「非公認教習所」で取る、運転免許取得奮闘記・中編

前回のあらすじ

 とある理由から、「未公認教習所」なるところで免許を取るようになった私。河川敷の狭い狭いコースでMT車に苦戦していた私ですが、どうにか「みきわめ」を手にし、仮免試験を受けに鴻巣の免許センターに乗り込むことになったのでした。

  前回記事はコチラ↓

 

tsuruhime-loveruby.hateblo.jp

 

 鴻巣の「洗礼」

 ここまでは、「ちょっと変わった場所で免許を取る人」のブログ、だと思われても仕方がない面もあったと思います。そうだよね。ただ教習コースの環境が悪いのと、ちょっと変わった仕組みになっているだけで。

 しかし、非公認教習所には最大の難関が存在します。それが「免許センターでの実技試験」。わたしは埼玉県在住なので、免許センターは鴻巣まで行く必要があります。

 鴻巣、遠いよね。まあこれは他の都道府県でも同じような気持ちなんだろうな。わたしは電車利用ではなく母に車で送ってもらっていたので、2時間以上かかっていました。

 さて、明日はついに仮免試験。ですが、学科の勉強が全く進んでおりません!「計画的に勉強して」って言われるけど、それ一番苦手なんだよなあ。ビデオを一番最初に見たっきりだから、全然覚えてないし。ちなみにちゃんとそこはフォローがあって、教室で模試を受けて、合格点を一定回数出さないと仮免学科試験に行かせてもらえない仕組みでした。フォローになってるかはわからんけど。

 皆さんであれば、当日は学科を受け、受かれば晴れて仮免許交付となるわけですから、必死になって学科の知識を詰め込むことでしょう。徹夜したっていいしね。でも、わたしたちはそうはいきません。なぜなら、学科を受けたらそのまま午後、実技を受ける必要があるからです。できれば、万全の体調で、後顧の憂いなく実技試験に臨みたいものです。数問落としたら不合格の仮免学科は不安でいっぱいですが、とにかく、もう寝ることにしましょう。

 

 長く広がる鴻巣の窓口ですが、学科のみの人とは窓口が違います。ほんの僅かしか人のいない窓口に並んで、所々の手続きを済ませ、どうにか仮免学科を受けることができました。これって超緊張しない?大体、満点近い完成度が求められる難易度の低いテストってプレッシャーが大きいんだよな。なんか落ちたら恥ずかしいし。

 ぎゃあぎゃあ言いながらどうにか合格。午後の実技に向かいます。あっ、そういえば、わたしたちは受験番号も違うんだよね。今日は5人くらいしか受ける人がいなさそう。そしてほとんどの人が外国人。こんな奇妙なやり方で免許をとる日本人はほとんどいないので、日本人は探すだけで難しく、いたとしても5割以上の確率で免停処分の人です。日本のグローバル化がひしひしと進行していることを感じます。ちなみに、彼らの中には日本語が達者なものもいればそうでもない者もおり、なかなか警察官のみなさんも対応に苦慮しているようす。こういう人たちのお陰で動いている産業も日本では増えてきたので、これが今の日本社会のひとつの縮図というべきでしょうか。

 

下見は絶対

 下見は絶対です。下見ってなにかって?コースの下見です。

 ここ鴻巣では、午前・午後ともに実技試験受付前に、受験者はコースに入ることができます。鴻巣では仮免実技試験のルートは3つありますが、その3つのルートがどのような構造になっているか、どういうところに注意すべきかという点を、ルートに従って歩いて、下見していくのです。

 これは絶対です。なぜなら、初回の試験を受けるときは、一度も鴻巣のコースで走ったことがない状態で受けなくてはならないからです。教習所の場内で仮免実技試験を受ける場合、今まで何回も走ってきた場所で試験を受けるわけですが、免許センターで受ける場合は、本当に全く知らないコースを走ることになります。すべてが未知です。超広いし。広すぎて「見通しの悪い交差点」は、超見通しが良いのはご愛敬。元荒川の綺麗な桜並木を眺めながら、コースを一つ一つ丹念に下見していきます。

 なお、先ほどみた外国人たちは、そういう専門の教習所があるらしく、先生らしき人に連れられながら集団でぞろぞろと歩いていきます。こっちは一人ぼっちですが、気にしている場合はありません。時間はごく限られています。あっ、スマホ等で写真を撮ったら、警察官がやってきて、いやどうなるかは知らんけど、どうにかなるので、お気をつけて。

 時間が来たら、コースを一望できる待合室に戻ります。緊張するこころを抑えつつ、順番を待ちます。もちろん、試験では一人で乗車するのではなく、誰か他の受験生と同乗する必要があります。あれ、地味に嫌だよね。前の人がうまかったりするとプレッシャーだし。

 

実技は落ちるのが当たり前

 さて、早速実技......ですが、予め言っておくと、ここ鴻巣では、実技は「落ちるのが当たり前」です。その回での合格率は50%どころが30%を切っていると思います。いやもっとかもしれない。ここ鴻巣で実技試験を受けるのが、多くは外国人か免停処分の人であることが、この合格率の低さに拍車をかけます。

 その制限の少ないシステムから「未公認教習所は早く免許が取れる」と言われることもありますが、最大の落とし穴はここにあります。確かにここで一発づつで仮免と本免を突破していけば、ものすごいスピードで免許が取れます。それはマジでそう。でも、一発で合格していくには、生まれながらにして運転適性がカンストしているとか、超人的な器用さで諸事を完璧にこなすとか、そういうレベルである必要があります。それは、運転の腕以外にも、いろいろなファクターが影響してくるのです。

 まず一つは、隣に座っているのが警察官であること。教官が怖い?そんなもの高が知れています。大切なことだからもう一度言います。隣に座っているのは、現役バリバリの、警察官なのです。彼らの背後には、経営的な背景から来るやさしさも、何の妥協もありません。淡々と減点し、持ち点がなくなってしまえば、そこで試験は終了です。

 次に、乗ったことのない車種に乗らなくてはならないということ。わたしの教習所の教習者はタクシーでもおなじみのトヨタ・コンフォート。もちろん、鴻巣でも1/2の確率でコンフォートですが、残りの1/2ではマツダアクセラが来ます。これが意外と曲者なのです。原始的なMTであるトヨタ・コンフォートに比べて、より新型であるマツダ・アクセラの運転感はなんだかおもちゃのような感じがするんです。ギアチェンジ軽すぎない?これほんとに半クラッチ繋がってる?なんか座席深くない?

 こういう違和感は、運転に慣れてしまえばなんともないところですが、まだ仮免も持っていないひよっこドライバーには厳しいものです。というか無理だよ。試験当日に新しい車は無理です。だってさ、発車時の手順だけで正直いっぱいいっぱいじゃん。

 

 案の定ドタバタしながら発進。「どうしました?」じゃないんだよ。初めての車に困惑してんの!とはいえ、落ち着いて落ち着いて。まずは一つ一つ......。

 もたつきながら外周に入って、さて各項目に.......。というタイミングで、終戦勧告。「試験を終了します」という冷たい言葉で、指示通り車を戻していきます。

 さて、一言アドバイスのお時間(試験後、指導はできないけれど、一言アドバイスをくれるという決まりになっています)。

 「ほとんど発車時に点数を失っちゃってるよ。まあねえ、初めて乗る車かもしれないけどねえ。まあ教習所とかどこかでもっと練習するとか、車に慣れてきてね」。

 ......はあ。でもMTのアクセラに乗れる機会も無いしねえ。一瞬1/2のガチャに勝てば勝ちじゃね?って思ったけど、本免試験もまたガチャしなくちゃいけないんだった......。

 さて、落ちたら速攻で次の試験を予約します。全然受験者はいない割に、意外と予約は埋まっておりシビアです。あとね、土日祝日にやってないのがきつい。これ、社会人だと絶望的ですよね。しかし、幸いわたしはまだ学生でしたので、全休の日を選べば大丈夫そう。さ、切り替えて練習、次は頑張ろう!

 そういえば、同乗した外国人が、めちゃくちゃ励ましてくれたんだよね。泣きそうなメンタルの中、とても心が温まりました。ありがとう。

 

残した課題

 一度実技に落ちれば、何度か教習所で乗ってからではないと2回目は受けられない決まり。とはいっても、何だかちぐはぐに練習して、不安は残ったままに2回目に臨みます。また5時に起きて、8時までには鴻巣へ。辛すぎる.......。まあ、仮免は午後の枠もあるのですが。

 今度は見事にコンフォートを引き当てるガチャ運。でもねえ、ここでアクセラに慣れるという気概を持ってきたので、なんか拍子抜け。

 今回はしっかりと発進。どうにか一つ一つの項目をクリアしていきます。

 今回は後半に各項目が集中しているコース。慣れてきたころに、大得意のS字とクランク。.......が、一度も失敗したことのないS字でまさかの脱輪。へ?

 それでも、パニックになることなくどうにか切り抜けますが、わたしとしてはここで落ちたかなあ、という感覚でした。「まあ今回はこんなものかな」って言われることを想定したのがかえって良かったのか、残りはノーミスで落ち着いて運転。

 

 .......さて、結果発表のお時間。

 え、合否は言わんの?と思いつつ、とても「一言コメント」とは言えないくらいながいお説教。まあ、ことごとくごもっともです。改善します......。でも、これ一言じゃなくない?30言くらいあるよ?

 

 

 「今回は合格だけどね。まあ、本免ではもっとうまくなって」

 

 

 ......え?いま合格っていった?ねえ。合格って。あまりにお説教されたから、喜べもしないしなんなら聞き間違いかと思ったんだけど。

 ふう、でも、早く仮免までクリアできたのはよかったなあ。これなら、夏休み前には免許取れるかも!

 

 気持ち華やかに路上デビューを果たしたわたしですが、まだ鴻巣での実技がどういう意味を持っているのか、この時点では気づいていなかったことを、あとで思い知るのでした.......。

 

つづく