Zefiro di Verde TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』視聴レポート #5 「今しかできないことを」

TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』視聴レポート #5 「今しかできないことを」

 

Zefiro di Verde

もくじ

 

※当記事は、TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』のストーリーに関するネタバレ、あるいは、アプリ『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバルオールスターズ』のストーリーに関するネタバレを含みます。アニメ未視聴の方、アプリ未プレイの方は、予めご了承ください。

 

↓第4話の記事はこちらから

 

tsuruhime-loveruby.hateblo.jp

 

Celeste

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どこまでも広がっている 、スカイブルーの空

眩しすぎて見えなかった

アイドルになったわたしに、どんなことができるのか。

  澄み渡った空を越えて、彼女は日本へとやってきた。

 故郷のスイスとは、景色も、言葉も、文化も、生活も。全てが違うこの国へやって来たのは、スクールアイドルになりたかったから。

 あの日見た憧れのスクールアイドルは、エマの心をぽかぽかさせた。そんなアイドルを目指して。スカイブルーの空の下、彼女の夢が始まる。

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トランクいっぱいに夢を詰め込んで。

 

Del'incontro

 出会いは、いつだって偶然だ。

 夢で一杯のトランクにも、不安はたくさん潜んでいる。

 道に迷ったエマが出会ったのは、エマにとってこの国で一番最初の登場人物。その女の子は、どこか気高く、ちょっと気難しく、爽やかな空気を纏って、エマの前に現れた。

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想いは水。高いところから低いところへと流れていって、心を満たす。

果林「どうかした?」

 言葉は人を癒す魔法である。この果林の言葉一つが、どれほどエマの心を救ったか。

 一人で知らない国に行くことは、とても勇気のいることだ。それでも、エマはスクールアイドルへの想いを勇気に変えて、ここ日本へやって来た。

 どれだけ勇気を持っていても、不安は消えない。まして道に迷ったりしたら、心細くてたまらない。そんなエマの不安を解いて、エマに「ぽかぽか」とした安心をくれたのは、果林だった。

 

 Amica? Famiglia?

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友達なら、冷たさのなかのぬくもりだってわかる。

 友達もまた、偶然のいたずらである。

 みなさんも、思い返してみて欲しい。友達って、別に選んだわけじゃない。家が近かったから。近くの席になったから。同じ部活だったから。趣味が一緒だったから。「たまたま」かもしれない。それでも、人生のなかですれ違って、一瞬でも惹かれあったのなら、それは運命だ。

 果林はエマにとって、日本で一番最初にできた友達である。食堂で会った二人は、次第にいつだってここで会うようになる。少しづつ、共有する場所は増えていく。同じ学生寮に住むエマと果林。エマは、果林の部屋にも訪れるようになった。分かち合うものが増えるほど、二人の仲は深まっていく。

 場所を分かち合えば、時間も分かち合う。エマは、スクールアイドル同好会の活動に果林を誘うようになる。あくまでも「部外者」ながら、彼方にスクールアイドル同好会に入部するつもりだと思われるほどに、果林はスクールアイドル同好会の活動に顔を出すようになる。

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「悲しむ顔が見たくない」は、彼女のとって最大級の気持ち。

 果林も、エマにはなみなみならぬ気持ちがあったようだ。同好会廃部に沈んだ顔をみせるエマに、果林はこう言った。

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「そんな顔しないで」

果林「そんな顔しないで。力になれることあるかしら。」 

  エマに笑顔をくれるのは、いつも果林だった。読者モデルに忙しい果林だが、エマの笑顔のためなら労力も時間も割いてくれた。果林の力もあって、エマの笑顔を消してしまっていた同好会の問題も見事解決した。

 それでは、「心」はどうだろうか。彼女たちは、「心」も分かち合えていたのだろうか......?

 

 日本での生活に慣れてきたエマには、大切な居場所もできた。そう、ようやく軌道に乗ってきた、スクールアイドル同好会である。

 愛・璃奈を迎えて9人となった同好会。

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姉妹のように仲がよくて

 それはまるで、どこか懐かしく、

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お互いを、信頼しあっていて

 そして、8人きょうだいの長女であるエマにはなんだかしっくりくる、

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8人と、そして......ネーヴェちゃん!?

 そう、まるで家族のようであった。

 だからこそ、エマはこう言うのだ。

歩夢「エマさん、おうちを離れてホームシックとかないんですか?」

エマ「うん、同好会のみんなといると、スイスの妹たちといるみたいなんだもん。いっつもわいわい賑やかで」

  スイスから遥か離れた日本でも、エマは家族のような大切な存在と場所を得ることができた。もっとも、スイスにいるエマの家族はエマがちゃんとやっているのか心配なようだが、それでも、エマはしっかりと、日本で自分の夢をつかみはじめていた。

遠く離れたこの街 きっとそれは変わらない

大地を吹き抜ける風 生きる人も

  場所は変わっても、空はどこかで繋がっているし、きっと大事なことは変わらない。希望でいっぱいのエマの新生活は、新しい「家族」に彩られながら、少しづつ加速していくのだった。

 

Sogni belli

 エマの夢、それは「人の心をぽかぽかさせるスクールアイドルになること」。

 虹色のスクールアイドルは、それぞれの夢を目指して、スクールアイドル活動をしている。目標のライブを目指して、まずは知名度を上げるためにPVの撮影。それぞれの魅力とこだわりを形にして、虹色のPVを作っていく。

侑「エマさん、家族にみせるのにもいいんじゃない?どんなPVにしよっか」

エマ「え!うーん。どんな、かあ......」 

 エマに出せる色は、どんな色なのだろうか。エマには、どんなことがアピールできるだろうか。エマの理想のスクールアイドル探しが始まる。

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譲れないこだわりは、ある。

エマ「私ね、人の心をぽかぽかさせちゃうようなアイドルになりたいと思ってて」

「でも、それがどんなアイドルなのか、よくわからなくって」

  「ぽかぽか」を届けるスクールアイドル。目標は決まっていても、それを具体的にどうやって表現するのかは難しい。みんながそれぞれ違う色を持つニジガクのメンバーは、「ぽかぽか」のイメージもそれぞれ全く違うようだ。答えは、エマが自分で見つけるしかない。

しずく「演劇だったら、衣装を着るとイメージ湧いたりするんですけどね」

エマ「それなら......」 

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こころに浮かんだのは、あの笑顔。

 エマはここで、衣装を着るというアイデアがしっくりきた、というわけでもなさそうだ。「それなら」という言葉は何を意味しているのか。「それなら」以下はどう続くのか。きっとこうではないか。

 

 「それなら、果林ちゃんに聞いてみたらいいかも!」

 

 恋人とは何かと理由をつけて会いたいと言うが、それは恋人だけに限るまい。友達だって、何かと理由をつけて会いたいものだ。必要な時にしか会わないんじゃあ、あまりに寂しすぎる。

 エマは、これまでも何かといっては果林を同好会に巻き込んで、一緒に過ごしてきた。もちろん、エマはできれば果林と一緒にスクールアイドルをしたいと思っているだろうが、こうやって誘っているのは必ずしもそれを計算してのことではない。エマは果林と少しでも一緒にいたい、それだけなのだ。

 メンバーがそれぞれの「ぽかぽか」を挙げる中で、一番最初にエマの頭の中に浮かんだ人。エマは決して自覚していないと思うが、答えはもう出ているのだ。答えはエマの中にある。エマにとって心をポカポカさせてくれるものは、あの日にエマの心をポカポカさせてくれた、エマにとって最初の友だち。そう、果林その人なのだ。

 

Il cuore

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ミナリンスキーの強力ライバル登場!?

 果林のつてによって、エマたちは服飾同好会に協力してもらえることになった。

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和も、洋も。まさに二刀流。

 どんな服も似合うエマ。喜ぶ同好会メンバーをみて、エマは「心をポカポカにする」が、少しわかり始めた気がした。

 しかし、すぐにエマは違和感に気づく。

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「騒がしいのは苦手」......なの?

 写真撮影を拒み、出ていってしまう果林。いろいろな衣装でメンバーの心をポカポカにすることはできても、果林のこころをぽかぽかにすることは、できなかったような気がしたのだ。

 

 違和感が確証に変わるのは、その日の夜。

 いつも通り、果林の部屋を訪れたエマ。そこで、エマはスクールアイドルの雑誌を見つける。かねてより、果林とスクールアイドル活動をしたいと思っていたエマ。誘って一緒に活動をして、エマは、もしかしたら、果林がスクールアイドルに興味があるのかもしれないという推測をもっていた。スクールアイドルの雑誌を見たエマは、ついに思い切って踏み込んでみることにする。このあたりのバランス感覚は、告白に近いものがあるかもしれない。エマは、思い切って勝負をかけたのだ。

 しかし、それは思わぬ衝突をもたらす。

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想いが届かないことも、ある。

 エマ「もしかして興味ある?だったら入ろう!同好会。すっごく楽しいよ!みんな本気でスクールアイドルやってて......」

果林「ないわよ、興味なんて全然。その雑誌は、エマのためになるかと思っただけ」

エマ「でも......」

果林「私、読者モデルの仕事もあるし、スクールアイドルなんてやってる暇ないの。知ってるでしょ?」

エマ「そっか......いつも手伝ってくれてたから、もしかしたら一緒にできるのかもって」

果林「頑張ってるエマを応援したいと思っただけよ。そんな風に思われるのなら、もうやめておくわ」

エマ「果林ちゃん.......」

果林「それ、持って行っていいわよ。衣装の参考にでもして。それと、もう誘わないで」

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どっちが、本当の果林ちゃんなの......?

 エマがスクールアイドル活動をすることは、果林の心をぽかぽかにするどころか、果林を傷つけてしまっていたのか......?こころにもやもやを残したまま、PVの撮影は始まった。エマの「人のこころをポカポカさせるアイドル」がどんなものなのかも、答えは出ていなかった。衣装をひとつに絞れなかったのは、それを象徴している。エマの頭のなかは、果林のことでいっぱいだった。

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侑と彼方は、エマの異変を見逃さなかった。

 

Ridere!

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それは、扉を開く手紙。

 一枚の紙が、エマの背中を押した。

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 確かに、果林はいつだってクールだった。読者モデルのイメージ通り、ちょっと素っ気なくクールでストイックで、突然のファンにもスマートに応対して。みんなが果林に持つイメージがこちらなのは、間違いなかった。

 しかし、エマは果林の違う一面にも少しずつ気づいていった。おせっかいに親切にしてくれるところ。冗談をいったりもするところ。親友のためなら一肌脱ぐ熱い気持ち。部屋は意外に片付いていないし、だらしないところだってある。

 まだ、「心」は分かちあえていなかった。果林の気持ちの奥まで、エマは入っていけなかった。拒絶されてしまった。それでも、エマは「本当の果林」を見たい、受け入れたい、そう思っていた。

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今、一番興味があることは......スクールアイドル。

 エマは、間違っていなかった。果林の下へ駆け出す。学園から学生寮までの道。もう、迷わない。

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もう、迷わない。

 アンケート用紙を探す果林。そこに、エマがやってくる。

エマ「来て!」 

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 運命のドアは、力いっぱい開かれた。

果林「ちょっと、一体なんなの?」

エマ「今日、私に付き合って。お願い」 

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 デートの舞台は、もちろんお台場。

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二人の冒険が、始まる。

 見たいのは、その笑顔。

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いっぱい食べる君の笑顔が、好き

Q3:休みにやってみたいことは?

「友だちと思い切り遊ぶ

お台場をブラブラ食べ歩いたり」

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果林はやっぱりあんまり食べなくて、いっつもたくさん食べているのはエマだけど

 確かめたいのは、本当の気持ち。

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エマといる果林は、いつもより輝いてみえて

 「本当の果林ちゃん」はどっち......?

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やっぱり、そうだよね

 次第に、自然な笑顔は増えていって。

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エマは、そんな果林を見ていて

 今、エマのなかでそれは確証に変わった。

 

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それは、ふたたびの告白

果林「こんなに遊んだの、久しぶり」

エマ「果林ちゃん。これ、果林ちゃんのでしょ?もらった雑誌に挟まってたの。それって、本当の気持ち?一番興味があるのがスクールアイドルって」 

  エマには、覚悟が決まっていた。覚悟を決めた人の放つ言葉は、強い。今度は、今度こそ、エマの言葉は、まっすぐ果林へと届いていく。

 そして、これはエマにとっても大切なことだった。

 エマ「前に言ったの、覚えてる?私、見てくれた人の心をポカポカにするアイドルになりたいって。でも、私は一番近くにいる果林ちゃんの心も温められてあげられてなかった。そんな私が、誰かの心を変えるなんて、無理なのかもしれないけど」

「果林ちゃんの笑顔、久しぶりに見たよ。私、もっと果林ちゃんに笑っててほしい!もっともっと、果林ちゃんのこと知りたい!」

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エマの言葉は、果林の心の奥の奥まで届いた

  果林は、ついに自分の、本当の気持ちをエマに話した。はっとしたエマの表情は、エマが望んでもこれまで得られなかったことの一つが今、果たされたことを示す。それでも、果林はまだ自分の気持ちから逃げていた。果林は「悪いのは私」とエマに謝る。果林は、まだ自分の気持ちから逃げていた。

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まだ素直になれない果林は、まっすぐなエマに背を向ける

 果林には、分かっていないことがある。いや、実は分かっているのかもしれない。エマが欲しいのは、一つは果林の心をポカポカにして、本当の気持ちを知ること。そしてもうひとつは、果林自身なのである。スクールアイドルとして、果林と一緒にスクールアイドルをする。それが、果林が真っ直ぐ自分の気持ちと向き合うことであり、エマの望むことなのだ。スクールアイドルから逃げているようでは、エマの夢も、果林の笑顔も、手に入らない。果林の心も、エマの心も、「ポカポカ」にはならないのだ。

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エマは、果林を包み込む

エマ「どんな果林ちゃんでも、笑顔でいられればそれが一番だよ。だから、きっと大丈夫」

「もっと果林ちゃんの気持ち、聞かせて!私に」 

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エマが果林の心をポカポカにする、その瞬間

 

La Bella Patria

きっとこの場所で

夢が待ってる

澄み渡る空を越えて

伝えたいの もっと

 

まだ知らない 運命のドア

開いたなら(ドキドキだね)

広がる世界

ちょっと怖い でも

トランクいっぱいに

詰め込んだ思い出

ぎゅっと抱きしめて

 

高鳴ってく(胸の中)

自分の気持ちに(もう)

ウソをつくのって

すっごくむずかしいね(そうでしょ?)

心に耳をすませて

 

きっとこの場所で

夢が目覚めてくから

光り出す(瞬間へ)

この手を伸ばすの今

叶えていくんだ 

これから何が起こっても

ゆずれない(この想い)

勇気にかえていこうよ

La Bella Patria

この歌声 届くように 

 『La Bella Patria』は、「美しい故郷」という意味。果林へのメッセージだが、この曲は同時にエマの想いを歌ったものに見える。エマは、どうして果林にこの曲を、自分の故郷・スイスのことを歌い、届けたのか。

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エマの、とびきりのやさしさを届けるために

目を閉じれば思い出す 故郷の景色

それだけで優しくなれる あなたにも 誰にも 

 それは、きっとエマが果林に、とびきり優しくなりたかったから。やさしく果林を包み込んで、「ぽかぽか」を届けたかったから。

  これが、エマにとっていちばんの方法。たった一つの、「ぽかぽか」を届けるやりかた。

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 どこまでも広がっている、エヴァーグリーンと空。澄み渡っている、スカイブルーの空の下。それは、エマが誰かに、みんなに、果林に、いちばん優しくなれる場所。

 エマは、そんな大切な場所から、果林に歌を届けた。果林を優しく包み込んだ。果林をせいいっぱいの力で「ぽかぽか」させた。

 

 始まりは、あの日のスクールアイドル。「ぽかぽか」をくれたその子をみて、エマの中には譲れない思いが芽生えた。

 思いを、勇気に変えて。エマは、一人で日本へとやって来た。これは、すごいことだ。並大抵の勇気ではない。

 道に迷ったとき、また「ぽかぽか」をもらった。優しくて、友達思いで、でも不器用な女の子。その子はいつだって、エマを助けてくれた。エマの夢は、そんな暖かい風を受けて、順調に大海原へと漕ぎ出した。

 

 今度は、エマが「ぽかぽか」を返す番。先に「ぽかぽか」をもらって、思いを勇気に変えたのはエマ。そんな勇気で、今度は果林の背中を押してあげたい。凍らせて仕舞い込んだ果林の心を、とびきり暖かく抱きしめて溶かしてあげたい。果林の思いが勇気にかわったなら、歩調を合わせて一緒に歩いていきたい。

 そのために、エマはめいっぱいのやさしさを、心を込めて歌う。自分の故郷の景色を、「ぽかぽか」をもらった瞬間を、手にした勇気を、想いながら。

 果林「スクールアイドル、できるかしら、私に」

エマ「やりたいと思ったときから、きっともう始まってるんだと思う」

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エマの夢

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果林の夢

二人の夢は、もう始まっているのだ

 

今しかできないことを

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「当然よ?私が撮ったんだもの」

 果林が撮ったエマのPVは、エマが目指すスクールアイドルの答えになった。スイスからエマを心配する家族にも、エマの「ぽかぽか」は届いた。再生数もうなぎのぼりのようだ。「みんなをぽかぽかさせちゃうようなスクールアイドルになりたい」というエマの夢は、また一歩前進した。

 果林も、ついにスクールアイドル同好会の一員になった。新たなライバルに先制攻撃をしかけるかすみに、果林はこう豪語する。

果林「 モデルでもスクールアイドルでも、トップを取ってみせるわ」

  ところで、「今しかできないこと」って、何だろう。その答えは、5話のストーリーのなかではなかなか見つけることができない。

 しかし、ラブライブ!において今しかできないことと言えば、答えは決まっている、そう、「スクールアイドル」である。

 果林は読者モデルに忙しいが、読者モデルは部活ではない。高校を卒業して大学に入っても続けていくことだし、果林は相当人気モデルのようだ。果林はモデルを職業として、人生の長きにわたってやっていくのかもしれない。

 しかし、スクールアイドルは違う。スクールアイドルは永遠ではない。高校を卒業してしまったら、彼女たちは「アイドル」にはなれるかもしれないが、それはもう「スクールアイドル」ではない。永遠でないからこそ、スクールアイドルは強く強く輝くのだ。

 そして、時間が限られているのはエマもまた同じである。スイスからはるばるやってきたエマだが、留学というのはそもそも期間限定のものである。同じ大学へ進めればそれが一番だろうが、決してエマの進路が日本にあるとは限らない。高校を卒業したら、彼女はスイスに戻ってしまうかもしれないのだ。

 だから、「今しかできないこと」は、スクールアイドルであり、そしてエマと果林が一緒に過ごす時間でもある。だからこそ、エマは果林に、自分に素直になってスクールアイドルをしてほしいと願った。エマも果林も、このかけがえのない時間がけっして永遠には続かないことを知っている。どんな気持ちが、どんな事情があったとしても、過ぎてしまった時間は取り戻せないのだ。

別々の道をゆく その日がくるとしても

かけがえのない今日は 二度とこない! 

  彼女たちは、かけがえのない今日を生きている。夢に向かって駆けるその時間は、甘くて、ときにほろ苦くて、そして愛おしい。限られた時間。だからこそ、彼女たちは全力でその道を駆け抜けられる。エマの勇気も、思い切ってぶつけた思いも、果林の悩みも、夢に向かって努力する時間も。「今しかできないこと」だからこそ、輝くのだ。

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今を生きる彼女たちは、輝いている

 

出典一覧

※引用したアニメ画像は、特に表記が無い場合、すべてTVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(©2020 プロジェクトラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会)第1,2,5話より引用。

歌詞は『La Bella Patria』作詞:Ayaka Miyake、『Evergreen』作詞:Ryota Saito,近谷直之