろんな記事を書いて、もっともっとみんなと繋がっていきたいと思っています。この3か月は、しばらく全力疾走して見失ってしまった「なんのために書くのか」ってことを考えてきた時期って感じですかね。そろそろ放牧はやめて帰ってきます。

 

 この3か月、いろんなことがありました。文化的な面で言えば、「インプット」の時期だったと言えるかもしれません。久しぶりにいろんなアニメを一気見したりして......。アウトプットだけじゃ疲弊しちゃうからね。

 さて、心奪われたアニメのなかに、『ウマ娘 プリティーダービー』があります。何度も延期が発表されながらもついにリリースされたゲームが有名ですが(マジでよくできてるゲームだから絶対プレイしてくれよ)、アニメもまた素晴らしく面白いです。ウマ娘はもちろん競馬をモチーフにした、艦これや刀剣乱舞のような「擬人化」の作品です。題材となる馬は主に1990年代に活躍した競走馬たち。実在の歴史としての競馬の物語を極めて忠実に再現し、さらにファンに嬉しい小ネタをしっかり丁寧に仕込みながら、普遍性のあるスト―リーで感動を届けてくれる。こういうバックグラウンドにある広い世界の魅力を伝えてくれる作品、良いですよね。「普遍性」がやっぱり大事だと思うんだな。細かく作りこんだ先に、誰にでも感動して共感できる普遍性がある。ガルパンとかもそうだと思うのですが、そういう作品の魅力がしっかり備わった良作です。ぜひ見て下さいね。

 

 オタクにとってはまさに蟻地獄。毎日のように競馬関連の動画やWikipediaを見て、どんどん知識が蓄積されていきます。知識が貯まれば、今度はエビデンスが欲しいところ。「競馬場に行ってみたい」。さあ、お散歩に出かけましょう!

0.9kmのショートトリップ

 東京競馬場に向かう時、鉄道ファンには絶対に外せないイベントがあります。

 京王電鉄競馬場線東府中駅から府中競馬正門前駅までの僅か1駅、0.9kmを結ぶこの路線は、完全に競馬の観客を輸送するためだけに存在しているといって間違いないでしょう。

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東府中駅府中競馬正門前駅の表示がある。

 短くて、片側はどの路線とも接続していない。こういう路線を、「盲腸線」と呼びます。盲腸線はそれぞれ特有の理由によって建設され、その分魅力にあふれているのですが、その「理由」が無い限りは、乗ることのない路線ともいえます。できればすべての路線に乗っておきたいという「乗り鉄」の因子を、すこーしだけ私も継承しているようで......。なんにしろ絶好の機会。まずは東府中駅から、競馬場線の短い旅をするとしましょう。

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今日は馬券販売もある土休日のためか、8両編成で走る。左奥に見える短いホームからわかるように、閑散時期・時間帯は短編成で走っている。まさに「競馬のための」路線なのだ。

  静かに進入してきた電車を一両分独り占めすると、ゆっくり電車は発進します。大きな踏切を越えて、神社の参道を横切って。景色を楽しもうと思った瞬間、電車は減速していきます。流石に短い。ついたのは、競馬場があるとは思えないほどのどかなホーム。春の陽気はうららかに。少し汗をかくくらい。お散歩日和です。

 

初めての競馬場

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競馬場がはじまる。

 やけに広いコンコースを進み、多すぎる改札機を越えると、もうそこから「競馬場」がはじまっていました。長いペデストリアンデッキ。少しづつ競馬場が近づいてきます。
 ゲートには警備員さんがいました。このご時世、しっかり検温をしてくれます。少しづつ感染者が増える東京ですから、あえてすいているであろう日を選びましたが、杞憂でした。あまりに広い競馬場のなかには、まばらに人が散らばっているだけでした。今日はレースもありません。誰にも気兼ねすることなく、競馬場探訪を楽しめそうです。

 

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パドック。ここで、出走馬の様子を見極める。

 ゲートを入ったら、すぐにエスカレーターをかけ下ります。まずは、パドックをみるとしましょう。

 ここは、レース前に競走馬が登場し、周回する場所です。馬券を買う前にここにきて、出走馬の状態を見極めるそうです。ツヤの良さとか、そういうところで状態を見極めるそうですが......。私にはあんまりわかりません。それで状態がわかるってすごくない?体重の増減とか、結構競馬って繊細な部分が判断材料になってるなあって思います。パドック自体には、結構近くまで行けるんだなあって印象があります。水族館のショーの最前列と同じくらいの距離感じゃない?もちろん、馬を刺激することをしたり、例えばシャッター撮影をするのは禁止です。いつか、競馬開催時に一度来てみたいなあ。

 そういえば、パドックアメリカでの言い方(Paddock)で、イギリスではParade Ringと呼ぶそうですが、東京競馬場での表記は後者でした。特に意味のない気づきなんだけどね。やっぱり競馬の本場はイギリスってことなんでしょうか。でも日本ではパドックっていうよね。

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横からみたパドック

 パドックを離れたら、競馬場の建物に入っていきます。いやしかし、入る前から建物の存在感に圧倒されてます。長城か?

 長城かとおもったら、なかはまるで宮殿のようです。野球場でもなかなかここまで豪華じゃないんじゃない?奥行きはなくひたすら左右に長いのですが、それでも迷子になってしまいそうです。

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宮殿なんか?

 まずはどこを目指しましょうか。とりあえずコースが見たいかな。しかし、新型コロナウイルスの影響もあって、いろいろと閉鎖されています。行ったり来たりを繰り返しながら、コースへと向かいました。

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コースだ!

 見えました。大きなビジョンが中央に。ここからだと、全体を見回すのは難しそうです。少し動いてみるとしましょう。

 それにしても、広い!とにかく広い!向こう側なんかぜんぜん見えやしません。東京ドームの天井からメインステージを見るより遠いんじゃない?あとは、思ったよりもコースの中央にはいろんな設備があって、さらに視野は完全とは言えません。全体像を観たいならもっと高いところに行った方がいいのかなあ。しかし、今は観客席が閉鎖されているから、それは叶いません。

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広いよ、とにかく.......

 少しずれたところへ。ここが一番見やすそうです。それでも広いです。あと直線が長い。短い短いって言われてる中山の直線はどのくらいなんだろう。それでも長いんだろうな。これの半分でも十分長いよ。

 コースは実際は平坦ではなく、意外と高低差があるのですが、パッと見てわかりやすいほどではありませんでした。それにしても、各競馬場で全然コースが違うの、良いですよね。各球場が唯一無二の特徴を持っているメジャーリーグと同じような魅力を感じます。いろんな競馬場にも行ってみたいなあ。

 

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観客席もおおきい!でも、ここに10万人以上かあ。

 観客席も大きいです。しかし、ここに10万人以上はいるようには見えませんでした。立ち見がぎっしりいるんだろうなあ。観戦するだけで一苦労だろうなあと、思いを馳せてみるのでした。

 

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わかる、わかるぞ!

 んーと、これが「ハロン棒」ですよね?今見ると、これは内側のダートコースのやつなのかしら。ハロンはfurlongが訛ったもので、1furlongは大体200メートル。日本では1ハロン=200mとして運用されてるんですよね。詳しくなったぜ競馬に。

 ちなみに、8ハロンが1マイル。つまり1マイルは1600mです。100マイルの直球は大体時速160km。大谷君が投げるよね。なるほどなあ。1ハロン×1チェーンは1エーカー。一気にヤード・ポンド法の解像度が上がった気がしました。

 ハロン棒は「ハロン棒」って言うのに、書かれている数字はメートルなんですよね。だから「4」って書いてあったらゴールまで残り400m=2ハロンあるわけです。なんか複雑。

 

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ウオッカさん

 ちょっと競馬場内のショップに行きたかったので、建物内をうろうろします。と、ウオッカさんを見つけました。ウオッカは2007年に牝馬として64年ぶりに日本ダービーを制した馬。ダイワスカーレットさんのライバルですよね。偉大な馬なんだなあと実感しました。屋外にもいたしね、ウオッカさん。

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屋外のウオッカさん

 買い物を済ませたら、競馬博物館へと向かいました。清掃員さんがカルガモと会話しているほど誰もいませんでしたが、その分ゆっくり展示をみれました。あんまり学術的な展示はありませんでしたが、歴代の優秀な馬たちの展示があって、ウマ娘に出てくる馬の展示もたくさんあるので、一度足を運んでみてはいかがでしょう。写真を撮れるところがわずかにあって、サラブレッドをばん馬の比較を挙げておきます。ばん馬、化け物みたいに大きくない?別の生き物なんか?

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デカイ

 そろそろ帰ろうかなあと思いつつ、でもせっかく来たんだし馬券を買ってみたいなあ、と思いました。とはいえ、馬券の買い方は全くわかりません。なんかマークシートみたいなのに書いて、機会に入れるんだよね。それは分かったんだけど、馬券購入の知識も無ければレースの知識も現役馬の知識もありません。困ったなあと思っていたら、「スマッピー投票」なるハイテクシステムの存在を知りました。スマートフォン上でアクセスすると、購入可能レースと出走馬、人気順とオッズが表示され、選択し掛け金を入力すればQRコードが表示されます。このQRコードを馬券購入に読み取らせれば、あとはお金を入れるだけで(実際は先にお金を入れないと機械が動かなくてちょっと苦戦したけど)馬券が購入できます。素晴らしい。別に記念で買う以上、当日の馬券である必要もないわけですから、4月4日開催のG1レース、大阪杯の馬券を購入します。わたし、運は大事な時にとっておきたい派であるのと、あと近いうちにもう一回東京競馬場に来る気がないことから、あえて当たっても対して儲からない買い方をしました。2番人気の牝馬、グランアレグリアに、ちょうど持っていた小銭の300円。あたっても900円弱。これ、世界で一番意味のない馬券の買い方なんじゃないだろか。

 

 さあ、馬券も買えたし帰りましょう。所沢にもどるには、府中本町駅を使うのがよさそうです。東京競馬場は、京王の府中競馬正門前駅東府中駅西武多摩川線是政駅、それからJRの府中本町駅の4つの駅からアクセスできます。大量の観客も、4駅に分散できるようならすこしはマシになりそう。少なくとも西武ドームよりは。

 

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アニメ1期OPにこっちからのカットがあったなあ

 府中本町駅側の西門からは、ゴールが良く見えます。あそこで、多くのドラマが生まれてきたわけですね。でもやっぱり広いなあ。こんどはレース開催時に来たいけど、そのときは競馬に詳しい人と一緒に来るのがいいかなあ。

 さて、帰りましょう。密も避けられたし、いい経験になったし、楽しい散歩だったんじゃないでしょうか。この日は春先にしてはちょっと暑すぎたかな。こちらも長い通路を抜けて、府中本町駅についてお散歩は終わりを告げたのでした。

 

後日譚

 さて、あえて当たってもたいしたことないようにしたとはいえ、馬券を買ったわけです。4月4日の大阪杯、テレビの前に張り付いて、見るしかありません。

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おみやげのキタちゃん(キタサンブラック)のぬいぐるみと、人生初馬券

 阪神競馬場は大雨で、もちろん馬場状況は重。三冠馬コントレイルか、二階級女王グランアレグリアか。ちょっとトウカイテイオーメジロマックイーンみたいな二強対決の空気を感じつつ、レースを見守ります。

 結果は、レイパパレ1着。コントレイル3着。グランアレグリアは4着。競馬って難しいなあ。まあ、こんなもんよねえ。

 これからもウマ娘でいろいろ競馬を知っていくだろうと思いつつ、初めての競馬場の思い出をただの紙になった馬券といっしょに、ひきだしにしまいこむのでした。

2020-2021 ブログ納め&ブログ始め

 あけましておめでとうございます。こばとんです。

 2020年。新型コロナウイルスに世界中が振り回されたとんでもない一年は、ひとことで言えば「異例」の一年でした。緊急事態宣言が出されたり、オリンピックが延期になったり、100年前のスペイン風邪の流行に匹敵し、必ず歴史に刻まれるであろうこの大混乱については、いまさら語る必要もないほど読者のみなさんも痛感していたことでしょう。

 この記事は「2020-2021 ブログ納め&ブログ始め」と題し、この異例の一年の中での『こばとんの徒然日記』の歩みを振り返るとともに、一年の計を立てる、オーディオコメンタリーのような記事です。自分で書いた文章に自分で解説を入れるのは野暮の極みですが、もともと野暮な私の記事に注釈を加えてもさしてその価値が変わりはしないでしょう。それに、一年の創作活動を言語化してまとめておくことは、きっと自分の立ち位置を相対化することができるし、遥か先まで行ったとしても、いつかこの現在地を振り返ることもできるようになります。さっそく、始めていきましょう。

 

 

睦月

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  「将来を見据えて、いろいろなことに臆せず挑戦すること」。これが、2020年の抱負でもあり、この一年ブログを書き続けた理由でもありました。遡っていただければわかりますが、当ブログの開設は2019年。一本熱い記事を書いた後、多忙ゆえにその更新は停滞、というか完全に止まってしまっていました。しかし、2020年はわたしにとって、就活と決別して大学院に進学し、「人文科学」の世界で生きていく、その第一歩目になる年でした。なんでもいいから一歩目を踏み出さなければ、先へと進んでいくことはできない。「今後はもうちょっとライトな感じで、旅行記や本・音楽など好きなものついて書いていきたいと思っています」と語っているのは、内容が多少薄くても定期更新を続けるためでした。一年間の挑戦が、ここからはじまります。

 

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  1月には、「ラブライブ!フェス」にも参加しました。もともとは、「Aqoursの物語を見届けたら、ラブライブ!のファンは辞めよう」と思っていた私。しかし、卒業論文執筆の闇の中で少しでも光を得たかった私は、最後のチャンスである完全見切れ席に滑り込みで応募、当選し、さいたまスーパーアリーナへと向かいました。

 ここで虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会、QU4RTZと『Beautiful Moonlight』に改めて出会ったことは、私のオタクとしての2020年を大きく左右する出来事だったのですが、それが効いてくるのはもう少し後のおはなし。それまで不動の「ラブライブ!で一番好きな曲」だった『夜空はなんでも知ってるの?』について、CYaRon!のパフォーマンスという視点から「アーティスト」としてのAqoursについて語ります。ライブから自分の物語を作っていく、2019年以前の私が詰まった記事です。

 

如月

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  大きな闇は、背後のもうすぐそこまで迫っていました。

 卒業論文を書き上げて、卒業式までの間は、何にも縛られぬ自由な時間。ここで、多くの学生は卒業旅行として、普段は行くことのないどこか遠くへと向かうわけです。

 私もその例に漏れず、卒業旅行の計画を打ち上げます。人生初のヨーロッパ旅行。記事に溢れる期待とは裏腹に、その進展は初めから不穏な空気を孕んだものになりました。中国・武漢で見つかった新型コロナウイルスCOVID-19の流行。旅行先の一つであったイタリアでその流行が深刻なものになると、旅行を強行するか、あるいは中止するのか。二者択一の決断を迫られます。下した決断は「中止」。本来の旅行期間中も刻々と事態が深刻さを増していたこと、それから後に欧米から帰国した邦人が日本に少なからずウイルスを持ち込んだことを考えれば、この決断に間違いはなかったと考えています。しかし、キャンセル料の負債と、それから本来記事になるはずだった海外旅行の中止。全てを失ったところから、2020年が始まることになったのでした。

 

弥生・卯月

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  失ったキャンセル料を取り戻すために。目が回るほどアルバイトのシフトを叩き込んだ3月と4月は、アルバイト先の店舗としてもマスクの着用、ビニールカーテンの設置など、新型コロナウイルス対策に追われた多忙の時期になりました。

 定期更新とは程遠い当時の更新頻度ですが、同時に記事の内容の模索も始まっていました。当初は①旅行記②書籍紹介③その他趣味(音楽・アニメ・鉄道・野球等)といったコンテンツを予定していた当ブログは、一番大きな①を失ったことで、暗中模索の状態に陥っていたわけです。『氷菓』新刊を紹介する上記記事は、模索のなかでは上手くいった方。「誰かをしあわせにする、内容のある記事」を書くこともまた、私のブログの大きなモットーだけに、当時はかなり苦しんでいた記憶があります。まだまだ、先の景色は見えないままでした。

 

皐月

tsuruhime-loveruby.hateblo.jp  新型コロナウイルスの影響はついに日本にも波及し、感染者の増大を受けた日本政府は緊急事態宣言を発令しました。卒業式も入学式もふっとんだ大学院は授業すら始められず、空虚の時間が過ぎるばかり。しかし、ゴールデンウイークも終わり感染者数もある程度落ち着くと、徐々に経済活動も再開してゆくことになりました。5月中旬より大学院の授業が始まったことで、生活リズムも一変。このあたりからようやく、記事の定期更新が軌道に乗ってきます。

 『内浦と私』は、緊急事態宣言下で苦しい状態にあった淡島マリンパークを支援させていただいたときに綴った記事。自分の経験を綴るエッセイは、どちらかと言えば得意分野。これからもたくさんの記事を書いていくことになるでしょう。

 

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  新譜の発売も滞り、過去の音楽ばかり聴いていたこの時期。私立恵比寿中学について書いた『運命と戦うことで今を奏でる』は、名曲『響』の歌詞を題名に採用した意欲作。大好きな気持ちを直球に長文でぶつけるスタイルをここで確立し、さらに多くのエビ中ファンからの反響をいただけたことも、その後の自信につながったことを考えると、2020年の中でも特に大きな記事であったということができます。当時の私は既存の「ストーリー」に頼ることを極度に嫌い、考察より自分に引き付けたことばで表現することにこだわっていた時期。読み返すと、ちょっと斜にかまえて評論的な当時のスタイルがほほえましくもあります。

 

水無月

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  「音楽」のジャンルで手ごたえをつかんだ私は、プレイリストを紹介していくような記事を書き始めます。当時のマイブームは(今でも大好きだけど)、ヒップホップグループSOUL'd OUT。自分の好きなものを「紹介する」というスタイルで、YouTubeを貼り付けて話していく方法の記事が続いていきます。この方法ものちに行き詰ってしまうのですが.......。彼らの最高にダサいのにそれが最高にカッコいい、試作と工夫に満ちながらキャッチーでオリジナリティあふれる音楽は、確実に私の音楽世界に大きな影響を与えたことは間違いありません。

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  徐々に新譜の発売も始まったこの頃。6月初めには、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会から『無敵級*ビリーバー』の発売が発表され、試聴動画が発表されました。発売された2月以降、完全に『Beautiful Moonlight』に打ちのめされ、虜になり、狂ったように聴き続けていた私は、楽しみにしていたこのシングルを聴いて衝撃を受けます。作曲にDECO*27さんを迎え、完全にそれまでのラブライブ!のイメージを一新する、柑橘系のフルーツのような新鮮さと瑞々しさに溢れた『無敵級*ビリーバー』。美しいメロディーで夜のお台場と彼女たちを描く『未来ハーモニー』。何かが始まった、そう思いました。

 この記事も、それまでのYouTubeを貼り付けて曲を「紹介」していくスタイルを堅持していますが、何よりこの記事の価値は、当時パッションに満ち溢れていたニジガクのファンたちに見つけてもらい、繋がることができた点でしょうか。自分たちの想いを考察記事や感想記事に紡いでいく素敵な人たちと繋がり、目の当たりにすることで、このブログの文章にも化学反応が起こっていきます。

 

文月

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  忙しかった春学期から徐々に解放された7月末。少しづつ、自分のなかで起こっていた化学反応は、ひとつの記事に昇華されました。「『無敵級*ビリーバー』と、かすみの鏡の向こう側」。それまででは想像できないほどの反響をいただいたのもそうですが、私としても抜群の達成感があった記事でした。約12000字と特大のボリュームになりましたが、自分の中で滾る熱い感情を、ゆっくり時間をかけて構成を作り、整理し、温度を保ったままぶつけ、情緒的でかつ理性的に書けたこの記事は、会心の作品でした。

 大きな反響を得られたと同時に、多くの人との出会いを得られたのもこの記事でした。それまでは内輪の数人にしか読んでもらえなかったのが、いきなり世界が広がったような気がしました。なにより、同じ「文章を書く」という行為をしている仲間、自分よりはるかに魅力的な文章を書く多くの人に出会えたのも、私にとってすごく大きなことでした。

 

葉月

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 『無敵級*ビリーバー』記事を確かな自信に変えて、もっともっといろいろな記事を書こうと思っていた夏休み。しかしこのあたりから、母が骨折して家がてんやわんやの大騒ぎになるなど、コロナウイルス以外の要素にもふりまわされ始めることになります。前厄だからなの?2021年はもう少し波乱を減らしてほしいです、神様。

 8月は様々なジャンルの記事を書きましたが、特筆したいのはこの記事。「ニジガクに10人目のメンバー、三船栞子ちゃん加入」という、ラブライブ!の歴史の中でも衝撃的なニュース。その衝撃そのままに、三船栞子ちゃんという女の子と向き合って書いたのがこの記事です。『無敵級*ビリーバー』記事が音楽を起点として書くそれまでのスタイルに乗っかった記事なのに対して、栞子ちゃんの記事は完全に音楽とは乖離して、物語を読んで自分なりに物語を噛みしめていく記事。後のアニガサキ視聴レポートに繋がっていく部分もあったと思います。

 

長月

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  ニジガクの記事を書いていくうちに培った「大好き」をぶつけていく方法を、そのまま私の趣味の一つである野球にぶつけたのがこの記事。後で話しますが、私は「ラブライブのブロガー」を目指しているわけではなく、「文章を書く」という一連の営みの中の通過点としてラブライブがあるわけですから、そこでの経験が他分野に活きたこの記事は一つの成功例かもしれません。今のところは、私のことをラブライブを経て知っていただいた読者の方が多いと思うのですが、いつかはもっといろんなジャンルの文章を読んでもらえればいいな......と思っているので、この記事は私にとって一つの大切なマイルストーンです。

 

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  多忙と混乱を極めた夏休み。そんな環境の中で脳みそも混乱してしまったのか、ニジガクの2ndライブを前にした私は、とんでもなく壮大な企画をおっぱじめ、そして異常な達成感と、どっしりとした疲労を手に入れるわけです。虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会2ndライブカウントダウン企画『ニジガクカウントダウンウィーク』。3rdアルバム『Just Bellieve!!』の各曲について、スクスタのキズナエピソードからそれぞれの曲を読み解き、ライブでの注目ポイントを語っていく記事は、毎日更新ながら1万字近いボリューム感。あのね、正直、毎日更新でこの分量はやめた方が良いと思います。裏話ですが、この企画まで私はスクスタのプレイ状況が芳しくなく、この企画はニジガク全スクールアイドルのキズナエピソードを全て開放するところから始まったこと、それから、『Just Believe!!』、『無敵級*ビリーバー』、『未来ハーモニ』の3曲を紹介する#0が存在していたものの、力尽きてお蔵入りになったことを付け加えておきます。なんでこんな修行みたいなことしたんだろうね?自分でもわかりません。でも、楽しかったよ。


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  2020年は、両手の指で数えるほどしか遊びに出ていないのですが、9月に一度沼津に行くことができました。久しぶりの「こばとんの旅行日記」は沼津・内浦です。ルビィちゃんの誕生日に行けたのはよかったなあ。旅行記は、ネタがあればこれからもビシバシ書いていくと思うのですが、これはいかんせんコロナの感染状況次第でしょうか。はやく新型コロナウイルス感染の心配なしに、平和にどこにでも行ける世界になったらいいなあ。

 

神無月

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  秋学期が始まった10月。10月3日から、TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』がはじまりました。

 1話記事は、「最速視聴レポート」と題されているように、放送終了後から数時間で上がった即席めんのような記事。はじめは、各話終了後は簡単な感想記事をささっと上げて、全話放送後にまとめて記事を書くつもりだったのですが、あまりにアニガサキが名作だったことと、それからニジガクのブロガーたちがめちゃくちゃ熱い記事を毎週上げているに触発されて、私も各話放送後に毎回熱い視聴レポートを書いていくことになりました。

 

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  アニガサキは、各話それぞれが各メンバーの担当回になっているすっきりした構成でした。2話が推しのかすみちゃん回になるということで、気合を入れてかすみちゃん回の記事を書いたところ、手ごたえ上々。勢いそのままに3話せつ菜ちゃん回の記事を書くと、こちらは反響も抜群。ここから、どちらかと言えば「考察」っぽいテイストで、記事を構成していくことになります。

 

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  ところが、4話に至った時に「わからない」となってしまったんですね。もちろん、ニジガクには虹色のメンバーがいて、それぞれに違うのですから、私にとって全員が「わかる」とは限りません。むしろ全員が「わかる」というのは綺麗ごとでしょう。理解できるところも、理解できないところも、否定することなくその共通点も違いも共有する。それがほんとうに他人を尊重し、向き合っていこうとする態度だと思うからです。愛さんは好きなキャラクターですが、かすみちゃんやせつ菜ちゃんの時のようにすっきりした結論をだすことはできませんでした。ここから、アニガサキ視聴レポートにおいて、「自分のカタチ」を探す試みが始まりました。

 

霜月

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  11月はまさにアニガサキ視聴レポート「試行錯誤の月」となりました。5話記事は文学的に、6話記事は少しまえのスタイルに戻って、7話記事は歌詞の考察も交えつつ。「考察」ってどうしても、自分はこんなすごいことに気付けた!っていうマウントの取り合いに無意識に陥ってしまいがちで、でもそれでは「大好き」な気持ちも、しあわせも届けることができなくなってしまいます。アニガサキを観るとあまりに「気づき」が多くなってしまって、勢いそのままにぶつけるとどうしても情報量過多になってしまうんですよね。自分の書きたい文章ってなんだろう。そんなちょっと哲学的な悩みを抱えつつ、11月は4本の記事を書きました。

 突然の私事ですが、11月23日に祖母が永眠しました。祖母は、「文章を書く」ということに人一倍こだわりのある人で、かつては記者として活躍したこともありました。これから歩いていきたい「文章を書いていく」という道は、祖母が志し、そして叶わなかった道でもあります。祖母から受け取ったものを大切に抱きしめて、先へと進んでいきます。

 8話記事は、しずくちゃん回でありながらかすみちゃんの視点から描いた記事。物語を中心からではなく、ちょっとずらした視点から物語を見るのは私に合っているようで(本業の研究もそういう視点に拠っています)、かすかな手ごたえを感じた記事でもありました。

 

師走

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  12月は特に研究面で忙しい月になりましたが、そんな中でも青息吐息ながらアニガサキ視聴レポートだけは更新することができました。アニガサキ視聴レポート、結構負担が大きくて、結局アニガサキ放映期間中にはアニガサキ視聴レポート以外の記事を更新することができませんでした。アニガサキが終わったことは悲しくもありますが、侑ちゃんが新しい挑戦に向かっていったように、私としてもこれからどんなことを書いていこうか、という希望にあふれた気持ちもあります。......まあまだ12・13話の記事を上げていないんですが。もうちょっとだけ待っていてください。

 12月更新記事の中で特にお気に入りなのは、11話記事です。「物語を端っこから見る」視点で、ファンの目線で、特に色葉ちゃんと浅希ちゃん。それから今日子ちゃんが同好会の動向(「同好会」だけにね!)、それから悩める歩夢ちゃんに少しでも関わってくるかな、と希望を込めて書いたのですが、ドンピシャの展開が来て震えました。恐怖で。アニガサキはやっぱすごいよ。

 もちろん悩んでばかりでしたが、12月は少しでも自分で「好きだ」と思える記事を書くことができました。この感覚を2021年へとつなげていって、もっとレベルアップしていきたいと思っています。

 

一年の計

 さて、2020年を振り返ってまいりました。

 夢に向かって一歩踏み出す。そのためにブログの定期更新を始めた一年でしたが、予想もしていなかったところまでやってくることになりました。今いるこの場所が、夢に近づいた場所なのか、それともちょっと遠回りになっているのか、あるいは真反対に進んできているのか、それはわかりません。しかし、一つだけ分かったことがあります。

 それは、私が「文章を書いて、それを読んでもらう」ことが好きなこと。授業で発表したり、論文を書いたり、Twitterであれこれ話したり。漠然と楽しいと感じていた営みの何が楽しかったのか、それを具体的に知ることができたのは、2020年最大の成果といっても過言ではないでしょう。

 2021年は、こうして気づいた自分の中のキモチをどうやって将来の自分、もっと言えば生業につなげていくのか、その具体的な方法を探していかなくてはいけません。研究に打ち込むこと、この場所で誰かに「しあわせ」を届けられる記事を書いていくことが基本であることは変わりません。一方で、一次創作や二次創作など今までチャレンジしたことのない領域にも踏み込んでいくこと。「こばとんの徒然日記」を飛び出して、もっと大きな世界で自分の文章を書いていくこと。それを目標に取り組んでいきます。未来図はまだ描けないけれど、計画通りの未来に行くよりは、想像できない世界へと飛ばされていく方が楽しいに決まっています。今年もまた、想像もできないくらい遠くまで行って、ちっぽけな自分を懐かしむようにこの記事を一年後に読み返せたらいいな。そう思うのです。

 なにはともあれ、私がここまでやってこれたのも、これから先の不確実な未来へ進んでいこうと勇気を出すことができるのも、私を見つけ、そして私の文章をたくさん読んでいただいたみなさんのおかげです。いつかみなさんをどこかへ連れていけるような物書きになりたい。不束者ですが今年もどうぞ、よろしくお願いいたします。

 

 それではまた。

 こばと

「みんな」の夢を、叶えるために TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』視聴レポート #11 「みんなの夢、私の夢」

TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』視聴レポート #11 「みんなの夢、私の夢」

 

「みんな」の夢を、叶えるために

 

 

※当記事は、TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』のストーリーに関するネタバレ、あるいは、アプリ『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバルオールスターズ』のストーリーに関するネタバレを含みます。アニメ未視聴の方、アプリ未プレイの方は、予めご了承ください。

 

↓第10話の記事はこちら

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 こんにちは、こばとんです。

 11話です。波乱が予想された11話ですが、やはり波乱なお話になりました。

 ご覧になった方はお分かりだと思いますが、11話は衝撃的なシーンをもって唐突に終わり、その解決は全て12話に投げられています。今晩が待ちきれずに、眠れぬ夜を過ごした人もさぞ多いことでしょう。11話のストーリーは11話だけで完結していません。特に、歩夢ちゃんと侑ちゃんの衝突に関しては、意図的なかたちで解決が次週に持ち越されているのですから、明らかになった事実はまだ半分、あるいはそれ以下ということになるでしょう。アニガサキで、ここまで焦らされるのは初めてですが、それもまた一興。やきもきした気持ちを精いっぱい楽しんでいます。

 さて、問題となるのはこの「視聴レポート」です。これまで毎話ごとに、アニガサキの物語を読んで抱いた感想、疑問、自分の解釈など好き勝手に書いてきた本連載記事ですが、11話に至って大きなピンチに瀕しています。なぜなら、11話では、メインの物語である侑ちゃんと歩夢ちゃんの物語に関して、まだ全てが明らかになったわけではないからです。このブログの趣旨は物語の先を読んで当てることではありませんので、そういった内容を書くことはありません。それも一つの楽しみなんだけどね。Twitterでいっぱいつぶやきます。それに、素晴らしかった11話の演出やその意味については、もっと語るべき人がたくさん語ってくれています(面白いからいろいろ調べてみてね)。と、いうことで、当記事では歩夢ちゃんと侑ちゃんについてのお話はしません。歩夢ちゃんのことは12話と、それから12話を観終えた後の自分に託して、当記事ではまったく違う目線で、アニガサキの「大好き」をお話していこうと思います。いやあ、「違うよ」とか、侑ちゃんの夢とか、話したいことはたくさんあるけど.......未練は断ち切りましょう。それでは、お話を始めていきます。

 

初めての「みんなで叶える物語」

東京・お台場にある、自由な校風と専攻の多様さで人気の高校「虹ヶ咲学園」。
スクールアイドルの魅力にときめいた普通科2年の高咲侑は、
幼馴染の上原歩夢とともに「スクールアイドル同好会」の門を叩く。

時にライバルとして、時に仲間として、
それぞれの想いを胸に日々活動するメンバーたち。

「夢を追いかけている人を応援できたら……。」

9人と1人の少女たちが紡ぐ、初めての「みんなで叶える物語(スクールアイドルプロジェクト)」。

届け!ときめき――。

いままた夢を、追いかけていこう!

TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』HP「ストーリー」より(ストーリー | TVアニメ | ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会)

 「みんなで叶える物語」。それは、ラブライブ!シリーズで一貫して受け継いできた、ラブライブ!シリーズで一番大事なコンセプトです。これまでラブライブ!は、アニメのおもに外側において、投票企画やグループ名の公募、みんなで作る曲など、私たちを巻き込んで物語を紡いできました。まさに「みんなで叶える物語」だったわけです。μ'sのFinal Love Live!はまさに「みんなで叶える物語」の集大成ともいえる空間で、長い苦労と快進撃の末にたどり着いた先の東京ドームで、みんなで声を合わせて叫ぶ「今が最高!」は、まさに「みんなで叶える物語」を全身で体感する瞬間でした。

 μ'sの夢はAqoursに受け継がれて、そしてやって来た3つ目の夢。しかし、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会は、「みんなで叶える物語」が「初めての」ものだと主張するのです。これは、どういうことなのでしょうか。現実世界の時系列から言えば、虹ヶ咲の物語はどう考えても「初めての」ものではありません。それとも、彼女たちにとって「初めての」ものだというのでしょうか。うーん。しっくりこないですよね。μ'sやAqoursのみんなにとっても、スクールアイドルプロジェクトという物語は「初めての」ものだったはずです。改めてここで「初めての」を強調する理由には、ならない気がします。アニガサキは前2作に対して前後関係のわからないお話ですから、もしかしたらラブライブ!の世界において時系列で先頭にくるかもしれません。しかし、いまのところ検証しようのないお話です。

 ......えーっと、長々話してきましたが、今のところなにかこの「初めての」に対して満足できる見通しがあるわけではありません。でも、この違和感を大事にしたいんですよね。なぜなら、アニガサキのお話は、「みんなで叶える物語」として、前の2作とは大きく異なる一面を持っていると思うからです。

 

「みんな」の夢

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ぎゅうぎゅう

 唐突ですが、アニガサキって登場人物が多くないですか?これまでの同好会メンバー以外の登場人物をまとめてみましょう。

  ・伝統のモブ3人衆:色葉、浅希、今日子

  ・生徒会関連:生徒会副会長、生徒会書記

  ・服飾同好会のみなさん

  ・演劇部部長

  ・東雲学園のみなさん:遥、かさね、クリスティー

  ・藤黄学園のみなさん:美咲、姫乃

  ・新聞部のみなさん

 すべてを網羅したわけではありませんが、声があてられていてある程度行動を起こした人物をざっと書き出してみれば、これだけの人物がアニガサキに登場しています。そして何より、彼女たちがただの「モブキャラ」では無い点が特筆されます。アニガサキの10人以外の登場人物は、驚くほど自由に物語の中を動き回っています。時には、彼女たちが物語の重要な登場人物として、ストーリーを支配することさえあり得るのです。7話における遥ちゃんが一番分かりやすい例でしょうか。あるいは、9話において姫乃ちゃんが重要人物であることは、9話の記事で既に書いた通りです。

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 さらに言えば、アニガサキは「9人とひとり」の物語です。10人の物語ではありません。スクールアイドルではない、高咲侑という異質な人間があたりまえのように同好会に参加しています。そして彼女は明らかに、「外側」の人間です。9話において、ステージに向かうメンバーを横目に、彼女は一目散に観客席へと駆け出していきました。

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彼女の居場所は、ステージではなく観客席にある。

 アイドルではない侑ちゃん。たとえ彼女が「マネージャー」だったとしても、アイドルの戦場であるステージとステージ裏を離れるという選択はあり得ないでしょう。高校野球で例えたら、彼女はベンチにいるマネージャーではなく、観客席にいる観客のひとりです。10話においてせつ菜ちゃんが「私たちには見えない景色」と侑のダイバーフェスの感想を評していますが、それは決定的に視点が違うことに起因しています。彼女は完全にプレイヤーサイドの人間ではありません。彼女はあくまでも、今のところは、「いち観客」なのです。

 高咲侑というファンがど真ん中に置かれている物語、それがアニガサキです。そう考えると、アニガサキは「みんなで叶える物語」からかけ離れています。彼女たちがステージで叶える夢を、侑ちゃんが一緒に叶えることは出来ません。プレイヤーのフィールド(アイドルの場合は一般的にはステージ)と、オーディエンスのいる観客席の間には、厳然とした区別があります。たとえ甲子園で負けても、スタンドのファンに涙を流す権利はあっても、甲子園の砂を持って帰る権利はない、そういうことです。

 それでも、アニガサキは確かに「みんなで叶える物語」なのです。どういうことなのか。それは、「みんな」が指す範囲が、前の二作とは決定的に違うのだと思います。「みんな」とは、9人のことではありません。侑ちゃんも、さっき列挙した9人の周りにいる多くの人たちも含まれます。μ'sやAqoursも確かに「みんな」の夢を叶えましたが、それは9人の夢にそれを応援するみんなの夢を託して叶える夢でした。だからこそ、物語では9人の夢こそが描かれたのです。作品の中では学校のみんなが、そして作品の外ではファンである私たちが、彼女たちに夢を託して、応援して、一緒に叶えていく。彼女たちの夢の延長線上に、私たちの夢がある。それが、これまでのラブライブ!でした。しかし、アニガサキはそうではない。プレイヤーとファン、両方含めて「みんな」。作品の中で、9人の、侑ちゃんの、作品に出てくるみんなの、そして作品を見ている私たちの、そのすべての夢を叶えてしまおう。初めての「みんなで叶える物語」は、これまでとはまた別の、スクールアイドルと、そしてファンの、みんなが叶える物語なんじゃないかと、ふと考えてみるのでした。

 

ファンが叶える物語

 侑ちゃんと歩夢ちゃんの衝突が描かれる一方で、11話では侑ちゃんの提唱する新しいライブ「スクールアイドルフェスティバル」の計画が進行していきます。

 生徒会に一度ははねかえされてしまうスクールアイドルフェスティバルの申請書。まだまだ曖昧な彼女たちの夢のカタチを、クッキーを型抜きするように外側から提案してくれるのは、彼女たち自身ではなく「ファン」のみんなでした。

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見るだけでほんわかするよね、この3人。

 夏休みだからか空っぽの「かすみんボックス」。ライブの内容の周知が足りないということを教えてくれたのは、色葉ちゃん・浅希ちゃん・今日子ちゃんの3人。焼き菓子同好会に所属する3人は、ニジガクのみんなをイメージしたクッキーを差し入れてくれました。

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 色葉ちゃんは、愛ちゃんのファン。

 

 スクールアイドルフェスティバルを開催するにあたって、共同開催する他の学校のスクールアイドルは不可欠。侑ちゃんたちは、人脈のある東雲学園と藤黄学園のスクールアイドルを訪ねます。

 彼方ちゃんから既にスクールアイドルフェスティバルの話を聞いていた遥ちゃんは、スクールアイドルフェスティバルに乗り気です。

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 遥ちゃんは、彼方ちゃんのライバルで、そして一番近くにいるファン。

 

「果林さんと同じステージに立てるなんて.......!」という若干不純な動機は置いておくとして、藤黄学園もスクールアイドルフェスティバルに前向きです。

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 姫乃ちゃんは、果林ちゃんのファン。

 

 ダイバーフェスはその最も大きいものですが、一番最初の歩夢ちゃんとかすみちゃんのPVから、いろんな活動を積み重ねてきたスクールアイドル同好会とそのメンバーは、その過程の中でたくさんのファンを手に入れてきたのです。

 それは、お世話になったニジガクの他の同好会も一緒です。彼女たちの持つ魅力は、たしかに学園の内外の人たちを巻き込みつつあるのです。

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 服飾同好会のみんなは、エマちゃんのファン。

 虹ヶ咲学園の中にもどんどんニジガクのメンバーひとりひとりのファンが増えていって。

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 そして、次第にその輪はどんどん大きくなって、彼女たちと直接関係のない人たちも、たくさんの人がニジガクのみんなを応援するようになります。

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彼女たちのまわりは、スクールアイドルが大好きな「ファン」であふれています。

 

 

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かすみんボックスのかわいさは維持して、「かすみん」一人を押し出す要素が上手くオミットされてるのすごい。

 そんなみんなが届けた声は、どっしりとかすみんボックスの中に集まりました。

 そして、その気持ちは、生徒会の役員にまで届き、ついにスクールアイドルフェスティバルは承認されるのです。

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 生徒会副会長は、せつ菜ちゃんのファン。

 

かすみ「だってかすみんたちの夢だけ叶えるより、応援してくれるみんなのやりたいことも叶った方が、絶対楽しいじゃないですか!」

 「応援してくれるみんな」の夢。彼女たちは、それを叶えることを目標にします。「みんな」は、ニジガクのスクールアイドル9人と、それから侑ちゃんひとりと、それから「応援してくれるみんな」も含めて「みんな」なのです。ライブだけじゃない、スクールアイドル好きみんなが楽しめる、スクールアイドルのお祭り。それがスクールアイドルフェスフェスティバルです。そして、スクールアイドルだけじゃない、スクールアイドル好き「みんな」の夢を叶えるストーリー、それがアニガサキの物語なのです。

 

 私たちも、アニガサキの物語の中で同好会のみんなに魅了されてきたファンたちと同じように、アニガサキを画面越しに見ながら、同時に彼女たちに魅了されて、ファンになってきたのではないでしょうか。思い出してみて下さい。放映の時間だけに限らず、配信されるアニガサキを繰り返し繰り返し見ていた毎日。『DIVE!』や、『VIVID WORLD』のPVを、何度も何度も再生した私たち。『ツナガルコネクト』の璃奈ちゃんのステージを目撃して、璃奈ちゃんに全部もっていかれてしまったのも、作品中のみんなと同じです。しずくちゃんの舞台だって、私たちは美咲ちゃんや姫乃ちゃんと同時に目撃しているのです。そして、作品中ではしきりに、彼女たちの評判が、動画などSNSで拡散されていく様子が描かれます。私たちも、アニガサキを見ながらにして、「ヒトリダケナンテエラベナイヨー!!!」と毎週叫びながら、アニガサキと同じペースで物語を受け取り、体感して、彼女たちのファンになって、そして「みんな」の一員になっていたのです。

 アニメをみて、たくさん感想をつぶやいて、絵を描いて、議論して、そしてこうやってブログを書いて。そうやって「大好き」を表現してきたのも、作品中の「ファン」たちと一緒です。だからこそきっと、スクールアイドルフェスティバルには、私たちも巻き込まれていくのかもしれません。あるいは、アニガサキ自体がスクールアイドルアイドルフェスティバルということもできるでしょうか。

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 私たちは、ニジガクのファン。

 初めての、「みんなで叶える物語」。その物語と一緒に私たちも駆け抜けて、「みんな」の夢を叶えられたらいいな、そう思うのです。

 

 

 ところで......

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 今日子ちゃんは、歩夢ちゃんのファン。

 今は侑ちゃんしか見えていない歩夢ちゃんにも、ファンはいます。歩夢ちゃんの進む未来に、きれいな虹がかかっていたらいいな。

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歩夢ちゃんの笑顔がまた、見れますように......!

※引用したアニメ画像は、特に表記が無い場合、すべてTVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(©2020 プロジェクトラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会)第6,9,11話より引用。

夢は別れのプレリュード TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』視聴レポート #10 「夏、はじまる。」

TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』視聴レポート #10 「夏、はじまる。」

 

夢は別れのプレリュード

 

 

※当記事は、TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』のストーリーに関するネタバレ、あるいは、アプリ『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバルオールスターズ』のストーリーに関するネタバレを含みます。アニメ未視聴の方、アプリ未プレイの方は、予めご了承ください。

 

↓第9話の記事はこちら

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夏、はじまる。

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夏、はじまる。

 何言ってるんだろうっていうくらい季節感が無いですが、現実の季節に逆行していくのがアニガサキのスタイル。それより、具体的な時期が確定したということが、アニガサキの物語を考えていくうえで大きい気がします。

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22点でにゃんにゃん。

 22点という深刻な点数に対して、ここに海未ちゃんがいれば即刻確保軟禁され成績が上がるまで大勉強会だったかもしれませんが、アニガサキではあっさりと流されます。私はこれまでもアニガサキがすごく個人主義のお話で、お互いの内側に抱える問題には干渉しない、ということを言ってきたのですが、これもそうかもしれません。とはいえ、「これで1学期はおしまい」なわけです。これまで、入学式も新入生勧誘もなかったアニガサキにおいて、初めて「今」が具体的にいつなのか示された瞬間でした。

 この時点で夏であることは、これまでのラブライブ!のストーリーと変わりありません。もしかしたら、アニガサキにも2期が期待できるかもしれませんね......!

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 合宿所って学校じゃん!

 学校なんかい!合宿回だと思っていたけどこれ実質お泊り回じゃん。学校で「合宿」をするアイドルアニメ、初なのではないでしょうか。思い返してみれば、アニガサキはこれまでほとんどお台場を出たことがありません。どんなに遠くても東雲や門前仲町で、すごくコンパクトな範囲に限られています。まるで当初の2020年東京オリンピックの計画のようです。例えば、しずく回の8話では鎌倉を登場させてもよかったと思うのですが、登場することはおろかそもそもしずくちゃんが鎌倉に住んでいることすら触れられず仕舞いでした。これも8話ですが、藤黄学園との合同演劇祭も会場は虹ヶ咲学園。9話のダイバーフェスも、お台場で行われるフェスでした。はっきりした理由は分かりませんが、あらためて、アニガサキがどんなコンセプトで作られた作品なのか、考える時のヒントにはなりそうです。

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驚くほど美味しいんですか!?

 ポジティブすぎるせつ菜ちゃんに爆笑。お料理をするシーンですが、せつ菜ちゃん以外のメンバーは、ピザを生地から仕込んだ彼方ちゃんを筆頭に、みんなそつなく料理をこなしています。ニジガクのみなさんの家事力の高さよ。優木せつ菜さんのスーパーポジティブはまあなんというか、見習いたいよね。ちょっと気になったのは璃奈ちゃんボード。スクスタでは璃奈ちゃんボードはデフォルトに装備されているものなのですが、アニガサキでは璃奈ちゃんボードは表現したいときに限って着用される追加装備なんですよね。10話ではかなり璃奈ちゃんボードの出番が多かったですが、これに関してはアニガサキが終わった後に、新たにアニガサキでの璃奈ちゃんボードについて考える必要があるかもです。

 

 さて、そんな合宿回の10話ですが、8話が一年生回だったとしたら、10話は二年生回とも言えるでしょうか。特に侑ちゃんと歩夢ちゃん、そしてせつ菜ちゃんにスポットライトが当たりながら、物語が進んでいきます。

 

侑と歩夢

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 歩夢ちゃん。

 10話では、歩夢ちゃんが侑ちゃんに抱える複雑な感情が描かれました。

 侑ちゃんと歩夢ちゃんは、同じ団地、同じマンション、となりの部屋に住む、幼馴染。そんな、超濃密な関係性です。

 彼女たちはこれまでいつだって一緒でした。小学校も、中学校も、そして高校も。1年365日を当たり前のように同じ空間で過ごし、全ての思い出を共有して、ここまで生きてきました。彼女たちから「熟年夫婦」感が強く漂うのも、実質的にパートナーのような生活を長い間続けてきたことから考えれば、至極当然なことと言えるかもしれません。虹ヶ咲学園に入学した2人。ラブライブ!の物語の特徴として、「主人公は高校2年生の段階から話が始まる」という点が挙げられると思います。始まるタイミングは、決して入学のタイミングではないわけです。彼女たちは、それぞれの理由でスクールアイドルに惹かれていき、部活動にのめり込んでいくことになります。

 彼女たちの物語もまた、2年生から始まります。そして、彼女たちの事情を表す言葉は、やはりこれだったと思うのです。

歩夢「でも、私たちもう2年だし、ふたりで予備校通うっていってたよね?スクールアイドルなんてやってる暇ないんじゃ......?」

 彼女たちは確かに、「大学受験」という問題を抱えているのです。これまで、ラブライブ!では限られた時間に関すテーマは取り扱われつつも、将来の進路に関することが大きく描かれてきたことは無かったので、非常に印象に残っています。

 

「出会い」と「別れ」

 出会いがあれば、また別れがあります。それは、生きている限りは、表裏一体のものです。そして、そのスパンはそれぞれでも、思ったよりもすぐに別離はやってくるのです。

 大学受験は、初めての「自己責任」での進路選択の機会です。小学校・中学校はもちろんのこと、高校も大概の場合は、自分の意思だけで選択されることは少ないように感じます。しかし、大学受験は違います。高校進学率は97%、大学進学率は58%。97%の人が同じ道を歩んできた人生も、高校を卒業するタイミングで一気に多彩に散らばっていきます。大学に行くか行かないかというのは、その選択の最も大きなものでしょう。ひとえに大学といってもたくさんありますし、それに専門学校という選択肢だってあります。大学に入学するにしても、学科を選ばなくてはいけないケースがほとんどです。高校を卒業して、大学を受験する。この瞬間は、私たちが初めて自分が何者になりたいのか、それを真剣に考え始める瞬間なのです。

 受験も就活も、信じられないほど早く始まってしまうものです。彼女たちは華の高校生活を過ごしながら、しかし予備校通いを始めることによって、確かにその決断へと歩みを進めていっているのです。そして、それはもしかしたら、18年ほぼ完全に時間を共有してきたお互いが、初めて別の道を進み始める瞬間になるかもしれないのです。

 

「何者」かになること

 ニジガクのメンバーは、それぞれ何者になりたいのかを追求してきました。そして、彼女たちはスクールアイドル活動、もっと広く表現するなら部活動の中で、自分が何者になりたいのかを考え、向き合い、まだ自信は持てないまでも答えを見つけてきたのです。それがバラバラなのは、むしろ当たり前のことでした。今彼女たちは、虹のように集まってカラフルに、スクールアイドルとして空を彩っているかもしれませんが、しかしいずれ確かにプリズムに触れたようにそれぞれの色に従って、ばらばらに拡散していってしまうからです。

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夢と希望にあふれた、私たちのライブ!

 それがもっともわかりやすいシーンは、楽しいパーティーの終わりのライブの話でした。「私たちのライブ」はどんなものになるのか。8人はそれぞれ、これまでの各当番回で見つけてきた答えをそれぞれ抱きしめて、それぞれのステージへのイメージを膨らませているのです。もう、彼女たちは準備万端でした。

 歩夢ちゃんの答えだけが異質なことは、鋭い皆さんはきっと気づいていることでしょう。

歩夢「ステージに立つだけで、胸がいっぱいになっちゃいそうだよ」

 ステージに立つ「だけ」。いまの歩夢ちゃんに想像できるのは、そこまで。まだまだ、歩夢ちゃんは自分が何者になりたいのか、それを見極められていないのです。

 ここで忘れてはいけないのが、侑ちゃんの答えです。

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それだけで、ときめき。

愛「ねえ、ゆうゆはどんなライブ見てみたい?」

侑「え?んー、私は......。みんなのステージが見られるだけで、ときめいちゃう」

  みんなのステージが見られる「だけ」でいい。まだ侑ちゃんにも、自分が何者になりたいのか、明確なビジョンはないのです。10話を観ると、どうしても侑ちゃんが一人でに成長していって、歩夢ちゃんが一人取り残されていたような状態がそれ以前からあったような感覚がありますが、きっとそうではないのです。侑ちゃんは3話までは多くの出番がありましたが、4話以降はすっかり影が薄くなってしまいます。それに、3話までの侑ちゃんは、まだ夢の手前に立って、かすみちゃんやせつ菜ちゃんの背中を押していたのであって、侑ちゃん自身が成長できていたわけではありません。2話から9話まで、8人が驚くようなスピードで成長していく中で、侑ちゃんと歩夢ちゃんは確かに、まだスタートラインにとどまっていたのでした。

 

限られた時間

 しかし、10話に入ってくると、状況は変わってきます。

侑「みんな、すごいなあ。自分のやりたいこと、すっごく分かってて。私も、なにか......」 

  侑ちゃんは、驚くほどの成長をみせるメンバーを見て、考えさせられることがあったようです。そもそも、侑ちゃんはアイドルでない以上、スクールアイドル同好会においての立場は曖昧です。自分が何者であるのか、それを一番示さなくてはいけないのは、侑ちゃんなのだと思います。

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侑ちゃんの、夢。

 10話を経て、侑ちゃんは自分の「夢」についに気づきます。10話が終わるときには、歩夢ちゃんと侑ちゃんのあいだには決定的な相違ができてしまっているのです。

歩夢「ねえ、侑ちゃん。ほんとうは今頃、二人で予備校行ってたかもしれないんだよね~」

「でも、やっぱりこうして一緒にいる」

「同好会に入るって決めた日のこと、覚えてる?」

侑「うん、もちろん」

歩夢「侑ちゃんがあの時、 私のスクールアイドルの夢を、一緒に見るって言ってくれたの、すごく嬉しかったな」

侑「スクールアイドルの夢、そっか。あの時、歩夢が勇気を出してくれたおかげなんだ。歩夢の夢を一緒に追いかけて、いまの私がいる。そして、みんなとも!」

歩夢「えっ?」

侑「まわりにどんどん輪が広がって、いつのまにか、スクールアイドルが好きな人たちで、すごく大きな力が生まれてた。ありがとう、歩夢」

「私も勇気を出して、いまの自分にできること、やってみる!」

  噛み合わない会話。この後、ひとりだけ取り残される歩夢ちゃんを横目に、侑は「スクールアイドルフェスティバル」の開催を宣言します。これは、侑ちゃんが8人と同じように、自分の夢を見つけて、そして自分が目指す何者かに向かって駆けだした、そんな独り立ちの時でもありました。

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ひとり、取り残される。

 侑ちゃんと歩夢ちゃんが噛み合わなかった理由は、歩夢ちゃんは「侑ちゃんが自分の夢を一緒に見てくれる」ことを望んでいるのに対して、侑ちゃんは「(みんなの)スクールアイドルの夢を一緒に見たい」と思っているということです。

  なにより、歩夢ちゃんがここで「予備校に行くはずだった」という話を戻してくるのが、すごく面白いと思うのです。このことは、確かに1話で心に残ったフレーズではありましたが、侑ちゃんも、そして視聴者の私たちも、すっかり忘れてしまったことだと思います。思えば、お皿洗いのシーンもそうですね。一緒にお皿洗いしたのが中学校の時なのかそれとも小学校の時なのか、私たちにはそれほど重要な問題ではないように思えます。それに、侑ちゃんは「ずっと一緒にいるかも」という歩夢ちゃんの発言を否定していないのです。

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おしどり夫婦の揃わない足並みは、外からはわからない。

 一連の歩夢ちゃんの行動を愛が重すぎる(メンヘラ)などと呼ぶむきもあるようですが、私は歩夢ちゃんの行動を突き放してしまうのではなく、上原歩夢という女の子を理解したい、そんな気持ちでいます。ここは、歩夢ちゃんの文脈を考えてみましょう。

 「予備校に行くはずだった」のと、「スクールアイドルをして、一緒にいる」ということは、歩夢ちゃんの中では対置されています。つまり、予備校に行くということは、歩夢ちゃんにとっては侑ちゃんと離れてしまう可能性があるということなのです。それは、すでに話してきたとおりです。予備校に行くといくことは、進路を考えるということと同義です。いつも侑ちゃんと一緒にいる歩夢ちゃんは、侑ちゃんが必ずしも歩夢ちゃんと同じ道を選ばないかもしれないということに無意識か意識してか、気づいていたのかもしれません。

 しかし、彼女たちが入部した「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」は、みんなが「それぞれの夢」を目指す場所でした。かすみちゃんから果林ちゃんまで、8人がそれぞれの夢を見つけていくなかで、侑ちゃんも自分の夢を見つけなくてはという意識が芽生えていきました。そして、侑ちゃんは自分の夢を、ついに見つけたのです。

 「大好きな人とずっと一緒にいたい」という歩夢ちゃんの想いは、誰でも持っているものだと思います。それに、ときにそう言った想いを抱えきれずに、壁にぶつかってしまうこともあるものです。

 それでも、これは歩夢ちゃんにとって絶対に逃げられない問題です。そして、きっと歩夢ちゃんの思う通りにはならないかもしれません。どれだけ長い時間一緒でも、どんんなにたくさんの思い出を積み重ねても、向き合わなければならない絶対的な真実。それは―

「どんなに仲良しでも―たった一人きりの友だちでも、きみはクリスマス・イブは家族で過ごした。それと、同じだ」

                      重松清『きみの友だち』 

  誰かにとっての何かでいたい。誰にでも普遍的にある欲求です。しかし、「誰かにとっての何かである」というのは、すごく難しいことです。「友だち」でいること。「恋人」でいること。「家族」でいること。「夫婦」でいること。そして、「自分」でいること。私たちの持っている時間は有限です。有限の時間しか持っていない私たちは、自分で物事に優先順位をつけて、日々を過ごしていきます。私たちは、望みの全てを叶えることはできません。「無限」も、「永遠」も、そこにはありません。そして、私たちはどんな言葉でその関係を表しても、結局は他人なのです。私たちは生きていく上で、「時間が有限」であること、そして「人間は結局一人」であることを、嫌と言うほど実感しながら生きていきます。それほど、私たちの人生は、「出会い」と「別れ」に溢れているのです。

 

夢は別れのプレリュード

 きっとこれから侑ちゃんと歩夢ちゃんは、その事実と折り合いをつけていくのでしょう。このことを「大人になる」と簡単な言葉でまとめてしまうのはやめておきます。「限られた時間」は、ラブライブ!を通底する大きなテーマの一つです。それぞれの夢を目指す彼女たちもまた、ラブライブ!の世界を生きているのです。

 彼女たちが「夢」を抱いた時、同時に彼女たちの背後には「別れ」が忍び寄っています。「3年生の卒業」という別れにμ'sやAqoursが向き合ったのと同じように、彼女たちもまた夢を抱いたが故の別れと向き合っています。そして、この別れは、1年の積み重ねからの別れではありません。16年という長い歳月をかけて築き上げてきた関係が相対化されるのです。歩夢ちゃんに、すぐその残酷な事実を受け入れろというのは酷でしょうし、彼女たちはぶつかり合って、間違いに気づいて、そして成長していくのです。

 

侑とせつ菜

せつ菜「あの、いつか侑さんの大好きが見つかったら、今度は私に応援させてください」

侑「私の?」

せつ菜「はい、侑さん自身の、大好きを」

  10話で歩夢ちゃんを置いて成長した侑ちゃん。その成長の陰にはどんな背景があるかと言ったら、それは明らかにせつ菜ちゃんでしょう。

 これまでも、アニガサキの各話では、担当回のメンバーに関わらず細やかなところまで「成長」が描かれてきました。10話でひときわ成長をみせるのは、侑ちゃんと、それからせつ菜ちゃんです。合宿をするにあたって、始めは頑固に「練習」することを求めてきたせつ菜ちゃんも、物語を追うごとに少しづつ柔らかくなってきます。そして、せつ菜ちゃんが音楽室でかけた言葉こそが、侑ちゃんを新しい夢へと導いたのです。

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夢を見つけた9人と、ひとり。

 これまでも、同好会のメンバーはそれぞれ影響しあうことによって成長してきました。10話における侑ちゃんとせつ菜ちゃんの成長も、また同じものです。だからこそ、歩夢ちゃんの足踏みは目立ちます。侑ちゃんしか見えていない歩夢ちゃんには、他のメンバーと影響しあって成長することは難しいのかもしれません。

 一方、そんな歩夢ちゃんを置いて、侑ちゃんは2つの夢へと走り出します。一つは、スクールアイドルフェスティバルを開く夢。これは、同好会みんなの夢でもあります。もう一つは、侑ちゃん自身の夢。そして、その全貌はまだ明らかになっていません。しかし、そのヒントは音楽室のシーンにたくさん散らばっています。

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それは、あの時と同じように見えて、流れる想いは逆向きな、そんな時間。

せつ菜「ピアノ、随分上手になりましたね」

侑「ううん、まだまだだよ。いっぱい練習したら、もっと上手くなるかなあ」

せつ菜「 私も、歌やダンスを、何度も練習しました」

侑「何度も、か。やっぱり、何事も練習あるのみだね!」

  ピアノはある程度は幼いうちから始めないと、大人になってから習得するのはなかなか難しい......と、そんな現実的な話ではなく、しかしなかなか現実的な感じを受けるレベルで、侑ちゃんはピアノが弾けるようになりました。しかし、侑ちゃんは褒めるせつ菜ちゃんに対して「まだまだ」と答えています。これは、本気で上手くなろうと思って努力した人でないと出ないセリフです。自分が努力して今の現在地にたどり着いたことを分かっているからこそ、更に高みを目指すためにはもっと努力を重ねる必要があることを知っているのです。

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音を奏でる。そんな夢。

 侑ちゃんの夢、それはきっと、音楽に関することで、そして、ピアノをうまくなったら、近づいていくことができる夢.......。みなまでは言いませんが、スクスタでの音楽科から普通科へと設定が変更になっている侑ちゃんが目指す「音楽の夢」。そして、それを拒む歩夢ちゃん。これからどんな話になっていくのか、想像は膨らむばかりです。

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美しい月あかりは、二人の未来をどう照らすのか。

 

※引用したアニメ画像は、特に表記が無い場合、すべてTVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(©2020 プロジェクトラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会)第10話より引用。

参考文献:重松清『きみの友だち』 新潮文庫 2005

ライバルで仲間 TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』視聴レポート #9 「仲間でライバル」

TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』視聴レポート #9 「仲間でライバル」

 

ライバルで仲間

 

 

※当記事は、TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』のストーリーに関するネタバレ、あるいは、アプリ『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバルオールスターズ』のストーリーに関するネタバレを含みます。アニメ未視聴の方、アプリ未プレイの方は、予めご了承ください。

 

↓第8話の記事はこちら

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 こんにちは。こばとんです。

 アニガサキ9話は「仲間でライバル」。9人目の個人回となった果林ちゃん回ですが、ここで虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会自体のコンセプトテーマを持ってくるのには驚きました。てっきり最終話くらいのタイトルに持ってくるものかと......。

 こうなってくると、これからの計4話(だよね?)で、何を描いていくのかが俄然気になります。これまで一人づつ繊細に、丁寧に、鮮やかに。9人それぞれを描いてきたアニガサキですが、その分「全体のテーマ」は少し見えにくくなっている感じもして......。その点、十人十色の同好会メンバーはそれぞれ個人を尊重して、「仲間でライバル」であるということは大きなテーマの一つかな?と思っていたので、ここで回収するのは少しびっくりでした。これから先、どんな物語を展開していくんでしょうか。これまでの8話を通じて、アニガサキへの期待と不安はすっかり信頼へと変わっているので、ただ楽しみに待つのみです。やっぱり鍵を握るのは「高咲侑」ですかね?

 アニガサキがこれだけ上手だと、もう伏線は綺麗に万全に張られている可能性もあるのですが......。ブログを1話づつ書いていくスタイルでは、どうしてもそのあたりの視点は曇ってしまう面があることは確かです。これに関しては、アニガサキ視聴レポート完走後にいろんな視点でアニガサキを串刺しにした記事を書きたいと思っていますので、乞うご期待ということで。きっと、アニガサキが終わったら巨大な喪失感とすっかりルーティンになった生活習慣で筆が止まらない気がします。

 さ、9話ですよ9話!とある事情からちょっと正気を保てる気がしませんが、早速おはなしを始めましょう!

 

ニジガクの現在地

 9話自体の物語に入る前に、少し現状整理をしたいと思っています。

 と言うのも、この9話というのはこれまでの個人回の結論でもありますが、この後のストーリーのはじまりでもあるからです。次回の10話は予告で見た通り合宿回で、10人全員、同好会全体の話になっていく可能性も高く、少なくともここで話の潮目が変わることはたしかでしょう。

 9話では、同好会が新たなステップに進む回であるだけに、アニガサキの世界全体の解像度がちょっと上がった気がします。

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圧倒的強者感のある東雲学園。

 まずは、スクールアイドル界の事情です。既に7話で彼方ちゃんの妹、遥ちゃんが登場し、スクフェスの転入生がそれぞれ所属していた学校がスクールアイドル部を擁し、活動していることは分かっていました。遥ちゃんの所属する東雲学園は少なくとも虹ヶ咲よりはかなり格上の強豪校です。しずくちゃんの所属する演劇部の合同演劇祭で、藤黄学園の存在が明らかになりました。藤黄学園にもスクールアイドル部があり、こちらも東雲と並んでかなり強豪のようです。

 実家より長い時間を過ごしているオタクも多そうなお台場ゲーマーズのシーンでは、スクールアイドルのグッズが販売されている様子です。この商品たちが合法なのかという疑問は置いておいて、スクールアイドル自体がそれなりの人気を持っていることがわかります。ただし、東雲学園や藤黄学園のスクールアイドルのグッズはある一方で、虹ヶ咲学園のスクールアイドルのグッズはありません。明らかに両学園に対して虹ヶ咲学園の知名度が、現状劣っているということが示されています。

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彼女たちのグッズは、まだ無い。

果林「ねえ、あなたのグッズはないの?」

せつ菜「え?ないですよ~。ちょっと悔しいですけどね。いつか私たちも、ここに並べるようになりたいです」

 せつ菜ちゃんの向上心溢れる発言に笑みを浮かべる果林ちゃんが印象的なシーン。ここでの発言から、優木せつ菜というスクールアイドルが同好会内でもその知名度、人気、経験において一歩先を行くことが分かります。明らかに果林ちゃんにとってせつ菜ちゃんは「スクールアイドルの先輩」なわけです。『先輩禁止』や『ダイヤさんと呼ばないで』で明確に年齢差などでの立場の違いを一掃し、横一線であることを強調した前作・前々作との違いが表れている気がします。彼女たちはやはり「個」としてスクールアイドル同好会に所属しているわけです。

 

 一方、スクールアイドルの音楽界での立ち位置も興味深いものがあります。

 9話で、果林ちゃんがステージに立つ「ダイバーフェス」。動員3000人の(微妙に少ない気もするけど?)大規模音楽イベントは、次のように紹介されます。

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ダイバーフェスにおいて、スクールアイドルは一つの枠を得ている。

侑「ダンスミュージックにロックにポップス、それにスクールアイドル。ほんとうにいろんな音楽が集まってるんだね~」

 この世界には「スクール」じゃないアイドルはいないのか?という疑問は置いておくとして、アニガサキの世界ではスクールアイドルは音楽の中の1ジャンルとして確立されていることが分かります。前々作、前作ではスクールアイドルは未発達のジャンルで、部活動自体への理解を得ることが出来なかったり、スクールアイドル自体の知名度を広げていったり。まだまだ「スクールアイドル」というジャンルが発展途上で、それが広がっていく様子も同時に描かれてきました。しかしアニガサキの世界においては、「スクールアイドル枠」が確保され、既にスクールアイドルは他の音楽ジャンルと並び称されるほどのアプリオリな概念です。

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「スクールアイドル」は、アニガサキの世界で燦然と輝いている。

 そもそも、「スクールアイドル」という言葉はラブライブ!の世界の中だけに存在する、この世の中には存在しない言葉です。ラブライブ!を知らない人からしたら、そんなリアリティーのない話、と思われても仕方ないくらいにフィクションです。アニガサキは前々作・前作との具体的な時系列は全くもって不明ですが、しかしそういう意味で全く状況は違うと言えるでしょう。スクールアイドルがあたりまえの世界を彼女たちは生きています。スクールアイドルがあたりまえになったのは、物語の中でも、私たちの中でも、偉大な先駆者たちのおかげです。そして、スクールアイドルの存在があたりまえだからこそ、彼女たちの物語は「スクールアイドルの物語」ではなく、「スクールアイドルに挑む一人ひとりの物語」として高度に成立しているんじゃないか、そう思うのです。

 

 仲間だけどライバル

 9話の物語の扉を開くのは、意外な人物でした。

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現れたのは......?

 そう、東雲学園の近江遥ちゃんと、そして、藤黄学園の綾小路姫乃ちゃんです!

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遥ちゃんと姫乃ちゃんは、ある提案を持ってきた。

 改めて説明すると、彼女たちはアプリ「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」のモブスクールアイドル「転入生」のメンバー。もとはと言えば、この虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会も転入生選挙の上位三人(しずく・エマ・彼方)を軸に始まったプロジェクトなので、彼女たちはかつての仲間あるいはライバルといった立ち位置でしょうか。

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かわいい....................。

 綾小路姫乃ちゃん、とっっても可愛くないですか?

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これが、アニガサキ品質......!

 唐突にすみません.......。いや、でもやっぱり、可愛くないですか?姫乃ちゃん。その麗しき横顔は、アニガサキ品質の作画によって国宝級の美しさを手に入れています。薔薇の髪飾りと艶やかな黒髪の素晴らしきマリアージュ。落ち着き払った声と凛とした立姿。これはまさに、「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花」ってやつでは?それからさあ、スクールアイドル衣装めっちゃいいじゃん。その黄色のかわいらしい衣装を着るとイメージが変わってやばい。少ない登場機会で見事にギャップまで織り交ぜてくる隙の無さ。あとさあ、美咲ちゃんと並んだ時の身長差!!!!!コンパクトサイズな姫乃ちゃんがかわいい!なにそのいじらしい反応!頭なでなでしたいぞ、よしよし。

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愛おしい身長差。

 —こほん。

 推しのひとりなんです、姫乃ちゃん。彼女たちは、まだAqoursが産声を上げる前からずっと私たちの近くにいたわけで、その分愛着も強いものがあります。「動いてる!」「しゃべってる!」と、いちいち感動しているのです。

 せっかくですので、綾小路姫乃ちゃんのご紹介を。藤黄学園でスクールアイドルをする彼女は、華道部との掛け持ち。和服に身を包む少女ですが、写真が趣味でもあります。アニガサキでは穏やかな雰囲気を醸し出していますが、スクフェスでは意外と活発。スクールアイドルとして恥じらいをみせることも少なく積極的で、努力を重ねて「天下」を取ることを目指しています。

 

 そんな彼女が、1年生にして東雲学園のセンターを射止めた超大型新人の遥ちゃんと一緒に、虹ヶ咲学園までやって来たのです。その目的は、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会に、音楽イベント「ダイバーフェス」への出演を依頼しにくる、というものでした。「ライブがしたい」。ライブの機会を渇望する彼女たちにとって、動員3000人のフェスへの出演依頼は、1マス飛ばすどころか10マスくらいすっとばしたほどに願ってもない貴重な機会でした。かすみちゃんが食い気味の反応を見せていますが、きっとそれはメンバー全員が同じ気持ちだったでしょう。

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遥ちゃんは、ほんとうに優しい子だと思います。

 しかし、遥ちゃんは冴えない表情を浮かべます。彼女が申し訳なさそうに伝えたのは、「スクールアイドル枠で披露できるのは3曲、よって虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会が披露できるのは1曲」という、ごく当たり前の事実でした。しかし、遥ちゃんは同好会に実質体験入部までして、姉からきっと逐一活動の様子を聞いて、内部事情を知っている人間です。このあたりまえの事実は、彼女たちの事情に照らし合わせれば深刻な問題でした。ソロアイドルである彼女たちには、ステージに立つ1人を選ぶ必要が、裏を返せば、ステージに立てない8人を決める必要があったのです。

 

 「ソロアイドル」。4話でも葛藤が描かれた通り、彼女たちは「ソロアイドル」のもつ問題から目を背けていたわけではありません。しかし、遥ちゃんと姫乃ちゃんが持ってきた話によって、彼女たちは否応なくその問題と向き合う必要に迫られたのです。

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絆は、遠慮を生んでしまった。

 これまでの8話でしっかりと同好会メンバーの絆が深まってきただけに、この問題は治りかけた古傷に塩を塗り込まれるように痛く、辛い問題でした。彼女たちは決してかつての同好会廃部の危機を忘れたわけではなく、かつその上に新しく絆を積み重ねてきたのです。「くじ引き」といった日和見的な選択肢が上がるのは、決して甘すぎることとはいえないと思います。

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果林ちゃんは、見ているところが違う。

果林「互いに遠慮しあった結果運頼み。そんなのでいいわけ?」

「衝突を怖がるのはわかるけど、それが足枷になるんじゃ意味ないわ。それで本当に、ソロアイドルとして成長したと言えるの?」

 「仲間」だけど、「ライバル」。彼女たちはその現実を突きつけられて。戸惑いました。しかし、果林ちゃんだけはシビアは反応を見せました。これだけシビアでサバサバしているのは、果林ちゃんだけが持っている強さ、魅力と言えるでしょう。少なくとも果林ちゃんがこの時厳しく現実を示さなければ、日和見的な姿勢はそのままに、いつまでも流されていってしまったでしょう。「ソロアイドルとしての成長」は、明らかになれ合いの環境では達成されません。4話で既に言及された通り、ソロアイドルは一人でステージに立つのです。誰も、ステージ上で助けてくれる人はいません。私も少しだけ経験がありますが、ステージでの孤独感というのは相当なものです。「みんなのこと見えてるよ」というアイドルのコメントは、それが積み重ねた練習と、努力と、経験に裏打ちされた自信があるからこその視野と余裕です。それを当たり前と思ってはいけないと思います。スポットライトを浴びた瞬間、全てが真っ白になってしまうことだってあります。もう後にも先にも進めないくらい混乱するときもあります。それでも、時は止められないのです。仲間が同じステージにいないなら、なおさらです。一度ステージに立ったら、ステージを降りるまで「待った」は許されません。それに、時間は限られていますから、やり直しも効かないわけです。ファンの力を除けば、ステージ上では自力救済しかありえません。一人でステージに立つ分、グループで活動する東雲学園や藤黄学園のひとりひとり以上のパフォーマンスが出来なければ、本来話にならないわけです。同好会の中でも、お互いがライバルとして常に切磋琢磨するからこそ、さらなる成長が見込めるのです。衝突を怖がる甘さが足枷になるというのは、そういうことです。

 姫乃ちゃんも、このことを良く分かっていたようです。

姫乃「私は、一人でそこに立ち向かうあなたを尊敬しているんです」

 この言葉は、「ステージに立つ」というのがどういうことかを知っている、経験豊富な姫乃ちゃんだからこその言葉でしょう。しかし、この言葉は思わぬ力をもって、果林ちゃんを追い詰めてしまうことになるわけです。

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すれ違う二人の心。

 

ライバルだけど仲間

  綾小路姫乃ちゃんについて長々と紹介したのは、決して私の私利私欲によるものではありません(ほんとか?)。なぜなら、姫乃ちゃんはこのストーリーの中で、欠かせない存在だと思うからです。

 逆説的な話ですが、このストーリー、姫乃ちゃんがここまで出なくても十分成立すると思いませんか?

 もちろん虹ヶ咲学園をダイバーフェスに推薦してくれたのは姫乃ちゃんの力ですが、その後に直面する「ソロアイドル」の問題のはもともと避けられない彼女たちだけの問題です。果林ちゃんの方向音痴だったり、可愛い側面が同好会のメンバーに少しずつバレていって、果林ちゃんが素直になれていくのも、さらに言えば、果林ちゃんが一人でステージ立つ怖さに改めて怖気づくのも、それは同好会と果林ちゃんの問題です。同好会としても、果林ちゃんとしても、向き合うべきして問題と向き合い、それを乗り越えていくのです。

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方向音痴な可愛い果林ちゃん

 しかし、姫乃ちゃんはとても印象的に物語に挿入されています。それは、この物語において綾小路姫乃という人物が、すごく重要な意味をもっているからです。

 8話のラストでは、わざわざ不穏な印象を受ける劇伴を使ってまで、「怪しい存在」として藤黄学園の二人を登場させます。9話冒頭でも、8話でしずくとかすみが向き合った教室のシーンの劇伴を使って、やはり観客の不安をあおります。明らかに危ない存在、もしかしたら敵なんじゃないかと思わせるような雰囲気で、綾小路姫乃は物語に登場します。視聴者の多くが、少し身構えるように姫乃ちゃんに向き合っていたでしょう。

 不安は、ある意味では的中します。先述したステージ裏での果林ちゃんと姫乃ちゃんが邂逅するシーンでは、姫乃ちゃんの言葉は果林ちゃんの不安を増大させ、果林ちゃんをステージから逃げようとするほどに追い込んでしまいました。

 果林ちゃんは、明らかに姫乃ちゃんのことを意識しています。

果林「遥ちゃんはともかく、綾小路さんは、好意だけで私たちを誘ったわけではないでしょうね」

 璃奈ちゃんと彼方ちゃんは、意外そうな反応をしています。彼女たちの中には、そういう意識はなかったのでしょう。しかし、9話を見ている私たちは、きっと果林ちゃんの気持ちに近かったのではないでしょうか。それは間違いなく、劇伴の魔法です。私たちは、巧妙に仕組まれた劇伴と演出にまんまと騙されていたのです。

 

 この不安感は、果林ちゃんのライブ後のシーンでちゃぶ台返しのように見事にひっくり返されます。

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「魔法」が解ける。

姫乃「素敵です......」

美咲「見られてよかったわね、果林さんのステージ。モデルデビューした時から大ファンって言ってたもんね」

姫乃「もう!美咲さんからかわないでください......!」

  この瞬間、魔法が解けます。あれだけ手強そうだった姫乃ちゃんは、一人のかわいらしい女の子だったのです。身長の高い美咲ちゃんと並ぶ姫乃ちゃんは、むしろ守りたい可愛さに溢れていて、驚くほど怖くなんかないのです。

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それは「推しとの対面」だった。

 魔法が解けたところで、話を巻き戻してみましょう。9話を後ろから見ていく作業です。すると、驚くほどに、姫乃ちゃんの発言に悪意が無かったことがわかっていきます。果林ちゃんがプレッシャーを感じてしまった舞台裏のシーンでも、姫乃ちゃんは終始笑顔で尊敬の念を伝えているだけです。むしろ、モデルデビュー時から追いかけているという超古参ファンの姫乃ちゃんにとっては、推しに会える貴重で短い時間に精いっぱい「尊敬」の気持ちを届けた、という方が適切でしょう。

 もはや「綾小路さんは、好意だけで私たちを誘ったわけではない」というシーンには、ちょっとクスッとしてしまいます。なんといっても、姫乃ちゃんは果林ちゃんのことが大好きなファンに過ぎません。もちろんスクールアイドルとしては「ライバル」であることは間違いありませんが、果林ちゃん個人に対して姫乃ちゃんがそれによって悪意を発動するというのは、明らかに考えすぎでしょう。果林ちゃんの自意識過剰といってもいいかもしれません。姫乃ちゃんが、推しのステージを見るために根回しして虹ヶ咲学園をダイバーフェスのステージに立たせようとした壮大な愛の計画を実行に移していたことを考えれば、果林ちゃんの虚勢は滑稽にすら見えます。

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笑顔に、偽りはなかった。

 まだまだ巻き戻して、冒頭のシーン。ダイバーフェスに虹ヶ咲学園を招待する遥ちゃんと姫乃ちゃんですが、やはりこのシーンでも悪意はまったく感じられません。叶わぬ願いですが、劇伴の音量だけを消すことができたら、もっとわかりやすいかもしれません。むしろ、このステージが彼女たちにとってマイナスな面もあることを主張するのは遥ちゃんの方で、姫乃ちゃんはネガティブなことは一言も言っていません。むしろ、心配そうな遥ちゃんを横目に、姫乃ちゃんは一歩前に出てまで彼女たちの背中を押そうとしています。姫乃ちゃんの中には、どう考えたって罠にかけようかという悪意は含まれていないのです。

 では、なぜ果林ちゃんは姫乃ちゃんをあわよくば「敵」だと思ったのか。それは、私たちの心の中に問いかけるためで十分なはずです。さっきまで私たちも、「魔法」にかけられて、姫乃ちゃんのことを心のどこかで警戒していませんでしたか?果林ちゃんも同じです。それは、誰にでも起きうることなのです。私たちは、どうしても物事に対して先入観をもってしまいます。それは、決して完全に逃れ得るものではありません。人に対して素直になるということは、これほどにまでも難しいのです。競争激しい読者モデルの世界で生きてきた果林ちゃんは、みんなが「ライバル」だと、決して誰もが好意を持っていないと、いやむしろ悪意を持っていると考えた方がいいと、そう学んできたのです。それは、果林ちゃんの中に先入観の高い壁を築き上げてしまいました。彼女は、このシビアさ故に同好会にソロアイドルは「仲間だけどライバル」であるという事実を教えることができましたが、一方でこの先入観故に「ライバルだけど仲間」ということに気付くことができなかったのです。人が「優しさ」をこれでもかと与えてくれても、私たちは素直になれなければ、それを受け取ることすら叶わない危険性を秘めています。姫乃ちゃんと、それからこのあまりに見事に計算された脚本と演出は、それを私たちに「実体験」させることで教えてくれるのです。

 

 自分を守るために築き上げた、高く冷たい氷の壁を崩すことができるのは、暖かなこころだけです。

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まだ果林には、必死に守っているものがある。

 5話で、エマちゃんによって開かれた果林ちゃんの心ですが、それはほんの入り口でしかなかったわけです。5話と同じように腕を抱える果林ちゃんには、まだまだ高い壁を作って守っているものがあります。だからこそ、果林ちゃんは姫乃ちゃんを意識しすぎるあまりに、プレッシャーに押しつぶされてステージに立てなくなりそうになっているのです。

 どうすればいいかって、もう答えは出ています。「ぽかぽかに」してあげればいいのです。そして、もうそれはエマちゃんだけの仕事ではありません。果林ちゃんには9人の「仲間」がいるのです。彼女たちはたしかに切磋琢磨して譲り合いはしませんが、しかしそれぞれの舞台に向かう時は確かに暖かい絆をもってお互いを応援できる、そんな仲間たちです。

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「Forza!」は、彼女たちのカタチ

 円陣が、みんなの団結力を上げるためのカタチだとしたら、ソロアイドルのニジガクには不向きです。9人の想いを、一人に託す。彼女たちのカタチは、ハイタッチです。一人一人は円で等しく繋がっているのではなく、線でそれぞれ繋がっています。その9色の線を一つに束ねて、想いを乗せてステージで歌うのが、選ばれた者の使命です。優しさによって、ぽかぽかな温度で繋がっている彼女たちの線を束ねているかぎり、ステージに立つ果林ちゃんは一人ではありません。

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「仲間でライバル」なのは、きっと9人だけじゃなくて。

 もっと言えば、果林ちゃんにはもっと多くの想いが乗っています。果林ちゃんのステージを心待ちにしていた姫乃ちゃんの気持ちも。そして、ステージの前にいる観客もまた、パフォーマンス次第では力になります。10人の想いを乗せた果林ちゃんは、色とりどりの観客席をロイヤルブルー一色に染めてみせました。この瞬間、果林ちゃんはもう何百、何千もの想いを乗せて、優しさを受け取って、誰よりも力強く、ステージに立っているのでした。 

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果林「仲間だけど、ライバル。ライバルだけど、仲間!」

 高い氷の壁を全てとかしきった果林ちゃんが見たのは、地球上のどこよりもあたたかい、ロイヤルブルーの海でした。「仲間でライバル」。新しい、彼女たちだけのカタチを示したニジガクの船は、いまその海へと漕ぎ出していくのでした。

 

P.S.

  「ライバルだけど、仲間!」のとこの果林ちゃんの声、力が入っていて泣けました。名演技だ.......。

 『VIVID WORLD』、大好きな曲です。ところで、この「ダイバーフェス」ですが、去年参加したバンダイナムコフェスティバルのGuilty Kissのステージを思い出しました。

tsuruhime-loveruby.hateblo.jp

 どんな内容だったのかは上記の過去記事を参照してほしいのですが、とにかくギルキスのステージが圧巻だったんですよね。大人数で勢ぞろいしているアイドルマスター勢に比べればユニット一組のラブライブ!は目立たなくて、まさに「アウェー」だったんですけど......。とにかく、彼女たちのパフォーマンスは圧巻でした。自分たちの魅力全てをぶつけるステージ。歌にダンスに楽曲に、全てにおいて「この会場の全員を虜にしてやる」という気迫すら感じました。きっと果林ちゃんのステージもこんな感じだったんだろうな。

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「相乗効果」のステージを前にしたら、こんな感じになるのも分かるよ。

 それから、フェスって面白いんですよね。ワンマンライブとは全く違った面白さがあります。なにより、相乗効果がすごい。違うアーティストと共演する相乗効果もそうなんですけど、まったく違う背景をもったファンと、アーティストとの相乗効果がまた面白いんです。オタクってよく、コンテンツを知らない人の反応に興味があったりするじゃないですか。あれがライブでできるんです。普段の私たちなら気づかないところに気付いたり、想像しない反応があったりする。そんなイレギュラーが楽しめるのも、フェスの大きな魅力だなあ、と思ったりします。

 さて、来年の2月には2回目のバンナムフェスが開催され、そこにはニジガクも呼ばれています。もうわかりますね?そう、決して出番は多くないんですけど、出来れば見て欲しいと思います。侑ちゃんと同じように「トキメキ」を感じることが、きっとできるはずです......!(配信もあるのでぜひ!)

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バンナムフェスへ走ろう!トキメキに向かって走っていく、侑ちゃんのように!

 

※引用したアニメ画像は、特に表記が無い場合、すべてTVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(©2020 プロジェクトラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会)第8話より引用。