「みんな」の夢を、叶えるために TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』視聴レポート #11 「みんなの夢、私の夢」

TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』視聴レポート #11 「みんなの夢、私の夢」

 

「みんな」の夢を、叶えるために

 

 

※当記事は、TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』のストーリーに関するネタバレ、あるいは、アプリ『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバルオールスターズ』のストーリーに関するネタバレを含みます。アニメ未視聴の方、アプリ未プレイの方は、予めご了承ください。

 

↓第10話の記事はこちら

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 こんにちは、こばとんです。

 11話です。波乱が予想された11話ですが、やはり波乱なお話になりました。

 ご覧になった方はお分かりだと思いますが、11話は衝撃的なシーンをもって唐突に終わり、その解決は全て12話に投げられています。今晩が待ちきれずに、眠れぬ夜を過ごした人もさぞ多いことでしょう。11話のストーリーは11話だけで完結していません。特に、歩夢ちゃんと侑ちゃんの衝突に関しては、意図的なかたちで解決が次週に持ち越されているのですから、明らかになった事実はまだ半分、あるいはそれ以下ということになるでしょう。アニガサキで、ここまで焦らされるのは初めてですが、それもまた一興。やきもきした気持ちを精いっぱい楽しんでいます。

 さて、問題となるのはこの「視聴レポート」です。これまで毎話ごとに、アニガサキの物語を読んで抱いた感想、疑問、自分の解釈など好き勝手に書いてきた本連載記事ですが、11話に至って大きなピンチに瀕しています。なぜなら、11話では、メインの物語である侑ちゃんと歩夢ちゃんの物語に関して、まだ全てが明らかになったわけではないからです。このブログの趣旨は物語の先を読んで当てることではありませんので、そういった内容を書くことはありません。それも一つの楽しみなんだけどね。Twitterでいっぱいつぶやきます。それに、素晴らしかった11話の演出やその意味については、もっと語るべき人がたくさん語ってくれています(面白いからいろいろ調べてみてね)。と、いうことで、当記事では歩夢ちゃんと侑ちゃんについてのお話はしません。歩夢ちゃんのことは12話と、それから12話を観終えた後の自分に託して、当記事ではまったく違う目線で、アニガサキの「大好き」をお話していこうと思います。いやあ、「違うよ」とか、侑ちゃんの夢とか、話したいことはたくさんあるけど.......未練は断ち切りましょう。それでは、お話を始めていきます。

 

初めての「みんなで叶える物語」

東京・お台場にある、自由な校風と専攻の多様さで人気の高校「虹ヶ咲学園」。
スクールアイドルの魅力にときめいた普通科2年の高咲侑は、
幼馴染の上原歩夢とともに「スクールアイドル同好会」の門を叩く。

時にライバルとして、時に仲間として、
それぞれの想いを胸に日々活動するメンバーたち。

「夢を追いかけている人を応援できたら……。」

9人と1人の少女たちが紡ぐ、初めての「みんなで叶える物語(スクールアイドルプロジェクト)」。

届け!ときめき――。

いままた夢を、追いかけていこう!

TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』HP「ストーリー」より(ストーリー | TVアニメ | ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会)

 「みんなで叶える物語」。それは、ラブライブ!シリーズで一貫して受け継いできた、ラブライブ!シリーズで一番大事なコンセプトです。これまでラブライブ!は、アニメのおもに外側において、投票企画やグループ名の公募、みんなで作る曲など、私たちを巻き込んで物語を紡いできました。まさに「みんなで叶える物語」だったわけです。μ'sのFinal Love Live!はまさに「みんなで叶える物語」の集大成ともいえる空間で、長い苦労と快進撃の末にたどり着いた先の東京ドームで、みんなで声を合わせて叫ぶ「今が最高!」は、まさに「みんなで叶える物語」を全身で体感する瞬間でした。

 μ'sの夢はAqoursに受け継がれて、そしてやって来た3つ目の夢。しかし、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会は、「みんなで叶える物語」が「初めての」ものだと主張するのです。これは、どういうことなのでしょうか。現実世界の時系列から言えば、虹ヶ咲の物語はどう考えても「初めての」ものではありません。それとも、彼女たちにとって「初めての」ものだというのでしょうか。うーん。しっくりこないですよね。μ'sやAqoursのみんなにとっても、スクールアイドルプロジェクトという物語は「初めての」ものだったはずです。改めてここで「初めての」を強調する理由には、ならない気がします。アニガサキは前2作に対して前後関係のわからないお話ですから、もしかしたらラブライブ!の世界において時系列で先頭にくるかもしれません。しかし、いまのところ検証しようのないお話です。

 ......えーっと、長々話してきましたが、今のところなにかこの「初めての」に対して満足できる見通しがあるわけではありません。でも、この違和感を大事にしたいんですよね。なぜなら、アニガサキのお話は、「みんなで叶える物語」として、前の2作とは大きく異なる一面を持っていると思うからです。

 

「みんな」の夢

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ぎゅうぎゅう

 唐突ですが、アニガサキって登場人物が多くないですか?これまでの同好会メンバー以外の登場人物をまとめてみましょう。

  ・伝統のモブ3人衆:色葉、浅希、今日子

  ・生徒会関連:生徒会副会長、生徒会書記

  ・服飾同好会のみなさん

  ・演劇部部長

  ・東雲学園のみなさん:遥、かさね、クリスティー

  ・藤黄学園のみなさん:美咲、姫乃

  ・新聞部のみなさん

 すべてを網羅したわけではありませんが、声があてられていてある程度行動を起こした人物をざっと書き出してみれば、これだけの人物がアニガサキに登場しています。そして何より、彼女たちがただの「モブキャラ」では無い点が特筆されます。アニガサキの10人以外の登場人物は、驚くほど自由に物語の中を動き回っています。時には、彼女たちが物語の重要な登場人物として、ストーリーを支配することさえあり得るのです。7話における遥ちゃんが一番分かりやすい例でしょうか。あるいは、9話において姫乃ちゃんが重要人物であることは、9話の記事で既に書いた通りです。

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 さらに言えば、アニガサキは「9人とひとり」の物語です。10人の物語ではありません。スクールアイドルではない、高咲侑という異質な人間があたりまえのように同好会に参加しています。そして彼女は明らかに、「外側」の人間です。9話において、ステージに向かうメンバーを横目に、彼女は一目散に観客席へと駆け出していきました。

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彼女の居場所は、ステージではなく観客席にある。

 アイドルではない侑ちゃん。たとえ彼女が「マネージャー」だったとしても、アイドルの戦場であるステージとステージ裏を離れるという選択はあり得ないでしょう。高校野球で例えたら、彼女はベンチにいるマネージャーではなく、観客席にいる観客のひとりです。10話においてせつ菜ちゃんが「私たちには見えない景色」と侑のダイバーフェスの感想を評していますが、それは決定的に視点が違うことに起因しています。彼女は完全にプレイヤーサイドの人間ではありません。彼女はあくまでも、今のところは、「いち観客」なのです。

 高咲侑というファンがど真ん中に置かれている物語、それがアニガサキです。そう考えると、アニガサキは「みんなで叶える物語」からかけ離れています。彼女たちがステージで叶える夢を、侑ちゃんが一緒に叶えることは出来ません。プレイヤーのフィールド(アイドルの場合は一般的にはステージ)と、オーディエンスのいる観客席の間には、厳然とした区別があります。たとえ甲子園で負けても、スタンドのファンに涙を流す権利はあっても、甲子園の砂を持って帰る権利はない、そういうことです。

 それでも、アニガサキは確かに「みんなで叶える物語」なのです。どういうことなのか。それは、「みんな」が指す範囲が、前の二作とは決定的に違うのだと思います。「みんな」とは、9人のことではありません。侑ちゃんも、さっき列挙した9人の周りにいる多くの人たちも含まれます。μ'sやAqoursも確かに「みんな」の夢を叶えましたが、それは9人の夢にそれを応援するみんなの夢を託して叶える夢でした。だからこそ、物語では9人の夢こそが描かれたのです。作品の中では学校のみんなが、そして作品の外ではファンである私たちが、彼女たちに夢を託して、応援して、一緒に叶えていく。彼女たちの夢の延長線上に、私たちの夢がある。それが、これまでのラブライブ!でした。しかし、アニガサキはそうではない。プレイヤーとファン、両方含めて「みんな」。作品の中で、9人の、侑ちゃんの、作品に出てくるみんなの、そして作品を見ている私たちの、そのすべての夢を叶えてしまおう。初めての「みんなで叶える物語」は、これまでとはまた別の、スクールアイドルと、そしてファンの、みんなが叶える物語なんじゃないかと、ふと考えてみるのでした。

 

ファンが叶える物語

 侑ちゃんと歩夢ちゃんの衝突が描かれる一方で、11話では侑ちゃんの提唱する新しいライブ「スクールアイドルフェスティバル」の計画が進行していきます。

 生徒会に一度ははねかえされてしまうスクールアイドルフェスティバルの申請書。まだまだ曖昧な彼女たちの夢のカタチを、クッキーを型抜きするように外側から提案してくれるのは、彼女たち自身ではなく「ファン」のみんなでした。

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見るだけでほんわかするよね、この3人。

 夏休みだからか空っぽの「かすみんボックス」。ライブの内容の周知が足りないということを教えてくれたのは、色葉ちゃん・浅希ちゃん・今日子ちゃんの3人。焼き菓子同好会に所属する3人は、ニジガクのみんなをイメージしたクッキーを差し入れてくれました。

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 色葉ちゃんは、愛ちゃんのファン。

 

 スクールアイドルフェスティバルを開催するにあたって、共同開催する他の学校のスクールアイドルは不可欠。侑ちゃんたちは、人脈のある東雲学園と藤黄学園のスクールアイドルを訪ねます。

 彼方ちゃんから既にスクールアイドルフェスティバルの話を聞いていた遥ちゃんは、スクールアイドルフェスティバルに乗り気です。

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 遥ちゃんは、彼方ちゃんのライバルで、そして一番近くにいるファン。

 

「果林さんと同じステージに立てるなんて.......!」という若干不純な動機は置いておくとして、藤黄学園もスクールアイドルフェスティバルに前向きです。

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 姫乃ちゃんは、果林ちゃんのファン。

 

 ダイバーフェスはその最も大きいものですが、一番最初の歩夢ちゃんとかすみちゃんのPVから、いろんな活動を積み重ねてきたスクールアイドル同好会とそのメンバーは、その過程の中でたくさんのファンを手に入れてきたのです。

 それは、お世話になったニジガクの他の同好会も一緒です。彼女たちの持つ魅力は、たしかに学園の内外の人たちを巻き込みつつあるのです。

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 服飾同好会のみんなは、エマちゃんのファン。

 虹ヶ咲学園の中にもどんどんニジガクのメンバーひとりひとりのファンが増えていって。

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 そして、次第にその輪はどんどん大きくなって、彼女たちと直接関係のない人たちも、たくさんの人がニジガクのみんなを応援するようになります。

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彼女たちのまわりは、スクールアイドルが大好きな「ファン」であふれています。

 

 

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かすみんボックスのかわいさは維持して、「かすみん」一人を押し出す要素が上手くオミットされてるのすごい。

 そんなみんなが届けた声は、どっしりとかすみんボックスの中に集まりました。

 そして、その気持ちは、生徒会の役員にまで届き、ついにスクールアイドルフェスティバルは承認されるのです。

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 生徒会副会長は、せつ菜ちゃんのファン。

 

かすみ「だってかすみんたちの夢だけ叶えるより、応援してくれるみんなのやりたいことも叶った方が、絶対楽しいじゃないですか!」

 「応援してくれるみんな」の夢。彼女たちは、それを叶えることを目標にします。「みんな」は、ニジガクのスクールアイドル9人と、それから侑ちゃんひとりと、それから「応援してくれるみんな」も含めて「みんな」なのです。ライブだけじゃない、スクールアイドル好きみんなが楽しめる、スクールアイドルのお祭り。それがスクールアイドルフェスフェスティバルです。そして、スクールアイドルだけじゃない、スクールアイドル好き「みんな」の夢を叶えるストーリー、それがアニガサキの物語なのです。

 

 私たちも、アニガサキの物語の中で同好会のみんなに魅了されてきたファンたちと同じように、アニガサキを画面越しに見ながら、同時に彼女たちに魅了されて、ファンになってきたのではないでしょうか。思い出してみて下さい。放映の時間だけに限らず、配信されるアニガサキを繰り返し繰り返し見ていた毎日。『DIVE!』や、『VIVID WORLD』のPVを、何度も何度も再生した私たち。『ツナガルコネクト』の璃奈ちゃんのステージを目撃して、璃奈ちゃんに全部もっていかれてしまったのも、作品中のみんなと同じです。しずくちゃんの舞台だって、私たちは美咲ちゃんや姫乃ちゃんと同時に目撃しているのです。そして、作品中ではしきりに、彼女たちの評判が、動画などSNSで拡散されていく様子が描かれます。私たちも、アニガサキを見ながらにして、「ヒトリダケナンテエラベナイヨー!!!」と毎週叫びながら、アニガサキと同じペースで物語を受け取り、体感して、彼女たちのファンになって、そして「みんな」の一員になっていたのです。

 アニメをみて、たくさん感想をつぶやいて、絵を描いて、議論して、そしてこうやってブログを書いて。そうやって「大好き」を表現してきたのも、作品中の「ファン」たちと一緒です。だからこそきっと、スクールアイドルフェスティバルには、私たちも巻き込まれていくのかもしれません。あるいは、アニガサキ自体がスクールアイドルアイドルフェスティバルということもできるでしょうか。

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 私たちは、ニジガクのファン。

 初めての、「みんなで叶える物語」。その物語と一緒に私たちも駆け抜けて、「みんな」の夢を叶えられたらいいな、そう思うのです。

 

 

 ところで......

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 今日子ちゃんは、歩夢ちゃんのファン。

 今は侑ちゃんしか見えていない歩夢ちゃんにも、ファンはいます。歩夢ちゃんの進む未来に、きれいな虹がかかっていたらいいな。

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歩夢ちゃんの笑顔がまた、見れますように......!

※引用したアニメ画像は、特に表記が無い場合、すべてTVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(©2020 プロジェクトラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会)第6,9,11話より引用。