ニジガクカウントダウンウィーク! #4 『哀温ノ詩』

 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会2ndライブまであと4日!

 今日で4回目。折り返しの「ニジガクカウントダウンウィーク!」。前回記事は下を参照してください。カテゴリー「ニジガクカウントダウンウィーク!」でも一覧できるからそっちも使ってね。

tsuruhime-loveruby.hateblo.jp

 今日9月8日はエマ・ヴェルデ『哀温ノ詩』。今回のアルバム『Just Believe!!!』でも特に注目の集まるこの曲を、見ていくとしましょう!

 

※本記事は、アプリ「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル オールスターズ」、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会2ndライブ公式パンフレット、雑誌『LoveLive!Days虹ヶ咲SPECIAL』、書籍『にじよん』などを参考にしており、それらの内容への言及、引用、ネタバレを含む場合があります。予めご了承ください。

 

M6:『哀温ノ詩』 これから紡ぐ、千里を超えるストーリー


【ニジガクみゅ〜じっくウィーク!〜4週目〜】哀温ノ詩 / エマ・ヴェルデ(CV.指出毬亜)

 「癒し」系スクールアイドルのエマ・ヴェルデちゃん。

 イタリア系スイス人のエマは、「スクールアイドルになりたい」と虹ヶ咲学園に転校してきました。今は果林らと一緒に、寮生活をしているよう。

 日本に来るために勉強を頑張った、と本人も言っているとおり、日本語は非常に流暢。というか、ほぼ違和感がないレベル。これなら、鞠莉ちゃんのほうが発音に不安があるんじゃないかな......?イタリア系スイス人とあって、とっさの発言ではイタリア語が飛び出すことも。

 ほんわかふんわりした雰囲気をまとうエマは、みんなのお姉さん的ポジション。抜群の包容力は、8人兄弟の一番上の姉として培ったもの。スイスの兄弟を気にかけつつ、ニジガクのメンバーも妹にしてしまうエマ。生粋のお姉さん気質ですね。

 

 でも、9人の新しい妹は、エマにとっても大切な存在でもあります。遥か彼方スイスから日本までひとりでやって来たエマ。当初はホームシックになることもあったと言いますが、同好会に馴染み、メンバーと仲良くなっていくことで、エマ自身も居場所を得たようです。

 

 そんなエマですが、スクールアイドルとしての方向性にはなかなか苦戦します。エマの目標は「日本の学校に来てスクールアイドルになること」。既に虹ヶ咲学園に入学し、スクールアイドル同好会のメンバーとなったエマは、既に長年の目標を達成し、満足してしまっているのです。スイスで日本語を勉強して、高校で留学して日本にやってくること自体、大変な努力が必要なことですから、決して不思議なことではありません。

 

 「勇気を与えられるスクールアイドル」。「やさしく包み込んでくれるアイドル」。どれもしっくりこないエマ。しかし、エマへの相談で安心感を得た「あなた」は、「安心」をエマのスクールアイドルのテーマに提案します。

 エマには、スクールアイドルを目指したきっかけが明確にあります。それは、大雪のなかひとりの夜を過ごした時に、スクールアイドルの動画を見て衝撃を受けたこと。怖さや不安を吹き飛ばしたスクールアイドルにエマは惹かれ、日本行きを目指すことになるのです。

 当初、「あなた」は、エマがあの夜にスクールアイドルから受け取ったのは「勇気」だと考えていました。しかし、エマがスクールアイドルからもらったものも、また、エマが他の人に与えられるものも、「勇気」ではなく「安心」だったのです。スクールアイドルの動画から「安心」を受け取ったエマは、「安心」を他の人に届けられるスクールアイドルになりたい......。これが、エマの目標になりました。

 

 「癒し」をテーマにしてスクールアイドル活動を始めたエマ。日曜保育のボランティアで、一人の心を閉ざした男の子と、一進一退に向き合いながら心を開かせることに成功したエマは、次のライブで『声繋ごうよ』を披露します。

 民族音楽イメージの『Evergreen』とは一線を画す『声繋ごうよ』ですが、保育園の経緯を踏まえれば、むしろこれ以上ないエマのイメージにぴったりな歌。そしてなにより、一番の驚きは、1stライブでの『声繋ごうよ』の初披露にありました。

 なんと、エマ・ヴェルデ役の指出毬亜さんは、キッズダンサーを引き連れてステージに登場し、一緒にダンスパフォーマンスを見せたのです!

 これは、はっきりいって異例です。これまで、ラブライブ!シリーズのライブパフォーマンスでは、あくまでもキャスト9人だけでの演出が基本でした。アイドルマスターシリーズや、一部の声優アーティストでは多用されるバックダンサーも、ほとんど(というか、記憶の中では一度もないんですけど、失念しているだけかもしれません)ありませんでした。例えば、Aqoursの2ndライブ『G線上のシンデレラ』でも、バックダンサーとして登場したのは歌唱する3年生以外のメンバーたち。特にAqoursのライブでは、これまでSaintSnow以外にステージに招いたのはうちっちーしかいないんじゃないかって気がするくらいでした。

 しかし、『声繋ごうよ』では、バックダンサーにかわいい子どもたちを連れて、エマが登場したのです。彼方におけるベッドの演出もそうですし、あるいはしずくの『オードリー』の演出もそうなのですが、ニジガクのライブでは、曲のイメージ、それから、曲がもつ背景のイメージを最大限に表現しようという意欲を感じます。今回の2ndライブは、曲目だけでなく演出にも注目が必要でしょう。

 

 

 『声繋ごうよ』はエマの表現の幅を大きく広げる一曲でしたが、『哀温ノ詩』もまた、再びイメージを大きく転換した曲です。発表時は、予想を超える内容に大きな話題を呼びました。

 そんな『哀温ノ詩』は、実は3rdアルバム収録曲の中でも、さらに言えばこれまでのニジガクの楽曲の中でも、異色の曲です。それは、この曲が「あなた」の手によるものでも、メンバーの手によるものでもなく、エマがある人から受け継いだ、いわば「カバー曲」だからです。

 スイスでみた、「安心」をもらったスクールアイドルの動画。「和風の衣装を着たアイドル」という手掛かりから、エマはせつ菜に協力を仰いで憧れのアイドルを探しますが、動画は既に削除されていました。

 和風アイドルを見つけてライブに行くも、残念ながらハズレ......。そんな日の帰りに、エマに着物を着てみることを提案した「あなた」は、写真館にエマを連れていきます。

 着物を着て喜ぶエマ。のちに写真館にお礼を伝えにいったエマは、なんとその「夏川写真館」の看板娘として、写真館のモデル、それからお客さんの案内の仕事をするようになります。

 普段から着物を着られる、エマにとっては天国のような職場。すると、偶然の奇跡がエマのもとに舞い込みます。

 なんと、写真館の娘、マイはスクールアイドル。しかも、マイの歌うその歌は、エマスイスで聴いて、スクールアイドルになることを決めた、その曲だったのです。

 しかし、エマが憶えているそのスクールアイドルは、綺麗で長い黒髪の女の子。ショートカットが印象的なマイとは違います。

 その理由は、この曲が代々受け継がれるものだから。マイは、先輩からこの曲を受け継いで、いま歌っているのです。

 フルネームが明らかにはなっていませんが、夏川写真館の跡継ぎということなら、きっと「夏川マイ」ちゃんなのでしょうか。マイはエマと同じ高校3年生。しかし、マイはなんと、「スクールアイドルはもう終わりにする」と、軽やかに宣言します。

 

 写真館を継ぐために、本格的に写真の勉強を始めたマイ。背景には、多忙の母が体調を崩したことがありました。マイは驚くほど大人に、こう話します。

マイ「確かに海外から来てくれる人は増えたけど、このブームがいつまで続くかわからない。このまま増え続けて安定してくれるのが一番だけど、どうなるかなんてわからないでしょ?」

「ひいじーちゃんの代から続いているお店だからさ、そういうブームに頼らなくても、あたしの腕一本で、これからもずーっと、100年も200年も残していきたい......」

「それがあたしの選んだ未来なんだ。だから、スクールアイドルは卒業」

              スクスタ エマキズナエピソード19話より

  驚くほどはっきりした決意。この発言だけで、マイという女の子がどんな子なのか、ひしひしと伝わってきます。惚れるわ。かっこいいもん。あっけらかんとして明るい性格。前向きでポジティブな雰囲気。その決意にはもちろん異議のはさみようがありませんが、この子がスクールアイドルを辞めてしまうことがあまりにも惜しい。そう感じるとても魅力的な女の子です。

 

  この曲から力をもらったのは、エマもマイも一緒でした。マイは、この曲を歌っていた先輩のもとへ駆け寄り、「スクールアイドルを辞めないで」と懇願します。結果的には、この熱意をもって、マイがこの曲を受け継いで歌うことになったのでした。

 マイは、先輩にスクールアイドルを続けてほしいという願いを「ワガママ」と表現しました。きっと、先輩もマイと同じように、大好きなスクールアイドルと天秤にかけてもどうしても譲れないような、そんな事情を抱えていたのかもしれません。

 

 そんなマイが、最後のライブをする......。そんな機会を、エマと「あなた」は、目撃させてもらえることになりました。

 マイの練習を手伝うエマと「あなた」。ハードな練習をこなすマイは、この曲を先輩から受け継いだ時のエピソードを話してくれます。

 「先輩に泣きついた」というマイ。そんなマイに、先輩はこう切り出します。

『じゃあ、あなたがこの歌を引き継いでみる?もちろん、私以上に、この歌を大切にしてくれる人じゃなければ、そんなことさせないけど』

              スクスタ エマキズナエピソード20話より 

  この歌を受け継ぐ、その道のりは大変なものだったと、マイは語ります。そんな努力を重ねて、マイはこの歌を自分のものにしたのです。

マイ「だから、すごく愛情を込めて歌ってるんだ。この歌を本当に大切にしていた先輩が、あたしに託してくれた歌だから。世界で一番この歌を愛してる!その気持ちを込めて歌ってるの」

              スクスタ エマキズナエピソード20話より 

  マイの想いは、相当なものでした。エマも、その思いを、マイの最後のライブの手伝いをする中で、しっかりと受け継いでいくのでした。

 

 遂に迎えた、マイのラストライブ。マイが纏うのは、爽やかな水色の着物。この衣装、実装してほしいほど好きだな。星の飾りに、星空を想わせるような美しい柄。それでいて、お祭り衣装のような華やかさ。衣装だけでも、マイの魅力があふれ出しています。披露するのは『哀温ノ詩』。マイにも、エマにも、「安心」を与えた、自分を救ってくれた。そんな大切な曲です。

 

 マイはラストライブの前に、エマをステージに呼びます。予定にないことに驚くエマ。しかし、エマは覚悟をもって、マイの大切なステージに上がります。

 マイには心残りがありました。それは、先輩から受け継いだこの『哀温ノ詩』が、マイをもって途切れてしまうこと。先輩が、もっともっとその前から受け継いできた大切な曲。それを、エマに受け継いでほしい。

 

 

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スクスタ エマキズナエピソード21話より

 このシーンは、私がスクスタのストーリーでもっとも好きなシーンの一つです。マイの想い、驚くエマの表情、二人の距離.......。つないできた想いが受け継がれる瞬間が、ここに切り取られています。

 

 

 『哀温ノ詩』は、和風でゆったりしたメロディーが特徴。よりそのままの歌唱力が求められる、そんな楽曲です。しかし、そこはさすがの指出さん。「声の魅力」だけで圧倒してくるような、そんな歌唱を見せています。

 これまで、『哀温ノ詩』を、エマというキャラクターになぞらえてどう考えるか。私も、「ニジガクみゅ~じっくウィーク!」で『哀温ノ詩』が発表されたときはそういう視点で解釈しましたし、いろいろな解釈をしている人がいたと思います。

 しかし、このエピソードを承けて、私はあえてこの曲をエマの背景になぞらえて解釈することはしません。

 なぜなら、この曲は、この曲を愛してきた人たちによって、ずっと「受け継がれてきた」曲だからです。いろいろな解釈があったのも、それは当たり前。なぜなら、この曲はそれだけの表現力を、包容力を、誰が歌ってもその人の魅力を引き出せるような、そんな普遍性を持った曲である、と思うからです。

 

「千歳越え 輝く愛を

 千里越え 思い こめるから」

                    『哀温ノ詩』歌詞より

 まさに「千歳」と言える長い期間をもって受け継がれてきたこの曲。この曲は、これまで歌ってきた人の想いが積もれば積もるほど輝く、そんな曲なのだと思います。

 そして「千里」。受け継がれてきた『哀温ノ詩』は、スイスのエマの下まで届きました。「千歳」を越えてきた『哀温ノ詩』は、「千里」も越えて、エマへと今、届いたのです。

 エマに課せられた使命は一つです。「千歳」を、「千里」を、さらに積み重ねること。スイスまで届いた『哀温ノ詩』。いまここで、グローバルにアピールできるエマのもとにそれが受け継がれたことで、さらにその範囲を広げようとしているのです。エマは故郷にも、この歌を広げたい。そう思うし、そのために努力を惜しまないでしょう。『哀温ノ詩』は、エマの力を借りて、さらに世界へと、その魅力を、さらにはスクールアイドルの魅力を、伝えていくのです。

 

 

 ところで、マイは自らの運命を見定めて、スクールアイドルをやめる決断をしました。

 「スクールアイドルは、限られた時間の中で輝く」。

 これは、ラブライブ!の中で一本筋をとおす、ひとつのフィロソフィーです。μ'sも、Aqoursも、彼女たちのライバルたち、きっと名前も出ないような数多のスクールアイドルたちも、限られた時間という、この残酷で、そして受け入れねばならない宿命と向き合い、彼女たちなりの結論を出してきました。

 マイも、『哀温ノ詩』を受け継いできたこれまでの先輩たちと同じように、その決断をしました。清々しいほどの決意。エマも、それを目の当たりにして、思うところがあったでしょう。

 そして、エマ自身も、これから「残された時間」と向き合うはずです。マイとエマは同じ3年生。決して、エマに残された時間は長くありません。

 しかし、きっとエマなら、その決断ができるはずです。マイから受け取った想いと、『哀温ノ詩』。それを次のスクールアイドルに受け継ぐまで、エマの努力は続きます。

 

 

 『哀温ノ詩』を、あえてエマに寄せて解釈しなかった理由は、もう一つあります。それは、キズナエピソードが、マイからエマが曲を受け取ったところで終わっているからです。

 他のメンバーでは、3rdアルバム収録曲を披露したところまでストーリーが描かれています。しかし、エマはそうではない。

 それは、まだ『哀温ノ詩』がエマのものにはなっていない。そういうことを意味しています。そう、まだエマ・ヴェルデによる『哀温ノ詩』は、この世のどこでも披露されていないのです。

 3rdライブでの、指出さんによる『哀温ノ詩』。これが、エマが初めて「自分のもの」として披露する『哀温ノ詩』です。もちろん、完全にそれが自分のものになるためには、マイが重ねたように、もっともっと努力が必要かもしれません。エマが『哀温ノ詩』を受け継いだ、それは、エマがひとりで『哀温ノ詩』を披露した、その時に完成します。そして、その瞬間は、2ndライブにおいて、私たちの眼前で、完成されるのです。

 

 

 最後に少し雑談を......。

 エマ役の指出毬亜さん。まっすぐ言いますが、私、指出さんが大好きです。声も、それからご尊顔も......。同郷(埼玉県)ですし、年齢も近い(一個下)ですし、なにかとシンパシーを感じています。『LoveLive!Days虹ヶ咲SPECIAL』の指出さんの写真には完全にやられました。これは恋かもしれません......。

 歌も、とっても上手いです。ほんとうに上手い。『哀温ノ詩』の歌唱を聴いた時、ほんとうに魅了されました。透き通った声。高い表現力。見事な裏声。

 ソロデビューしたら、絶対に応援する。そう誓っている声優さんの一人です。なんなんだこの告白は。誰得なんだ。でも、指出さんは素晴らしいんですよ。虹のキャストの中でも圧倒的な推しです。

 

 パンフレットの着物姿の指出さんも大変うるわしゅうござるわけですが、一つ気になる部分が。エマちゃんの衣装の頁がわかりやすいですが、艶やかな花柄の着物の下に重ねている紫の着物。これ、星の柄じゃないでしょうか?どうかな。指出さんの着ているほうはそうでもないんだけどねえ。白い丸が、白線で結ばれている。これは星座を表しているんじゃないかと邪推するのです。

 そうだとしたら、この衣装は、マイの衣装の意匠(ダジャレかな?)を、しっかりと「下に重ねて」、受け継いでいるという意味が込められているんじゃないか......。そう思ったのですが、どうでしょう。そうだったらいいな。オチがありませんが余談でした。

 

 

 ライブまであと4日。今日は『哀温ノ詩』についておはなししてきました。

 指出さんのパフォーマンスが、生の歌声が(配信ですが、それでも収録ではないので)、早く聴きたい。そういう想いと、きっとものすごい衝撃をうけるんだろうな、というちょっとしたドキドキ感と。そういう感情が入れ混じった『哀温ノ詩』は、2ndライブでも屈指に披露が楽しみな曲のひとつです。早く聴きたいような、いやもう少し時間が欲しいような......。こんな感情が入れ混じるのも、『哀温ノ詩』がもつ魅力故ですね!

 それではまた、明日お会いしましょう。

 ライブまで一日一日、頑張っていきましょうね!

 こばと