TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』最速視聴レポート #1 「はじまりのトキメキ」

 みなさん!!!ついに始まりましたよ!テレビアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』!

 もうほんとに待ちきれなかったよねえ。でもなんか実感もなくて。毎週末が待ち遠しくて、シャワーのように素晴らしい新曲を浴び続けて、みんながみんな驚くほどかわいくて尊くて、そして恍惚の表情で怒涛の勢いで出てくる円盤にお金を溶かし続ける、あの時間。またくるんだなあって、終わった今ようやく実感しています。

 

 前置きなんてまどろっこしい!さあさあ、アニメについてお話していきましょう!

 

※当記事は、TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』のストーリーに関するネタバレ、あるいは、アプリ『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバルオールスターズ』のストーリーに関するネタバレを含みます。アニメ未視聴の方、アプリ未プレイの方は、予めご了承ください。

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TVアニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」PV ロングVer.

 


 

都会で、ちょっぴりオトナなお台場の高校生事情

 台場からのレインボーブリッジ。今回の舞台が凝縮されたようなシーンからアニメは始まりました。どことなく無敵級*ビリーバーを思い出す気もして......高まる期待!

 細かいところだけど、シーンが変わるときに入る「LOVELIVE!」、「SCHOOL IDOL PROJECT」のカットインは、どことなく『無敵級*ビリーバー』と、それから『未来ハーモニー』のPVっぽい感じ。演出とかのテイストもああいう感じになるのかな。

 

 そして、早速、ゆうぽむですよ!えっ、矢野さんの侑ちゃん、超イメージ通りなんだけど。声、めちゃくちゃ良いじゃん......!

侑「イマイチ、トキメキが足らないね~」

 舞台はダイバーシティの中。「都会」を意識してるよね。都会の女子高生って感じで、洗練された放課後。前々作や前作とは違うぞ、って感じがする。

侑「このまえ取り損ねたぬいぐるみさ~、ネット見たら、オークションに出てて......」 

  「取り損ねた」って、多分クレーンゲームのことだよね。ネット―オークションをなんの躊躇もなく使うこの描写も、「都会の子」感を強めてるなあって思ったり。

 

 さて、意味深なシーンはここから。

 侑ちゃんが歩夢ちゃんにふりふりで可愛い服を勧めるシーン。

 「似合うと思う」という侑ちゃんも、歩夢ちゃんは断ります。まあね。気持ちはわかるよ。

 「最近までよく着てた」が小学生の時の話なのはちょっと面白いよね。いや、さすがに最近じゃないでしょ。

 と、ここでイケメン侑ちゃん登場。

侑「着たい服着ればいいじゃん。歩夢は何着たってかわいいよ」

  そういうとこだぞ。そうやって数多くの女の子を勘違いさせていくんでしょ。ほら、歩夢ちゃんが泣いてるよ?知ってる。でも、想像してた侑ちゃんがそのままって感じ。好きだなあ。ちょっと男のこっぽさがあるのも、イメージ通り。

 で、「あゆぴょん」。は?いきなり頭をフリーズさせないでよ。それを切り札にするのはまだはやいでしょ?そしていちゃいちゃするゆうぽむ。解釈は完全に一致です。

 

 で、大事なのはそこじゃなくて.......。フリフリの服を断る歩夢ちゃん。これは伏線になりそう。かわいい服を着れるのが、スクールアイドルだしね。

 

 それから、コッペパン!これさ、あの投票の時のやつよね?『無敵級*ビリーバー』もそうだけど、そうやって遠い伏線を綺麗に回収するの、ずるいってば.......。

 いちゃいちゃゆうぽむは変わらず。自撮りを提案する歩夢ちゃんも、やっぱり都会の子なんだなっておもうなあ。

 

『CHASE!』と、不穏の影

 「なんかピンとくるの無いんだよねえ......。」

 侑ちゃんのこの言葉。何かが始まるぞ.......!

 画面が切り替わって、階段を降りてくるせつ菜。ダイバーシティ―の階段。この場所は、虹ヶ咲のみんなが初めてステージに立った場所でもあるし、大切な場所になりそうだね。

 そして、いきなりの『CHASE!』。さすがにびっくり。まあ、予想できたといえばできたけどさ。ばっちり使うとまでは.......。

 で、突然バトルアニメみたいになる演出。これは明確に、これまでのラブライブ!には無かったですね。まあ、今作は明らかに今までの系譜とはちょっとズレているので、このくらいやってくれた方がいい、みたいなとこもあるんだけど。

「あれ、せつ菜ちゃん一人?」

「新しいグループのお披露目だったよね?」 

  でもしっかり不穏がはじまるんだね。本来は新グループのお披露目のステージに、一人で立つせつ菜。拳を握りしめるせつ菜の気持ちは、どんななんだろうか......?

 ところで、注目するのは「せつ菜が一人でステージに立っていること。スクスタのようなストーリーのプロットなら、一人スクールアイドル同好会をあきらめないかすみが部室に残っているわけで......。かすみちゃんなら、ぜったいこのステージに出たと思うんだよね。でも、ステージに立ったのはせつ菜ひとり。でも、ちょっとメタでネタバレな話をすると、せつ菜=中川菜々さんはスクールアイドル同好会を廃部にしようとする人間なわけで......。おっと、スクスタ未プレイの人にはダメな情報か!見なかったことにして.......!どちらにせよ、これは、なにやら深い事情がありそうです......!

 

 とはいえ、バトルに負けてときめいてしまった侑ちゃんと歩夢ちゃんは、そのスクールアイドル同好会が自分の学校にあることを知ると......。話が動き出さないわけがありません。さあ、ストーリーの始まりです!

 

垣間見えるメンバーたちの現状、動き出すストーリー

 でさ、いきなり髪をほどいた侑ちゃん。ねえ、殺さないでよ。美少女じゃん。ねえ。

 そういえば、ラブライブ!のメンバーって、確かに髪色は色とりどりだけど、基本一色で統一されている気がするんだよね。だから、侑ちゃんはちょっと特殊だなあ、って思って.......。え?それがどんな意味があるのかって?いや、わからないなあ、誰か考察して記事にしてよ(他力本願)。

 マンションで隣の部屋に住んでるのは、スクスタに準拠。こんな関係って、ほんとにあるんかねえ。

 ところで、この後のシーン。授業では一人の侑ちゃん。歩夢ちゃんとは外で待ち合わせ。違うクラスなんだね。

 スクールアイドルの良さを熱弁する侑ちゃん。侑「せつ菜ちゃん」のあとに歩夢「ちゃん?」ってなったのは気になる。どういうことかな?侑ちゃんは歩夢ちゃんのこと呼び捨てにしてるし、「ちゃん」呼びしてるのにびっくりしてるとか?うーんなんだろう、なんか気づいた人がいたら教えて。

 

 歩夢ちゃんが予備校の心配をしてるのもあら?ってなったよね。進学校なのかな?これまで、あまりラブライブ!ではあんまり受験の話、なかったからね。これが話に絡んでくることもあるかなあ。

 猪突猛進な侑ちゃんにあきれながら振り回される歩夢ちゃんがかわいい。ところで、虹ヶ咲学園のモデルは東京ビックサイトなわけですが......。さすがに広すぎるよね。部室棟、多分うちの大学の学生会館より広いとおもうわ。そりゃ迷うよ。

 

 で、流しそうめん同好会ってなんすか???????

 

 歩夢「同好会だけで100個以上あるらしいよ?」侑「まじか」。

 この侑ちゃんのしゃべり方、新鮮で面白いなあ。中性的な感じ。でも、すごくスクスタのあなたちゃんっぽいよね。

 

 そして、璃奈ちゃん登場。璃奈ちゃんから出るのは意外だったなあ。

 いきなりのボード無し璃奈ちゃん。これは、いろいろと考察のしがいがありそう。まだ愛ちゃんによってボードが「開発」されていないのか、それとも、この世界線の璃奈ちゃんは普通にボードをしていない時もままあるのか......。これまでの璃奈ちゃんは、肌身離さず璃奈ちゃんボードをつけている印象が強かったので、どんな展開になるのかなあ。璃奈ちゃんボードに関しては、『アナログハート』でも外していたし、どうなのかなあ。いろいろと考えてみる必要もありそうですが、一方でまだ材料がそろっていない感じもするよね。

 表情をうまく出せないのは、この世界線でも一緒。愛さんと仲がいいのも、一緒。このシーンでは、早速その問題点が露呈していて、侑ちゃんは璃奈ちゃんの感情を受け取れず。璃奈ちゃん回で、しっかり触れられるかな。そうだと思う。侑ちゃんがあまり戸惑わずに接していることも、璃奈ちゃんにとっては大きいかなあって感じがする。

 愛さんは、面倒見の良さはイメージそのまま。でもちょっと、アニメ絵の愛ちゃんはなんか大人っぽいよね。

 

 で!ここで!ここでよ、侑ちゃんの裾を引く璃奈ちゃん!!!!かわいい!!!!!!超かわいい!!!!さすが、キュート系スクールアイドル。惚れちゃう。あ、その高咲侑って子、こう見えてすごい女たらしだと思うから気を付けて。

 

 上からの視点は、多分中川菜々さんのもの。しっかり見てるねえ。で、追ってくるわけだ。

 そして、ついにたどり着いたスクールアイドル同好会の部室。しかし、そこに表れたのは生徒会長の中川菜々。

 「優木せつ菜に会いに来た」と告げる侑ちゃん。しかし、そこで中川菜々さんから、衝撃の発言が飛び出します。

菜々「彼女はもう、ここには来ませんよ。

スクールアイドルは辞めたそうです。

彼女だけではありません。

このスクールアイドル同好会は、ただいまをもって、廃部となりました。」 

  いやあ、不穏ですなあ。そして、意味深な発言。

 「ただいまをもって」廃部になったって、どういうことなんでしょう。「ただいまをもって」っておかしいじゃん?だってさ、普通なら「廃部になっています」っていうのが普通じゃない?いくら菜々さんにその権限があったって、わざわざ侑ちゃんたちがいる前で、廃部を決定しなくてもいいわけだ。

 そう考えると、菜々さんは、侑ちゃんと歩夢ちゃんが来ることを待っていたと読めなくもない。確かに、スクールアイドル同好会は崩壊していた。すでに、廃部になる方針だった。しかし、それは歩夢ちゃんと侑ちゃんがスクールアイドルに気づき、そしてスクールアイドル同好会を探して、たどり着いた。それをもって、廃部になった。どうも、そんな感じがするんだよね。

 

 それから、各メンバーのシーン。演劇部のしずくちゃん。すやぴな彼方ちゃん。果林ちゃんと話すエマちゃん。それから、一人で学校に向かって吠えるかすみちゃん。

 果林ちゃんはまだスクールアイドル同好会のメンバーと言うわけでは無さそう。活動休止前のスクールアイドル同好会がせつ菜・しずく・彼方・エマ・かすみというメンバーだというのは、スクスタのストーリーと同じ。これから、アニメのストーリーとスクスタのストーリー。どのくらい一致するのか、それは終始、見どころになりそう。

 

侑「自分の夢はまだ、無いけどさ。夢を追いかけてる人を応援できたら、私も、何かが始まる。そんな気が、したんだけどなあ」 

 失意の侑ちゃん。この発言は、侑ちゃんの、これまでにない立場を如実に表した発言と言えるかも。侑ちゃん自身のストーリーは、まだスクスタでは描かれていないもの。だから、侑ちゃんのなかで何が始まっていくのか。それは、とても大事なストーリーの見どころであり、そして根幹になってきそう。

 

 買い物に行く二人。フリフリの衣装の前で考え込む歩夢。 

 門前仲町行きのバス。これ、ほんとにあるよね。それに乗って、帰る二人。どうも、二人のマンションは東雲にあるキャナルコート。ここ、『無敵級*ビリーバー』のPVに出てきたよね。発売になったグッズのパスケースも「東雲⇔虹ヶ咲学園」になっているし、ここが二人の住まいで間違いなさそう。

 

歩夢「私、好きなの!

ピンクとか、かわいい服だって、いまでも大好きだし、着てみたいって思う。

 自分に素直になりたい。だから、見ててほしい。

 私は、スクールアイドル、やってみたい!」 

  このシーン、泣いたよね。感動ですよ。

 でもね、一つだけ、気になることがあるの。それは、歩夢ちゃんの気持ち。

 スクスタでは、歩夢ちゃんがスクールアイドルを始めた理由は「あなたに誘われたから」だった。もちろん、歩夢ちゃん自身もスクールアイドルが好きって気持ちがあったけど、それは、「あなた」とぶつかって、初めて気づいた。「あなた」がいなければスクールアイドルを辞めようと思うほど、歩夢ちゃんの気持ちは他人本意だった。

 でも、アニメのストーリーは違う。歩夢ちゃんは、まっすぐスクールアイドルが好きだと言った。小さな違いかもしれないけれど、私はこの違いは大きいと思う。歩夢ちゃんのストーリーがどんなものになっていくのか、スタート地点はすこしずれている。アニメでは、歩夢ちゃんは「自分に素直になりたい」から、スクールアイドルを始める。これが、歩夢ちゃんのスクールアイドルへの気持の根幹。これからどんなストーリーが描かれたとしても、最後はここに帰ってくる。そんな気がする。

 

Dream with You

 そんなこと言ってる場合じゃないよ!!!!!!!!!!!

 いきなり始まるアカペラ。歌いだす歩夢ちゃん。

 ねえまって、え?いきなりソロ曲なの?確かに、虹ヶ咲の話はそういう話だけどさ。ちょっと、え?これ、9人全員ソロ曲が来るとかある?たしかに、これまでのラブライブ!はしっかり一人ひとりそれぞれに個人回を用意してきたから、出来なくはないけどさ.......。

 それから、そのクオリティ―よ。あれだけ感動して『無敵級*ビリーバー』と同じだけのクオリティーが、ここに用意されてるじゃん。これ、毎回やられたら、本当に命が持たないよ?ねえ。もう来週が楽しみで怖いんだけど。ねえねえねえ。3形態のニューシングル、3回リリースされてそれぞれ3曲収録だったよね?じゃあ、9人それぞれ来ることもあり得る、というか信憑性高いわけだ。まじ??????????正気????????

 

 あとね、曲ですよ、曲。久しぶりに、聴いた瞬間にびびっときちゃった。好き、って気持ち。これは自分にとって大切な曲になるって第六感の予感。完全にときめいちゃった。どうしてくれるの歩夢ちゃん。あなたの株も急上昇ですよ。ねえ。

 

 『Dream with You』。Youと侑が被っているのは、この命名を最大限に生かしている感じがします。でもね、Ayaka Miyakeさんだからね。勝ちは約束されておりました。

 しかも作曲はCarlos.Kさん。もうさ、勝ち確じゃん。まあもうね、圧倒されたんだけど。これはリリースはで待ちきれないやつですね。擦り切れるほど聴きます。聴いて待ちます。

 

侑「いつだって私は、歩夢の隣にいるよ」 

  スクスタのストーリーを読んでるとさ、これすらちょっと不穏に思えるよね。歩夢ちゃん......。侑ちゃんが隣にいなくなってしまう。そんな時間がくるのでしょうか。

 

期待と展望

 EDは『NEO SKY, NEO MAP!』。ここにきて畑亜貴さん×小高光太郎さんですか。急にこれまでのラブライブ!に戻っていく感じ。ずるいなあ。

 それでいて、これまでのラブライブ!にはなかった、おしゃれなED映像。虹ヶ咲のこのおしゃれな感じの演出、『未来ハーモニ』もそうだけど、死ぬほど好きなんですよね。これまでのラブライブ!とは違うという部分を、最大限生かしてるよな......。いいぞ、もっとやれ!

 優しいタッチの背景に、優しさの中に強さもある曲。きっとこの曲に何度も泣かされるんだろうなあ。私が一番好きなのは、傘を差したメンバーの演出。侑ちゃんは黒の傘をさしてるんだ。この子たちの歩いていく道は、どれだけ雨が降っても、きっと止んで、それから虹がかかるような気がして、もう、楽しみでしょうがないよね。

 

 最後は、コミカルな音楽とともにかすみん登場。そうだよね。この子がいないと、物語は加速していかないもんね。次回はかすみちゃん回の模様。こりゃあ、見逃せませんなあ。

 

 第一話では、イメージ通りのゆうぽむやメンバーを回収しつつ、すこしづつ不穏な伏線がばらまかれ、それでいて、感動する展開もあって、見どころ一杯でした。

 まだまだ、アニメでの虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会がどういうストーリーを辿っていくのか、スクスタと同じように進んでいくのか、あるいは、全然違うストーリーになっていくのか。栞子ちゃんが登場するのかも合わせて、まだまだ見えていない部分は多そうです。

 なにより、隅々まで完璧な作画。すでに期待を上回るストーリー。とても高い曲のクオリティー。そういう部分での不安は完全に一掃された気がします。やっぱラブライブ!はすごいんだって。これは覇権ですよ。一回も、いや一秒一瞬も、彼女たちの描いていくストーリーは見逃せないのです!

 

 それではまた、来週お会いしましょう!

 こばと

こばとんの旅行日記・黒澤ルビィ生誕祭in沼津

 こんばんは。こばとんです。

 ここ最近は虹ヶ咲の2ndライブ関連で熱が入ったブログを沢山更新していたので、おかげでスナック菓子くらい軽い内容のブログをどう書き始めたらいいかわからなくなってしまいました。リハビリですね。ちょっと砕けた感じでいきましょうか。

 ここ2か月、シングル『無敵級*ビリーバー』発売、三船栞子ちゃんのニジガク加入、そしてアルバム『Just Believe!!!』発売と虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会関連のイベントが続き、それに感化されて気合の入ったブログをたくさん世に出してきました。おかげで飛躍的に読者が増え、同じように言葉を紡いでいる人とも出会い、視野も一気に広がった感じがします。

 でもね、その分少し、他のジャンルの記事とか、ゆるい記事が書きにくくなった気もして.......。自意識過剰ですね。反省します。ブログなんて好きなこと書けばいいのよ。わかってる。でも、人間の心と言うのは複雑なものでして.......。結構いろんなジャンルのブログをこれからも書いていくと思います。それは悪しからずということで。

 戯言はこのあたりまでにしておきましょう。本題に入ります。

 今回のブログは忘備録的に書く、久しぶりの旅行記です。とはいえ、がっつりラブライブ!関連なのはご愛敬。

 

 

 9月21日、Aqoursにおける私の推しである黒澤ルビィちゃんの誕生日に、沼津に行ってきました。実は、母の仕事の関係でまとまった数のプレゼントが必要になったんです。なら、沼津で買って、いつもお世話になってる第nの故郷に貢献しようじゃないか、ということで遠征を敢行しました。沼津にお金は落とせるし、必要なものは買えるし、私は沼津に行けるし、一石三鳥?って感じです。

 キャラクターの誕生日に沼津を訪れるのは初めて。どんな感じなんだろう。混んでるかな。と、ドキドキで沼津に向かいました。

 

 

 

 

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今回のメインはあわしまマリンパーク

 4連休の人出はすごいものでしたね。早くも圏央道に乗ったらすぐに渋滞。箱根付近でちょこちょこ寄り道しながら、11:00頃にようやく内浦につきました。

 今回は伊豆縦貫道経由だったので山側から口野放水路のあの信号に出たのですが、やはりここがラブライブ!サンシャイン!!の世界の入り口という感じがして好きです。みんな言ってるよね。沼津市街から走ってくると、静浦くらいまでは意外と街中だったり、防波堤が高かったりするので、期待するほど海が見えないんですよね。それが、ここ口野の信号を曲がると、世界は一変する。ほんとうに一変するんだよね。この場所を選んだのはほんとうに慧眼だと思います。

 

 実は私、ここ内浦には深い思い入れがあります。既にそれで一本ブログを書いているので、それを読んでくれても嬉しいけど。貼っておきますね。

 

tsuruhime-loveruby.hateblo.jp

  そう、私にとって「初めての家族以外での旅行」の行先がここ、内浦だったのです。ラブライブ!サンシャイン!!はプロジェクト発足時から追いかけているわけですが、舞台がここと分かった時には運命を感じました。え?大げさじゃないかって?まあオタクはそんなもんだよ、っていうのもそうだけど、それだけでもないと思います。

 不思議と、あの旅行を、まだ思い出せるのです。もう17年も前なのに。6歳のわたしに、海辺の小さな街は大きなインパクトがありました。当時私が宿泊したのは山三ビュウホテル(安田屋さんのとなり、松濤館の向かい)の、かなり高い階の部屋でした。一度内浦を訪れた人ならわかると思いますが、内浦湾を見下ろす景色は絶景なんですよね。お隣、安田屋旅館は千歌ちゃんの実家でも話題ですが、太宰治ゆかりの宿でもあり、太宰はここでかの『斜陽』を書いたとされます。内浦湾が見えて、それから淡島がどっしりと浮かんでいて、背景には見事な富士山が映える。一度見たら忘れられない景色なんですよね。

 ここ内浦のすごいところは、確かにアニメの聖地なんだけど、「アニメに頼らなくても」十分な、圧倒的な魅力があるところだと思うのです。例えばガルパンの聖地・大洗は、「街全体がアニメを完全に受け入れているその雰囲気」がすごく魅力的なのですが、内浦は違います。

 内浦は、景色だけで勝負できる。そんな感じなんだよね。ただそこに、千歌ちゃんを走らせるだけでいい。Aqoursのみんなを、そこにイメージするだけでいいんです。この感覚は唯一無二。疑う人はぜひ内浦に行ってみてよ。後悔はしないと思うよ。

 

 

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船もだいぶ混雑していました

 さて、チケットを買ったら船で淡島にわたりましょう。さっきの昔話の続きをすると、淡島まではかつて日本で唯一(だったはず)の海上ロープウェイが走っていました。写真の「あわしま」と書いてある建物は、その名残。2017年くらいまではロープが残っていましたが、ついに撤去されてしまいました。船で行くのと、ロープウェイで行くの。どっちがいいかなあ。今の船で行くスタイルもなかなか味があっていいんですけどね。かつての海上ロープウェイも、今でも記憶に残ってるんだから多分楽しかったんだと思うな。

 

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ラッピングバス側面

 そういえば、この日は東海バスAqoursのラッピング高速バスがあわしまマリンパークの岸側にいました。来てるなんて知らなかったよ。年中いろんな企画をやっているのも聖地ならではって感じがします。このバス、内装もAqours仕様らしく.......。乗ってみたいね。

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あわしま側のロープウェイ駅跡。「山頂」という名前ですが、淡島神社まで登ったことのある人はここが全然山頂ではないことを痛いほどわかっているはず。

 知らないとなかなか気づかないかと思いますが、船からはかつてのロープウェイの遺構が良く見えます。そう、淡島側の駅「山頂駅」です。ちなみに私は鉄道オタクでもあり廃線オタクでもありそれからちょっとだけ廃墟オタクでもあり、思い出の地が荒廃してる姿を見に行ってみたくてたまりません(なんか語弊がある気がする)。一回そういうツアー組んでくれん?あったら行くわ。
 ちなみに、現在はここに立ち入ることはできません。淡島神社まであの地獄の山道を登っていくと、途中で右方向へと逸れていく立ち入り禁止の道を見つけられるはず。それがロープウェイの駅につながっています。当時、あわしまマリンパークに行くには山を下りていく必要があったんですよね(ロープウェイの記憶もあるし、山を下りていった記憶もある)。ちなみに、この場所は淡島神社はおろか、ロックテラスよりも(多分)低い場所。全然「山頂」ではないよね。

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なぜか「淡島水族館」表記なの、いつも気になってる

 船で島に向かうようになった今では、桟橋が島の玄関口です。ここ、あわしまマリンパークは非常に開放的な水族館で、屋外にも多くの動物がいます。関東圏だと鴨川シーワールドとかが同じ構造かな?開放的な水族館は健康的な感じがして好きです。薄暗い室内はおしゃれでいいけど、「そういう」雰囲気になるしね。よく考えたら私、水族館オタクでもあるんだよな。そのうち水族館に関する記事も出すことにしましょう。

 

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アシカさんです

 それにしても、いつ来てもこの水族館はノスタルジーな雰囲気があっていいですよね。先日としまえんが閉園となって、「普通の遊園地が無くなるなあ......」と思ったのですが、同様に「普通の水族館」も徐々に絶滅危惧に陥っている気もします。大きくて有名な水族館は、どんどんお洒落に、最新設備なんかを入れて、もはや動物じゃなくて演出を見に来てるのか???ってなるところも多いですし、一方の何の変哲もない小さな水族館は、徐々に寂れている気がするんですよね。でもさ、普通の水族館が一番いいじゃん。だってかわいいペンギンさんやイルカさんやカワウソさんを見に来るところなんですよ?インスタ映えだけがすべてみたいな世の中にはなってほしくない。

 と、世の流れに反して愚痴ってもしょうがないのですが、ここあわしまマリンパークは、そんな流れには完全に置いていかれてしまっています。時が止まったまま、朽ち果てていきそうな水族館。そこに、なだれ込んでいくラブライブ!サンシャイン!!。ほんとに、この奇跡のように時が止まった水族館がこうして残っているのはラブライブの力だと思う。だからこそ、もっともっとお金を落としていかなくちゃね。

 

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海を仕切って作ったイルカプールは、富士山を借景にするところが粋。この日は見えなかったけどね.......。

 アシカショーやイルカショーを見た後は、ゆったりと淡島を一周してみました。初めて一周したんだけど、思ったより簡単に回れました。20分くらいかな?どこかで30分以上とか見た気がしたんだけどな。

 水族館の反対側に回ると、内浦湾が一望できていいですね。右手には長井崎中学校。左手には三津のビーチと内浦の街。伊豆半島特有の箱庭感と、完全に凝縮されたAqoursの日常の世界.......。最高です。

 この日は驚くほど海が綺麗でした。のぞき込むだけで魚群が見えるし、海底にはウニがたくさん転がってるし。松浦家のダイビングショップはありませんが、ダイビングしてみたら楽しそう。

 

 さて、そろそろ淡島を離れるとしましょうか。三津方面に向かいます。

 内浦って深刻に車を停めるところが少ないんだよね。駐車場をやったらビジネスになる気がします。でも土地がないか。どうかな。

 なんだかとっても渋滞していますし、ここからはお散歩しながら内浦を楽しむことにしましょう。

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ここ、昔はどんな観光案内所だったんですかねえ。今はラブライブ!一色だけど。

 まずは三の浦総合案内所へ。ここは有名だよね。

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とにかく、どこまでもラブライブ!

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ルビィちゃんの誕生日なので

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祭壇。梨子ちゃんと一緒に。すごいね。

 内浦は比較的ラブライブ!っていう感じのゴテゴテのラッピングに溢れているかというと、意外とそうでもない部分もあるのですが、ここは違います。もうAqours一色。梨子ちゃんとルビィちゃんの誕生日と言うこともあって二人のフィギュアやねそべりがいっぱいでした。ちゃんとマスクしてるとこが面白い。

 

 

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内浦湾。浮かぶ淡島はなんかもう実家のような安心感。

 足を延ばしましょう。長浜城跡に向かいます。

 えっと、いちおう専攻は歴史学なので歴史のお話をすると、ここ長浜城は戦国時代に関東を治めた北条氏のお城です。ここは北条水軍の城。陸上だけではなく、海上でも戦国時代の覇権争いは繰り広げられていました。海をもつ多くの大名は、水軍も持っていなくてはいけなかったのです。しかし、もとから水軍や、それに適した人材を持っている大名というのはほとんどありませんでした。そこで、各大名は海賊を召し抱えて水軍の長を務めさせたわけです。これは忍びの者、つまり忍者にも同じようなことが言えるかも。戦国大名の水軍では、毛利氏の村上水軍豊臣氏の九鬼水軍は有名ですね。ここ駿河湾は、北条氏と、それから今川氏が滅んだあと駿河に入ってきた武田氏の水軍が対峙した場所でした。

 ちなみに、ここ長浜城の城主は梶原景宗。元海賊の彼は北条水軍の中では最も有名な、代表的な武将と言ってもいいでしょう。私もよくゲームでお世話になりました。

 ここ、長浜城は内浦湾がもっともよく見える場所のひとつで、ラブライブ!サンシャイン!!にも聖地として出てきます。あれだよね、PVを作るときだよね。

 

 

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かすみんも内浦を堪能したようです。

 長浜城を超すと重須と呼ばれる集落に入ります。ラブライブ!サンシャイン!!の聖地と言えるのは、ここ重須と、それから長井崎まででしょうか。それより南には、ぽつぽつと聖地があるだけになります。

 トンネルの手前を左手に逸れて歩いていくと、「あのバス停」が現れます。それから、見慣れた堤防。海越しに淡島。ここは晴れてると富士山の絶景スポットなんだけどね。今日は富士山は相変わらずご機嫌斜めの様子です。

 この防波堤にメンバーが腰かけているイラストもよく見ますが、実際に行ってみると海面、それから浜辺との高低差が大きいのでちょっと怖いです。2mくらいは優にあるんじゃないだろうか。真似をして写真を撮ったりするときは、怪我をしないようにね。

 

 さて、そろそろ日も陰ってきたことですし、引き上げるとしましょう。

 ところで、今回初めて伊豆三津シーパラダイスの立体駐に車を停めたのですが......。 

 まず、怖いね。アクセルとブレーキを踏み間違えたら海にまっさかさまになりそう。ちょっと解放感があるのはいいけど。

 それから、懐かしのホテルがよく見えました。そう、話は戻りますが山三ビュウホテルです。

 

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Googleでは廃業したことになってるけど、実際のとこどうなの?女将さんにもう一度会いたかったな......。

 最上階に近いところに海に面して広い窓が見えますが、多分ここに泊まったはずです。でもここ、どう考えても宴会場かなんかだよね?しかも、かなり多人数で一緒にねた記憶が.......。大広間だったのかなあ。どっかのタイミングで泊まってみるべきだったかなあ。しかし、とにかくその大きな窓からの景色はよかった覚えがあります。内浦にあるホテルの中ではかなり高い建物だしねえ。

 

 とんでもなく混雑している道を、ゆっくり沼津へ向かいます。名残惜しいなあ。

 沼津ではまず沼津港へ。ここは混んでました。大盛況。深海水族館もとっても好きだから、また行きたいけどなあ。

 目的は一つ、そう、ルビィちゃんのマンホールです。沼津港にあるんだよね。せっかく誕生日だし、実は一回も写真が撮れていないので。

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沼津港にあります。カラーマンホールもいつか撮りたいよね。

 もう時間があまり残されていないようです。行きたいところもっとあったけどなあ。つじ写真館さんに行けなかったのは悔やまれるところ。やっぱ泊まりでいつか来たいですね。朝の内浦とかも堪能したいし。あとはね、オタクと来たい。大所帯でもいいなあ。同じ趣味のひとと話す時間って至福だよね。今はリアルの知り合いでラブライブ!好きがあんまりいない状況なので、寂しく活動を続けております.......。ばりばりに車運転できるからね、誰か今度行きましょ。

 

 最後にBiVi沼津で開催されてるラブライブ!サンシャイン!!のプレミアムショップへ。これは開催期間ギリギリだったのでよかったかな。千歌ちゃんの夏祭りのポスターが買えたのはよかった。今年はコロナの影響で花火大会もお流れになりましたが、このポスターはほんとに粋だと思うの。

 

 えっと、オチがないんですよね......。名残惜しくも沼津を離れます。まあね、酷かったよ。渋滞が。沼津市街から東名に乗るところから渋滞。しかも東名も御殿場あたりから動かず......。6時に沼津を出たのに自宅についたのは10時半近く。疲労感で一杯でしたが、楽しい一日だったと思います。

 もちろん外出の際には新型コロナウイルス対策は不可欠です。今回の旅行も、マスクの着用・手洗い、除菌の徹底・できる限りレストラン等での飲食を避けるなど、様々な対策の上で旅行しております。みなさんもお気をつけ下さいね。

 とはいえ、いつまでも家にこもっていては折角の延長した学生生活ですから、いろんな経験をつみたいところです。順次対策のなかで一人旅とかを増やしていきたいな、当思った小旅行でした。

 

 それではまた。

 こばと

笑顔の魔法を、もう一度 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会2ndライブレポート②

 「ステージには魔物がいる」。

 今回以上に悔しいライブは、初めてだったかもしれない。

 

 とにかく、盛りだくさんのライブだった。虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会にとっては2回目のライブ。ラブライブ!フェス以来8か月ぶりの舞台。この8か月の間、虹ヶ咲の活動はまさに「アクセル全開」だった。

 ユニットシングル3枚、さらには3rdアルバム。そして、虹ヶ咲では初となる選挙によるシングルが発売された。栄えある初代1位は中須かすみちゃん。そして発表になったラブライブ!では初となるソロでのシングルは、作曲にDECO*27さんを呼ぶこれまでのラブライブ!とは一線を画すような一曲になった。『無敵級*ビリーバー』である。DECO*27さんが作曲してくれたことに喜んでいたまゆちを良く覚えている。初めての総選挙1位にふさわしい、かすみんとまゆちへの素敵なプレゼントだった。

 

 これだけ盛りだくさんのライブだが、開催に漕ぎつけるには多くの困難が伴った。

 ラブライブ!フェス開催は1月。まだこの時は、その「異変」は訪れていなかった。今から考えれば、ラブライブ!フェスが開催できたことは神様の粋ないたずら、もしくは雨空が一瞬にして晴れるような奇跡でしかなかった。2月になるとその異変の「影」は少しずつ大きくなり、3月にはついに日本でも深刻な問題になりはじめていた。そう、新型コロナウイルスの流行が始まったのだ。

 日本の、いや世界のすべての人々を様々な困難に陥らせたこのウイルス。ラブライブ!が受けた影響も甚大なものだった。予定していたAqoursのユニットライブは、かろうじてCYaRon!のみ開催するも、その後の2ユニット、そして全員揃っての「PARFECT WORLD」も延期、中止に。生放送イベント、さらにはCDリリースまでにも影響は波及していき、その動きは完全に停滞してしまった。

 

 既に発表されていた虹ヶ咲の2ndライブも、その開催が危ぶまれつつあった。夏には収まると言われていたウイルスは、その期待には見向きもしてくれなかった。ラブライブ!運営は、ぎりぎりまで「諦めない」運営をしてくれたと思う。限られた可能性のなかで、どうにか通常にできるだけ近い状態でライブをしてくれるよう模索している様子は、ひしひしと伝わってきた。しかし、叶わなかった。

 虹ヶ咲の2ndライブ、そしてAqoursの6thライブは、無観客有料生配信という形態をとることになった。事態はさらに深刻で、Aqoursに至っては6thライブの5大ドームツアーはすべてキャンセルとなった。この衝撃の決定は、ファンにとってもあまりの衝撃だった。「受け止められなかった」と言うより、「どう受け止めればいいかわからなかった」といった方が適切だろうか。こういった混乱を乗り越えて、遂に虹ヶ咲の2ndライブ当日がやって来たのだ。ファンの期待は大きかった。8か月分の想いが、それぞれの画面に集まった。

 

 今から考えれば、彼女たちにこれだけの「想い」を背負わせるのは、少々酷だったかもしれない。それは、どうしようもないことでもあった。しかし、彼女たちは決して逃げなかった。それだけは間違いない。

 

 ラブライブ!初の、無観客有料生配信ライブ。ついに、その幕が開いた。

 

 私たちも、どこか浮ついていた。ライブにはルーティンがある。会場に行く(遠方からのお客さんは、前日に現地入りして泊まる人もいるだろう)。少しずつ会場が近づいてくる電車の車窓。同じような服に身を包んだ、同じ想いを抱えた人たちが、少しづつ集まってくる。久しぶりに会う人もいるかもしれない。大好きなキャラや曲の話に花が咲くこともあるだろう。チケットをもぎってもらい、入場する。大きなスクリーンと大きなスピーカー。様々な予告や宣伝の映像が流れる。少しづつ上がっていく会場の温度。会場の一体感が醸成される。暗転。静寂の後の歓声。きらめくライトの先を、何千何万という人が見つめる。

 そんなことは、一つもなかった。画面の前に腰かけて、画面と、それからTwitterを見つめる。言いようのない淋しさは、確かにあった。何となく、心の準備ができていない気がした。しかし、それは誰のせいでもなかった。これが今の「最善」であることは、誰もが理解していた。しかし、わがままを聞いてはくれない。心の準備ができるまで待ってはくれない。時間が来れば、幕は開く。ただ、それだけのことだ。

 

 きっと彼女たちも、同じ気持ちであったに違いない。いや、「同じ」だなんておこがましい。多くの視線を集める彼女たちにかかるプレッシャーは、想像もつかない。観客のいないステージに一人で立つことが、どれほど心細いか。しかし、私たちと同じように、寂しさを、心もとなさを感じていたことは、絶対に間違いないと思う。

 『未来ハーモニー』。はじけるようなイントロ。しかし、何かがちぐはぐな気がした。何が、というわけではない。しかし、何かが、確実にテンポを乱している。魔物は、ステージの上だけではなく、電子の海へと潜っていたのかもしれない。その魔物は、お台場のステージにも、私たちの画面にも、同じようにひそんでいた。何かが起こる、そう思った。

 

 いつも通りに、しかし何かが足りないまま、自己紹介が終わって、キャストがはけていく。聞きなれたイントロ。パステルイエローの衣装。『無敵級*ビリーバー』は、虹ヶ咲の特徴でもあるソロ曲。一人で立つステージ。セットリストのトップバッターは、総選挙1位のかすみんとまゆちに託された。

 

 「魔物」はそこにいた。声にならない声が出た。いや、声になっていたかもしれない。しかし、届けようのない声だった。拳を握りしめた。「頑張れ!」。そう叫んだ。

 

 振り返ってみれば、それは決して致命的ではなかった。まゆちは、すぐにかすみんへと戻っていった。涙は最後まで見せなかった。『無敵級*ビリーバー』の力強い歌詞は、ステージのまゆちの力になっていた。かすみんがまゆちの背中を押しているようにも思えた。最後まで、まゆちは自分を信じてステージに立った。見事だったと思う。

 もし、あの瞬間会場にいれば、声が届けられれば、空気を、気持ちを、通わせあっていれば。そう思わずにはいられなかった。思い出したのは、Aqours1stライブでの逢田さんのピアノ演奏だった。ピアノ演奏に失敗してしまった逢田さん。止まってしまった音。駆け寄るメンバー。あの時、私たちの声は、たしかに逢田さんの力になった。会場は一体感に包まれた。そして失敗を乗り越えたステージは、大きな感動を私たちに与えてくれたのだった。「怪我の功名」とは、まさにこういうことだ。お客さんで一杯になったステージは、失敗すらも感動に変えるような、「魔法」に包まれているのだ。たくさんの想いを乗せた「魔法」は何よりも強い。「ステージの魔物」なんか、目じゃないのだ。

 しかし、それはできなかった。叶わなかった。オンラインライブは、想像以上に非情なものだった。魔法はかからなかった。キャストは、反省を口にすることが多かった。私たちも、どうしてもそれにとらわれてしまったような気がする。

 強いまゆちは、最後までステージで笑顔を見せてくれた。折れなかった。昼公演のMCで「悔しい、次こそは」、そう言っていた。夜公演では、まゆちとかすみんはぎりぎりのところで魔物に打ち勝った。夜公演のMCでは「いい意味で吹っ切れた」と、まゆちは語っていた。しかし、それはかすみんのことを信じているからこその強がりだったと思う。2日目の最後のMCで、まゆちは「かすみんに申し訳ない」と泣いていた。かすみんに対する強い想いがにじんでいた。まゆちは、最後まで自分自身を、それからかすみんのことを、信じて向き合い続けた。目を背けなかった。

 かつて『無敵級*ビリーバー』の記事で、私はこう書いた。

「かすみちゃんの最大の魅力は、武器は、一番誰にも負けないところは、「信じること」だ」

こばとんの徒然日記『『無敵級*ビリーバー』と、かすみの鏡の向こう側』より

 今回のステージで見せたまゆちの姿は、まさにかすみんそのものだったと思っている。それは、「かわいいかすみん」そのものだったということではない。自分を信じるかすみんに、逆境に負けないかすみんに、ひとりで問題を乗り越えてしまう強いかすみんに、まゆちは完全に一致していたのだ。まゆちは、「本質的に」かすみんだった。

 だからこそ、私たちはまゆちを信じることができたのだ。次のステージのまゆちは、きっと十倍も百倍も成長している、そう確信した。この涙は、きっと何倍も未来のまゆちを、かすみんを輝かせるだろう。

 

 

 「失敗」の話をしてきた。誰がどう言おうと、今回のステージはまゆちにとって悔しいものだっただろう。彼女たちはプロだ。言い訳なんてありえないし、下手にかばってほしくもないはずだ。彼女たちは、最高のステージを完璧にこなすために練習を重ねているのだ。目指すステージを実現できなかったことは彼女にとって「失敗」であるに違いない。あえて強く言えば、この記事でそういう言葉をまゆちにかけるつもりは全くない。

 しかし、彼女たちに「想いを届けられなかった」ことは、あの得も言われぬ焦燥感と悔しさは、画面を突き破ってでも何かを届けたい衝動と、それができない無力さは、私たちに残された大きな課題だと思った。オンラインライブで痛いほど感じたことがある。それは、「私たちも確かにあのライブの構成員のひとりであり、私たちがいるからこそ、あのライブが成り立っている」ということだった。いや、いつもこういったことは、キャストが私たちに伝えてくれていたことだ。しかし、今回こういう形でライブをしたことで、確かに実感できた。私たちがあの場所にいる「意味」を、ひしひしと感じたのだ。

 既に書いた通り、今回のライブ開催にあたって、ラブライブ!運営は最善を尽くしてくれたと思っている。今の情勢の中で、こうやってオンラインでも完全なライブを見られたことは、感謝しかない。ARを使った演出も見事だったし、オンラインという形でどうステージを届けるにあたって、とにかく工夫に満ちていたと思う。Twitterハッシュタグはきちんとキャストに届いていたし、「ニジガクアンコールメーター」なる取り組みもあった。限られた状況の中で、キャスト・そして運営には、とても楽しませてもらえたと思う。

 

 翻って、私たちはどうであろうか。もっともっと、キャストに想いを伝えられる方法はなかったであろうか。

 オンラインライブでは、どうしても私たちは受け身になってしまったような気がした。もちろん、方法は限られていたかもしれない。いますぐいい方法が思い付くわけでもない。しかし、ステージは双方向で作り上げていくものだと気づいた以上、私たちも想いを伝えなくてはならない。いつももらっている元気を、勇気を、直接お返しすることができる場所、それがライブだからだ。

 

 次のライブが、オンラインなのか、それとも会場にお客さんを入れて開催することができるのか。それは、まだわからない。知りようがない。

 しかし、出来るはずだ。Aqoursの5thライブで、私たちは自分たちの力で、あれだけ見事な虹をかけることができたではないか。もちろん、そこまでにたどり着く努力は大変なものがある。しかし、あの瞬間、私たちはたしかにキャストに想いを届けられたのだ。次のライブは、次のライブこそ、私たちが想いを届ける番ではないか。

 どんな形であっても、私たちは全力をかけて彼女たちに想いを伝えていかなければならない。次のライブでは、絶対にまゆちとかすみんは、成長した姿を見せてくれる。私たちは、それに応えなくてはならない。まゆちが悔しさを力に変えて次のステージを作るなら、私たちも今回、想いを直接伝えられなかった悔しさを存分にかみしめて、全力でかすみんとまゆちに届けていきたいのだ。

 

 かつて、私はこう書いていた。

『無敵級*ビリーバー』は、一つのかすみちゃんの到達点だ。努力を重ねたかすみちゃんは、ついに鏡の向こうの理想の自分へと、たどり着いてみせたのだ。

 しかし、そんなかすみちゃんも、いつか心が折れてしまいそうな時がくるかもしれない。負けてしまいそうな日がくるかもしれない。

 だから、いつか必ず、かすみちゃんの「素顔」を知りたい。いつでもかすみちゃんが本音を話せる相手になりたい。そして、困ったときにかすみちゃんを助けてあげたい。

 いつでも「喜ばせる側」でいたいかすみちゃんは、どんどん進んでいってしまう。かすみちゃんがどこまでも進んでいくのについていって、いつかかすみちゃんが壁にぶつかったときに、かすみちゃんに手を差し伸べられるように、必死にかすみちゃんについていく。

 「無敵級のビリーバー」を、支えられるような「あなた」でいたい。

 こばとんの徒然日記『『無敵級*ビリーバー』と、かすみの鏡の向こう側』より

  たった一人のステージで、壁にぶつかったかすみんを、そう、「無敵級のビリーバー」を、私たちは指をくわえてみていることしかできなかった。支えられなかった。想いを届けられなかった。

 今は、ただこれが悔しい。とにかく悔しい。私たちは、デジタルの壁を超えることができなかったのだ。

 

 

 自分を信じるかすみんとまゆちは、強い。今回も、一人でしっかりと立ち直ってみせた。きっと次のライブでも、もっともっと成長した姿を見せてくれるだろう。

 私たちも、かすみんを信じている。かすみんとまゆちも、きっと私たちを信じていてくれるだろう。

 だからこそ、次は全力で想いを届けたい。この悔しさを力に変えて、かすみんに、まゆちに、全力で想いを伝えたい。「笑顔の魔法」は、かすみんとまゆちだけではかけられない。鏡のようにかすみんとまゆちの想いを受け止めて、それを同じように返す。私たちがいて初めて、笑顔の魔法はかかるのだ。

 次こそは絶対に、笑顔の魔法をかけてみせる。誓いを新たにする、そんなライブだったと思う。

 

 

 曲は、リリースしたときが終わりではない。むしろ始まりである。ライブで披露して、そしてそれを何回も何回も重ねていって、それが、曲のストーリーになっていく。そうやって、物語は紡がれていく。

 かすみんと、まゆちと、それから私たちと。『無敵級*ビリーバー』の物語は、まだ始まったばかりだ。悔しさは、力に変えればいい。次の1ページは、もっともっと素敵な物語になる。その物語を紡いでいくのは、私たちの役目でもあるのだ。

 だから、私たちを信じていて欲しい。無敵級のビリーバーの信頼に、私たちはきっと応えてみせる。今かすみんとまゆちに届けたいのは、この誓いだ。

 

 

 
 ※文中で引用した記事はこちらです。かすみんについて、『無敵級*ビリーバー』について、もっと知りたいと思う方は、ぜひこちらの記事も読んでいただけると嬉しいです。

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紡ぎ出せ福音。響かせよハーモニー。虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会2ndライブレポート①

 その瞬間、QU4RTZは私たちの前に、天使の如く降臨した。

 

 QU4RTZの1stシングル『Sing & Smile』。ラブライブ!フェス開演前に流された試聴動画は、天啓の如きインパクトをもって脳内に響き渡った。

 

 奇しくも、その日はそれまでずっと見守ってきた大切な一曲に関して、CYaRon!の三人からはっきりとした答えを受け取った日でもあった。Aqoursは、ラブライブ!は、スクールアイドルの更にその先へ行く。可愛いだけでは、輝きだけでは満足したくない。この日の『夜空は何でも知ってるの?』は、必ずしも「CD音源」のようなパフォーマンスではなかった。彼女たちのパフォーマンスは、唯一無二で、他のどんな時間にも存在しえない、その瞬間だけのものだったからだ。

 そこには、「キャラを演じる」という、基本的かつ大切な部分だけでは収まらないような、強い意志を感じた。もう、ステージに立っているキャストは自明に高海千歌であり、渡辺曜であり、黒澤ルビィなのだ。それだけじゃ物足りない。もっともっと、先へ進みたい。千歌が、曜が、ルビィが、一人の「アーティスト」としてステージに立っているような、そんなパフォーマンスがしたい。ラブライブ!フェスの『夜空は何でも知ってるの?』は、これまでも進化を続けてきた彼女たちの一曲に対する、堂々とした宣言であった。

 

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 ※ラブライブ!フェスにおける『夜空は何でも知ってるの?』のパフォーマンスに関しては、上記記事を参照。

 

 

 そのDNAは、たしかに次代にも受け継がれた。ラブライブ!でも屈指の名盤『Sing & Smile!!』は、そんなラブライブ!フェスの翌月に発売となった。

 QU4RTZは、中須かすみ・天王寺璃奈・近江彼方・エマヴェルデの4人組ユニット。個性あふれる四人組が世に放ったのは、これまでラブライブ!の世界には全く存在しなかった、美しい「ハーモニー」を奏でる二曲だった。

 

 

 『Sing & Smile!!』は、QU4RTZがこれから目指していく「ハーモニー」とは何か、それを体現した曲だ。

 この曲では、全員が同じパートを歌う部分はかなり少なくなっている。重層的なハーモニーは、四人ひとりひとりの声が欠かせない楽器となって、一つの音を作り出す。ソロパートは、それぞれの声を活かしながら、しかし一つの「音」を生みだしてゆく。決して個性は殺していないが、それぞれの声の特徴を生かしつつ「楽器」として機能している。計算し尽くされたような音の重なり合いは、美しい一つの周波数となって私たちに届く。「音楽」として完成されている、それが『Sing & Smile!!』の最大の魅力である。

 

 これまでのラブライブ!の曲は、個性のぶつかり合いだった。9人の持つ9色は、同じ力でぶつかり合って、1つの骨太なメロディーを作り出していた。「みんなちがってみんないい」。そんなアイドルらしい魅力を、ラブライブ!は存分に持ち合わせていた。

 しかし、『Sing & Smile!!』は違う。個性の違う4人が集まっても、奏でるのはひとつのメロディーだ。それぞれの個性は、ぶつからない。決して声を合わせているわけではない。むしろお互いを認め合って、それぞれの魅力を引き出す形で、一つの美しいハーモニーを生み出す。まったく新しいラブライブ!の曲が、ここに誕生したのだ。

 

 この「個性がぶつからない」というのは、グループではなくソロ活動をメインに活動する虹ヶ咲の方針そのものであり、その結果がまるで反対のような美しいハーモニーを生んでいるということは。不思議な奇跡である。

「重なりあった奇跡が

 空を渡って 星になって

 届けるんだ ハーモニー」

 まさに『Sing & Smile!!』は、彼女たちの奏でるハーモニーは、「重なり合ったひとつ奇跡」なのである。それぞれの音は同じでなくてもいい。違う音を重ねあうだけで、これだけ美しくなめらかな一つのメロディーが生み出される。

 

 『Sing & Smile!!』を歌うQU4RTZに対する私のイメージは、聖歌隊、あるいは、結婚式のフラワーガールである。ドレスに身を包んだ彼女たちは、私たちに「合唱」で、ハーモニーで幸福を届ける。彼女たちは紡ぎ出すメロディーは、私たちにとっては「福音」そのものである。 いつでも、どこにいても、どんな時でも、QU4RTZの奏でるハーモニーは、優しく私たちに寄り添ってくれる。心に沁みわたるような優しく美しい歌声に秘められた治癒能力は、計り知れない。

「明日もハレルヤ 歌おう!」

 「ハレルヤ」は、キリスト教で賛美を表す祈りの言葉。これまでの、ラブライブ!の切り拓くような力ではなく、祈りの力をもって、私たちを癒してくれる。それがQU4RTZというユニットなのである。

 

 

 B面に収録される『Beautiful Moonlight』は、さらにラブライブ!の世界観を大きく切り開く一曲である。

 一言で言えば、「上質なシティ・ポップ」。作りこまれたメロディ―は、その小節のすみずみにわたるまで、こだわりぬかれている。中でもドラムは逸品で、メロディーを聴いているだけで簡単に惹きこまれてしまう。

 これだけ凝ったメロディーに、美しいQU4RTZのハーモニーはいとも簡単に馴染んでいる。甘くて、甘くて、少しほろ苦い歌詞は、QU4RTZのハーモニーにこの上なくぴったりである。多用される英語は、少し背伸びをした恋を不器用に彩る。

 

 なによりこの曲は、『夜空はなんでも知ってるの?』に対置される存在である。

 『Beautiful Moonlight』は「上質なシティ・ポップ」であると、先ほど紹介した。「シティ・ポップ」はもう死語であると言うが、やはりこの曲を紹介するにはこれ以上相応しい概念は思いつかない。シティ・ポップとは都会の洗練された音楽であり、背伸びをしたお洒落さも、きらめく街に内在する孤独感も、お台場を舞台とする虹ヶ咲の「夜」を見事に切り取っている。星の少ない都会の夜空。主役は満月である。

 一方で『夜空はなんでも知ってるの?』で切り取られているのは、内浦の、Aqoursの見上げる星空である。『夜空はなんでも知ってるの?』には、背伸びはない。等身大の歌詞である。描かれるのが恋ではなく友情であることも、『Beautiful Moonlight』と見事に対極をなしている。

 しかし、この対極的な2曲は、確かに一つのDNAを受け継いでいる。それは、「ステージでのパフォーマンスでオーディエンスを魅せる」という、アーティストとしてのスクールアイドル。ラブライブ!が挑む新たな地平線だ。

 確かに、ストーリーによって積み重なった感動と、それからその感動から力をもらった「みんな」に支えられたステージは、スクールアイドルの大きな魅力だ。しかし、彼女たちは、たしかに独り立ちを目指している。自分の力でステージに立つ。『夜空は何でも知ってるの?』を披露するごとに、CYaRon!たちがアップデートしてきた夢は、確かにQU4RTZに受け継がれている。そして、『Beautiful Moonlight』は、彼女たちが羽ばたいていくための、両翼にこれ以上なく相応しい一曲なのだ。

 

 

 そして、彼女たちの初めてのステージを迎えた。

 軽快でお洒落な、QU4RTZらしいBGMにのせて、彼女たちはステージへ現れた。

 ジャケットと同じドレスに身を包んだ4人。『Sing & Smile!!』は、まさにイメージ通りのパフォーマンスだった。花であふれたステージ。マイクスタンドを前にした彼女たちは、まさに教会で歌っているかのようだった。ブランコを使った演出もまた、彼女たちのイメージぴったりだった。

 なにより、「ハーモニー」にこだわったということが、これからのQU4RTZが目指す場所をはっきり確認できた気持ちだった。彼女たちは、決して見事なダンスを踊ったわけではなかった。それは、彼女たちが一番届けたいのは「声」、そしてその「ハーモニー」だからだ。そして、彼女たちは「ハーモニー」に対して手を抜かなかった。口許を見ることができるライブにおいて、『Sing & Smile!!』のパート分けの複雑さは際立っていた。同じパートの声が重なっていた方が、見栄えをよいものにすることは容易である。声量も大きくなるし、こまかなミスは目立ちにくくなる。反面、全員が違うパートを歌うのは、難しい。どれか一つの声が欠けてしまえば、それはその時点で不完全なものになってしまう。しかし、ライブパフォーマンスにおいても、『Sing & Smile!!』はしっかりとハモリを再現していた。いや違う。再現していたのではない。CD音源を超えるハーモニーを目指していた。ライブとはいえ、今は様々な小細工ができる。ある程度のハモリは、エフェクトで済ましてしまってもよかったのかもしれない。しかし、今回のステージでのパフォーマンスはそうではなかった。

 特に近江彼方役・鬼頭明里さんの低音に驚かされた人は多かったと思う。イントロから最初のハモリ。この時点で、CD音源とは違った。CD音源以上に魅力的といってもよかった。この瞬間にしか聴けないハーモニーだった。4人は、それぞれのパートを、それぞれの音程で、そしてそれを重ねあうことで、『Sing & Smile!!』のハーモニをリアルタイムで奏でていたのだ。

 あえて厳しいことを言えば、まだまだハーモニーに物足りない部分はあった。しかし、これは高い期待故の言葉だ。彼女たちの技術は、声は、素晴らしい。それは、もうCD音源を聴いた時点ではっきりわかっている。だからこそ、彼女たちにはもっともっと、美しいハーモニーが奏でられるはずだ。アコースティックの演奏にのせてみたらどうだろう。アカペラで歌ってみても面白いんじゃないか。彼女たちの『Sing & Smile!!』は、実力でまっすぐ「ハーモニー」に向き合ったからこそ、無限の可能性を感じるパフォーマンスになったのだ。

 

 

 惚れ惚れするほどかっこいいドラムのイントロ。瞬くライト。お洒落にカットインする「QU4RTZ」と『Beautiful Moonlight』の文字。

 痺れた。ステージのすべてにくぎ付けになった。カメラワークがどうしてもステージ全体を映せないことが、今ステージの前で総立ちになっていないことが、これほどまでにもどかしく、悔しい瞬間はこのライブのなかで存在しなかったかもしれない。

 『Sing & Smile!!』のイメージからは、完全に一転した。アンニュイな表情。最初につまづいてしまった相良茉優さんには、この方向性の感情に身を任せるのは難しかったかもしれない。しかし、彼女たちには、少しも妥協はなかった。泣いているようにすら見えた。声が出ないこともあった。しかし、ごまかさなかった。逃げなかった。甘い恋が秘める苦さ。幸せな恋の裏の孤独。少女の抱える不安が、そのままステージにあった。真に迫った表情。惹きこまれた。

 振り付けも見事だった。曲の世界観と完全に一致する優雅で美しい振り付け。サビの振り付けは、シンプルでありながらメロディーときれいに重なり、そして踊り子のような動きは夜の雰囲気にこの上なく相応しいものだった。一方で、AメロやBメロでは振り付けはシンプルに、感情をそのまま体にアウトプットしているような自然な動きになっているところも素晴らしかった。まさに「不安を綺麗に歌いあげる」この曲の魅力を、最大限に引き出していた。

 彼女たちのパフォーマンスを表すなら、それは「かわいい」ではなく「美しい」だった。額縁に入った一枚の絵のような、あるいは映画のワンシーンをそのまま切り取ってきたような、すみずみまで行き渡った美しさがそこにはあった。そして、それは一つの妥協もなかった。メロディ―。歌声。表情。ダンス。光。そして背景の映像。すべてがステージを彩った。そう、これは「芸術」だ。QU4RTZのステージはひとつの芸術作品なのだ。もし、このステージを会場で見ていたなら、ペンライトなど動かしている余裕はなかったに違いない。ステージの一瞬一瞬が、ひとつひとつの表情が、私たちの目を奪って離さない。そんなライブだった。

 

 

 しかし、これはまだ完成形ではない。QU4RTZの物語は、彼女たちが描く美しい絵画は、いま書き始められたのだ。

 これから、彼女たちはさらなる困難に立ちむかうに違いない。さらには、自らが定めたたくさんのハードルに挑んでいくことになるのであろう。

 それを乗り越えるたびに、彼女たちの描く色には、奏でるハーモニーには、深みが加わっていくはずだ。CYaRon!がそうだった。同じパフォーマンスは二度とない。必ず、彼女たちは最高を更新していく。これから、もっともっと魅力的な曲をもらうこともあるだろう。新たなステージに進むこともあるだろう。

 しかし、『Sing & Smile!!』と『Beautiful Moonlight』は、必ず歌い継がれていく。それは、これが彼女たちの原点だからだ。CYaRon!にとっての『夜空は何でも知ってるの?』がそうだった。彼女たちは、1stライブから、長い時間をかけて、曲を育ててきたのだ。CYaRon!の3人が成長するたびに、曲は魅力を、輝きを増していった。同じようにこの2曲も、大切に歌い継がれて欲しい。そして、QU4RTZの4人が目指すパフォーマンスに、一歩一歩進んでいって欲しいのだ。

 そのために、私たちができることは一つしかない。それは、彼女たちにその機会を少しでも多く用意することだ。そして、それを最後まで見届けることだ。これから、彼女たちにはもっと大きな世界を見せてあげたい。もっと素敵な景色を見せてあげたい。彼女が輝きを増すなら、私たちもこれに応えていかなくてはならない。

 そして何よりも、最後まで見届ける必要がある。QU4RTZの物語は今始まった。努力を惜しまない彼女たちの成長は止まらない。一瞬たりとも、見逃すことは許されない。QU4RTZの物語を目撃するのは、それを伝えていくのは、彼女たちのステージを彩ることができるのは、私たちの「好き」という気持ちだけなのである。

 

 

 次のQU4RTZのステージは、もし叶うならば、絶対にこの目で、生で、見届けたい。声を、いや声にならないかもしれない想いを、確かに彼女たちに届けたい。そう誓い、祈った。そんな夜だった。QU4RTZは絶対に、スクールアイドルにとって伝説になる。私たちはいまから、その目撃者になるのだ。

ニジガクカウントダウンウィーク! #1 決意の光

 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会2ndライブまであと1日!ついにここまで来ましたね......!待ちに待った明日が、ライブ当日です!あんまり実感はわかないけど......。

 

 7回目の「ニジガクカウントダウンウィーク!」は、三船栞子『決意の光』。

 前回記事は下に貼っておきますね。カテゴリー「ニジガクカウントダウンウィーク」からも一覧できるので、そちらもぜひ。

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 栞子ちゃんに関しては、同好会への加入が発表されたときに、「10人目のメンバー、栞子の加入」ということをテーマにして、既に記事を発表しています。しかし、こちらではあくまでも「栞子の加入」という一点に絞って記事を書いたために、キズナエピソードや『決意の光』に関してはあまり触れていません。

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 メインストーリーを踏まえての栞子は、ぜひこちらの記事を参照していただければと思います。本記事では『決意の光』とキズナエピソードを中心に、2ndライブに向けた形で、栞子について書いていきたいと思います。

 それでは、いってみましょう!

 

※本記事は、アプリ「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル オールスターズ」、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会2ndライブ公式パンフレット、雑誌『LoveLive!Days虹ヶ咲SPECIAL』、書籍『にじよん』などを参考にしており、それらの内容への言及、引用、ネタバレを含む場合があります。予めご了承ください。

 

M10:『決意の光』 輝きを紡ぐ、第一歩はあなたと一緒に

※『決意の光』は、10曲目に収録されています。


【試聴動画】Just Believe!!! / 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会

 「まっすぐ」系スクールアイドルの栞子。「10人目のメンバー」である栞子がこれまでの「ラブライブ!」から考えれば特別に異色の存在であることは言うまでもありませんが、途中加入となった栞子自身の物語も、そして『決意の光』も、また極めて異色な存在であるといえるでしょう。

 まずは、システム的な問題。スクスタで配信されている3rdアルバム収録曲ですが、これから3DMVを配信、としながらも、これまでおはなししてきた9曲は、未だ3DのMVが配信されていません。つまり、振り付け、演出ともに、2ndライブでどのようなパフォーマンスがみられるか、まだわかっていないということを意味しています。

 一方で、『決意の光』は、既にその3DMVが実装されています。それに衣装もすでに実装され、2ndライブの衣装を着て踊る栞子の姿を見ることができる分、2ndライブでの三船栞子役・小泉萌香さんのパフォーマンスも、ある程度イメージを描くことができるでしょう。

 キズナエピソードも、その構成は大きく異なります。そもそも、途中からの同好会加入となった栞子には、キズナエピソードが6話しかありません。これは致し方ないことでもありますが、栞子自身に深くキズナエピソードで接近していくのは少し難しくなっています。それに、他のメンバーたちが「あなた」との出会い→ソロイベント(2ndアルバム収録曲)→ファンクラブ設立(メンバーによるが)→再びソロ(ファンクラブ)イベント(3rdアルバム収録曲)といったある程度同じようなプロットのお話になっているのに対し、栞子のストーリーは同好会に入った後の栞子と、お互いに同好会に馴染んでいく様子、それから初めての楽曲『決意の光』が生み出されるまでの経緯が描かれます。

 

 一見すると、まだ少しものたりない感のある栞子のキズナエピソード。しかし、私はこの他のメンバーとは違う段階で始まる、そのステップこそが、栞子と『決意の光』のストーリーにおいて重要なのだと考えています。

 

 なんでもそつなくこなす栞子。その能力の高さは他の同好会メンバーも認めるところです。それはせつ菜との生徒会長選挙でも確かに証明されました。「人の適性を見極める」ことに優れた栞子。生徒会長選挙でもその力をいかんなく発揮し、敗れたせつ菜すらもその能力を認めるほどでした。

 栞子の生まれた三船家は、いわゆる「名家」。育ちのよい栞子は、多くの習いごとにも励んでいました。

 キズナエピソードでも、日本舞踊に励む栞子の姿が描かれます。生徒会の仕事、普段の習いごと、そして新たに始めたスクールアイドルの活動。そのすべてを、まったくパフォーマンスを落とすことなくこなす栞子の姿は、同好会のメンバーにとっても大きな刺激になっていました。

 

 しかし一方で、栞子は自身の目指すスクールアイドルの姿に悩んでいました。「どんな歌を歌いたいのか」。栞子は、その質問に答えを出すことができずにいたのです。

 栞子が聞くと、他の同好会のメンバーは、明確に「なりたい自分」の形を持っていました。それは、栞子にとって衝撃でした。自分は、なりたいスクールアイドルのイメージを持っていない......。一度は「スクールアイドルには向いていない」と結論を出すなど、栞子にとっては悩ましい問題でした。

 確かに、他の同好会メンバーは今となっては「理想とするスクールアイドル」像を強固に持っているように見えます。しかし、それは決して一朝一夕に手に入れたものではなく、それぞれ苦悩の末に手に入れたものであるということは、すでにこれまでみなさんが見てきたとおりです。まだ、栞子はその入り口に立っているだけなのですから、「なりたい自分」の姿が無かったとしても、決しておかしいことではありません。

 

 「人のことは見えるのに、自分のことはこんなにもわからない.......」。

 悩む栞子に声をかけたのはせつ菜でした。せつ菜は、栞子にどうしてスクールアイドルになりたいと思ったのか、そう問いかけます。

 栞子の答えはこうでした。

栞子「どうして......?そうですね......、

毎日の厳しい練習で磨きぬいたパフォーマンスで、たくさんの人の心を動かす姿に惹かれたから......でしょうか」

「スクールアイドル活動をすれば、私の気持ちも少しは上手く伝えられるようになるかもしれない、と思ったんです」

せつ菜「思いを伝えて......その後は?」

栞子「その後......。今より少しでも、善い世界に変えたいです。不幸な人がいない、そんな世界にしたいんです」

        スクスタ 栞子キズナエピソード4話より

 栞子がどうして「不幸な人がいない世界」を望んでいるのかは、正確なところまではわかりません。確かに栞子は、「皆が適性どおりに生きれば、不幸な人はいなくなる」と信じて、生徒会長をしています。そして、栞子にとって一番その「適性どおり」ではなく、決断によって不幸になった人は、栞子の姉、薫子であったはずです。

 しかし、栞子の「スクールアイドルフェスティバル」の成功に携わり、そして自分の気持ちと向き合ってスクールアイドルを目指すようになった今、その薫子に感じていた「不幸」であるという一種の思い込みは、ある程度解消されたはずです。それなのに、栞子はなお「不幸な人がいない世界」を望んでいます。その理由は、もしかしたらもっと根深いものが、きっと他にもあるのでしょう。しかし、今の私たちには推測のしようもないことです。

 

 しかし、その前の、栞子本人の目標は、私たちにもわかるような気がします。栞子は、持ち前の能力である「適性を見極める」という力を使って、様々な提案をしました。そして、それは確かに疑いようもなく正論でした。しかし、それがたとえ正論であったとしても、必ずしも誰もにとって受け入れるものというわけではありません。しかし、栞子はそのことがまだ、よく分かっていなかったのです。さらに、自分の正論が退けられる経験が積み重なった栞子は、いつのまにか他人を信じることができなくなり、また自分を信じることも出来なくなっていったのです。

 

   生徒会長として、徐々に追い込まれていく栞子。そんな栞子を救ったのは「あなた」でした。自分の意見が通らないことを半ば諦めている栞子に対して、「あなた」は決して栞子の意見を否定せずに、他の部活と折衝して妥協案を出す方向へと導いたのです。

  「あなた」は栞子にとって、久しぶりに出会った信用できる人だったのかもしれません。同好会に体験入部した栞子は、しだいに同好会メンバーへと心を開いていきました。

  

  そんな栞子が次に直面したのは、「あなた」と歩夢のすれ違いでした。しかし、栞子は「あなた」と歩夢の関係修復を信じて、最後までその機会に協力しつづけました。もうこの時、栞子のこころの中では、変化が始まっていたのかもしれません。

  絶望的に見えた、「あなた」と歩夢の関係。そして、スクールアイドルフェスティバルの開催。しかし、歩夢は、配信一つでその全てをひっくり返してみせたのです。「スクールアイドル」。その力を、栞子が思い知った瞬間でした。この時にもう、栞子の気持ちは半分決まっていたのだと思います。

  ついに「スクールアイドルフェスティバル」当日。姉・薫子との対話。それからステージで輝くスクールアイドルたち。栞子の気持ちは決まりました。栞子は、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会に入部、スクールアイドルとしての一歩を歩みだしたのです。

 「あなた」、歩夢、それから同好会のメンバー。みんなと出会った栞子は、人を「信じること」を、それから、方法が間違っていなければ、想いは人に伝わるんだということを知ったのです。

 

 栞子には、伝えたいことがあるのです。しかし、生徒会長になっても、それをうまく伝えることができませんでした。せつ菜とも、スクールアイドル同好会とも、それから他の部活の人たちとも、栞子は衝突してしまったのです。

 栞子がスクールアイドルをする理由、それは自分の想いをうまく伝えるためです。「少しでも善い世界」に、「不幸な人がいない世界」。栞子が理想だと思う世界をみんなに伝えていくためには、それを実現していくためには、これまでの方法では叶いません。栞子には「スクールアイドル」の力が、どうしても、必要なのです。

 

 

 自分の曲のイメージに苦しむ栞子。しかし、同好会のみんなの協力もあって、徐々にそのイメージが固まってきます。

栞子「まず、思いを伝えるためには、飾らずにいる必要があるのではと思いました」

「この前、みなさんから頂いた、たくさんの資料を見て感じたんです」

「みなさんが私をどういう風に見てくれているのか、それを飾らずに真っ直ぐに伝えてくれることが、どんなに嬉しいのかを」

「だから、私はまず、自分のことを真っ直ぐ伝えるところから始めることにします」

            スクスタ 栞子キズナエピソード6話より 

  「真っ直ぐ」。これが、栞子のスクールアイドルとしての個性、それから目標です。これまで、うまく自分の気持ちを伝えられなかった栞子。だからこそ、「真っ直ぐ」伝えることこそが、栞子がいま目指す道なのです。

 

栞子「ありがとうございます。でも......スクールアイドルとしての夢は、まだ見つかっていません。」

「より善い世界を作りたい、という漠然とした想いはありますが、そのためにスクールアイドルとしてこうしよう、ああしようと言えるものは、まだまだ模索中です

(中略)

「でも、私のように、欲しいものがふわふわとしていて不安に思ったり、焦ったりしている人も、きっとたくさんいるはずです」

「ですから、私と同じ不安を抱えている人たちに、今はそれでもいいんだよ、と、支えになれるような、そんな歌を歌いたいです」

「これはきっと、今の私にしか歌えない歌だと思いますから」

             スクスタ 栞子キズナエピソード6話より 

 栞子は、ラブライブ!初の「途中加入」のスクールアイドルです。私たちは、栞子がまだ、全くスクールアイドルではない時から、長い時間をかけて栞子を見てきました。「あなた」、そう、私たちと同じペースで、栞子は虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の物語を見てきました。その中で、栞子はさまざまなことを感じ、受け取り、変化して、ついにスクールアイドルとなる決断をしたのです。

 Aqoursのみんなのストーリーが「0から」のスタートであったとしたら、栞子のストーリーは「マイナスから」のスタートです。栞子は、最初は、スクールアイドルとしてのスタートラインにすら立っていませんでした。マイナスからのスタート。「あなた」と、歩夢と、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のみんなと出会って、今ようやく、栞子はスクールアイドルとしてのスタートラインに立ったのです。まだ、栞子は目指す自分の姿を見つけられていません。それは、まだ栞子がマイナスからゼロの地点に立って、歩き出そうとしているところだから、きっと、「あなた」も同じです。まだ未来像が描けないひとも、きっとたくさんいるでしょう。私もその一人です。栞子は、そんな「あなた」たちに寄り添って、二人三脚で同じ速度で歩いてくれる。そんなスクールアイドルなのです。

 栞子のストーリーは、「あなた」のストーリーと同じペースで、テンポで、タイミングで、流れていきます。始まりは、みんなより遅かったかもしれません。しかし、それゆえに「あなた」に寄り添えるのが、「あなた」と同じ速さで歩けるのが、栞子の強みなのです。

 『決意の光』は、栞子が今しか歌えない歌です。きっと、栞子が歌える歌は、これからもっともっと広がっていくでしょう。栞子の視界は、もっともっと、広がっていくでしょう。

 そして、栞子と同じスピードで歩く「あなた」。同じ悩みを抱える「あなた」も、栞子と同じスピードで変化していくのです。きっと、「あなた」も、これからニジガクのみんなからいろいろな刺激を、感動を、感情を、もらうことでしょう。そうやって歳月を重ねていけば、栞子と同じように「あなた」の物語も、きっと新たなステップに進んでいることでしょう。

 

 「たとえ今はまだ漠然とした夢でも

一歩前に踏み出してみれば明日は変わる」

             『決意の光』歌詞より

  明日、栞子は私たちの目の前で、最初の一歩を歩み出します。そして、それは私たちが一歩を踏み出す瞬間でもあります。ニジガクのみんなの輝きにこころ動かされて私たち。明日という日は、栞子と私たちの、二人三脚の一歩目を踏み出す日なのです。

 

 

「揺るぎないキズナ胸に 物語は次の舞台へ

そうここから輝き紡いでゆけ」

             『決意の光』歌詞より 

  さあ、行きましょう。明日は、私を含めた「あなた」の、栞子の、そして新生虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の、最初の一歩を踏み出す日です。もたもたしていたら、みんなに置いていかれちゃいますよ?もう「その瞬間」を目撃する、こころの準備はできていますか?

 「トキメキ」をもらったあなたが、新しい物語を、輝きを、紡いでいくための明日。そして明後日。

 皆さんの虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会2ndライブが、素敵な一歩目になりますように。

ニジガクカウントダウンウィーク! #2 Margaret

 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会2ndライブまであと2日!

 6回目の「ニジガクカウントダウンウィーク!」。ついに、ここまで来ましたね......!

 前回記事は下に貼っておきます。カテゴリー「ニジガクカウントダウンウィーク」でまとめてみることもできるので、ぜひ!

 

tsuruhime-loveruby.hateblo.jp

 

 今日9月10日は、中須かすみ『Margaret』。

 

 

 私にとって一番の推しであるかすみちゃん。そんなかすみちゃんに関しては、既に『無敵級*ビリーバー』発売に合わせて、考察記事を発表しました。

tsuruhime-loveruby.hateblo.jp

  この記事では、『無敵級*ビリーバー』の歌詞やアニメーションPVを軸に、スクスタのメインストーリー、かすみちゃんのキズナエピソード、サイドエピソード、さらには「ニジガクみゅ~じっくウィーク!」で先行公開されていた3rdアルバム『Just Bellieve!!!』収録曲の『Margaret』のワンコーラス分(一番)の歌詞を耳コピし、それらを総合して「中須かすみ」というスクールアイドルを、いやひとりの女の子を、考察したものです。

 一方、これまで連載してきた「ニジガクカウントダウンウィーク!」は、基本的にはそれぞれのメンバーのサイドストーリーを1話から21話までなぞって、それから3rdアルバム収録曲へと進んできました。

 既にキズナエピソード18話までは上記の記事で言及しています。改めて読み返してもいいのですが、現状私のかすみちゃんへの認識は上の記事から変わったということではありませんので、本記事はキズナエピソード19、20、21話と『Margaret』のフルコーラスを題材に、上記の記事の補足という形にさせていただきたいと思います。長くて読みごたえがありすぎるかもしれませんが、ぜひ上記の記事を読んでいただければと思います。自信作ですので......!

 もちろん、考察記事というのは書き手の作品にとってはコバンザメでしかありません。上記の記事も、今回の記事も、これからスクスタや、あるいはアニメなどでかすみちゃんに関して様々な描写がなされていけば、そのかすみ像は砂上の楼閣のように崩れてしまうこともあり得ます。しかし、ある意味で考察記事というのは、対象のキャラクターを自分の人格に投影して、キャラクターという鏡越しに「そのときの自分」と向き合う行為でもあると思っています。「物語」というのは、いつだって自分を映す、澄み切った鏡なのです。いつも「鏡」と向き合うかすみちゃんのように、私も中須かすみという「鏡」にまっすぐ向き合って記事を書いていきたいと思います。

 前置きが長くなりました、それでは、行ってみましょう!!

 

※本記事は、アプリ「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル オールスターズ」、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会2ndライブ公式パンフレット、雑誌『LoveLive!Days虹ヶ咲SPECIAL』、書籍『にじよん』などを参考にしており、それらの内容への言及、引用、ネタバレを含む場合があります。予めご了承ください。

M9:『Margaret』 「ヴェールを脱いだ私、かわいいですか......?」


【ニジガクみゅ〜じっくウィーク!〜1週目〜】Margaret / 中須かすみ(CV.相良茉優)

  「中須かすみは、素顔を見せない」。

 完璧な「かわいい」で覆われたかすみの素顔は、まだ誰も見たことがない。

 これまで、メインストーリ―でもキズナエピソードでも、完璧な「かわいい」を身に纏ったかすみしか、私たちは見たことがなかった。確かに、「かわいい」はかすみの最大の個性であり、トレードマークであり、「かすみそのもの」とっても過言ではないかもしれない。しかし、同時に私たちはかすみの「かわいさ」に僅かな綻びを感じていた。そう、きっと素顔のかすみが、その「かわいさ」のヴェールの裏側にいるのだと.......。

 

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悩むかすみ。スクスタかすみキズナエピソード18話より。

 キズナエピソード18話は、かすみと「あなた」の物語のなかで、一つの大きな転機となった。これまでどんなことがあっても弱さを、そして本心を見せることのなかったかすみが、初めて「弱さ」を見せたのだ。

 ファンクラブ会員が思ったように増えないかすみ。時間が経つとともに、それは他のメンバーとの明確な差ともなり、かすみに焦燥感を与えていった。

 かすみの本質のひとつは、既に触れたように「自信のなさ」。そしてもうひとつの本質は、「自己評価の高さ」にあるのだと思う。自分の可愛さに自信のないかすみ、しかし、一方でかすみには「自分ならやれる」という自己評価の高さがあった。もちろん、この自己評価の高さは、かすみがどんな困難に直面してもどうにか折れずに立ち上がる強さでもあったが、一方でかすみにとって、理想と現実の、徐々に埋めようがなくなっていくギャップは、耐えきれないものとなっていったのだ。

 

 「あなた」は、そんなかすみを、決して追及することはなかった。ほんとうは、踏み込んでかすみの心の奥深くを知りたい。しかし、それはかすみにとって、まだ避けなければならない事態なのだと思う。逆に言えば、まだかすみの本心に斬りこむのは危険なのだ。「あなた」は、それを理解した。だからこそ、「あなた」はかすみを励ましただけだった。一人でも、かすみを好きでいてくれる人がいる。それだけで、かすみは立ち直ることができることを知っていたのだ。

 

 ところで、前回記事では触れなかったが、補足的に毎日劇場を紹介したい。7月19日の毎日劇場である。

ことり「 で~きた! かすみちゃん、鏡見てみて?」

かすみ「 ……! か、かわいい! かすみんが、かわいすぎます……っ!」

ことり「 かすみちゃんてなんでも似合っちゃうから、お洋服を選ぶの大変だったよ~。でも、ことり的サマースタイルは、これ!」

かすみ「うわあああ~! かわいいかわいいっ! ほんとにかわいいですっ、ことり先輩!」

ことり「 ふふ、ちょっとだけメイクもしたもんね♪
かすみちゃんはビタミンカラーが似合うから、元気いっぱいの夏メイクが似合うよ」

かすみ「 私、こんな自分、初めて見ました……」

ことり「 かわいいかわいいかすみちゃん、これから、ことりと一緒にお出かけしませんか?」

かすみ「え! このお洋服を着てお出かけしていいんですか?」

ことり「うん♪ こんなにかわいい恰好してるんだから、遊びに行こう~!」

かすみ「ことりせんぱぁい!!」

       スクスタ 毎日劇場 2020年7月19日 「ことりせんぱぁい……♡」より

  これまでで一番好きな毎日劇場かもしれないこの回。ことりとかすみのあまりに愛おしい会話に見落としてしまいそうになるが、大事なポイントがあった。

 そう、かすみの一人称である。想像以上にかわいくなった自分に驚いたかすみは、一瞬素の姿を見せたのである。「私」。学園や同好会での一人称は「かすみん」だが、それがある意味では「作られたキャラクター」であることの、これがひとつの証左であろう。ところで、ここで見せたかすみの素顔は、キズナエピソード18話での「追い込まれたかすみ」の素顔とは、質が違うものだと思う。かすみが、取り繕わずに「私」として我々に向き合ってくる瞬間がいつになるのだろうか。いつか来るのだと、今は信じていたい。

 

 話を戻そう。18話で素の部分をみせたかすみだが、あなたの励ましもあって、すぐにもとのかわいいかすみに戻る。そんなかすみが言うには、次のライブでは「アンニュイ」なかすみで、みんなを驚かせるというのだ。

 かすみはこう言う。

かすみ「ほら、この前、アンニュイなフリをしたかすみんを見た先輩の反応!あそこからピーンッ!ときたんです!」

            スクスタ かすみキズナエピソード19話より

 あれは決して、フリではなかった。かすみは、ごまかしているだけだ。

 しかし、「あなた」は素のかすみが見れたことが嬉しかったのだろう、それが表情に出ていたらしい。かすみがこれまで頑なに封印していた「弱さ」を見せたにもかかわらず、「あなた」は悲しんだり遠ざかったりしなかった。それは、かすみにとっては大きなことだった。

 かすみの中で、確かに化学反応は進んでいるようだった。今はまだ、素顔のかすみを見せるのは、ちょっとした秘策。そう、ファンクラブの会員を喜ばせたり、会員の数を増やしたり......。まだ、かすみの中では、少し不本意な選択肢なのかもしれない。

 しかし、みんなは必ず素顔のかすみを受け入れるだろう。むしろ、もっともっと喜ぶに決まっている。まだ、かすみにはそこまでの自信はないかもしれない。しかし、それは確実に起こる。それが、かすみの心の中で、大きな変化を起こしていくに違いないのだ。

 まだ、素顔を見せるのは不安なかすみ。しかし、これはかすみにとっての第一歩だ、いつか、かすみが被った「かわいいかすみ」のヴェールを完全に取り払って、まっすぐに、飾らずに、私たちに向き合ってくれるまでの、そんな長い物語の、第一歩なのだ。

 

 ライブは大成功。「あなた」は、ファンクラブ用のこのイベントの動画を、アップロードしてみんなに見てもらうことを提案する。かすみは断らなかった。ファンクラブのみんなが素顔のかすみを受け入れてくれた。それは、かすみのなかで、一つの自信となったのだ。

 

 「あなた」の提案も大成功だった。かすみの動画は、大反響を呼んだ。かすみのファンクラブの人数も激増。ようやく、かすみのスクールアイドルの物語は、動き始めたのだ。

 同好会のみんなの前では、それまでと同じように振る舞うかすみ。しかし、かすみの中で確かな変化が始まっていることは、疑うまでもないことだと思う。

 

 

 『Margaret』は、そんなかすみが見せる「アンニュイ」なかすみ。と、本人は言っているが、それは恥ずかしさ故だろう。この曲は、まごうことない「素顔のかすみ」の曲だ。

「聞いて!

 泣き顔も笑い顔も 全部見て欲しい

 たまに出る変な顔も 笑って許してね

 いつも好きでいてくれる君にとって 一番でいたい

 想いのままを歌に乗せたよ

 これからも頑張ろう、君のために!」

                  『Margaret』歌詞より 

  それまでのかすみが、自分が「かわいい」ことを主張するときに、自分の努力、あるいは身につけているものなどを挙げて、自分自身のことを一つも挙げていないというのは、既に前の記事で述べた通りだ。

 しかし、『Margaret』は違う。劇的に違う。サビに入って真っ先に出てくるのは、繰り返し出てくるのは、かすみの顔。それも、笑顔だけではない。泣き顔。変な顔。これまでかすみにとっては不本意だった完璧ではないかすみも、高らかに見て欲しいと歌う。かすみ自身を見て欲しい。初めて、かすみはこう言ったのだ。

 一見すれば、ただ「自分を受け入れて」という歌詞かもしれない。しかし、かすみにとってこの歌詞は意味が違う。初めてかすみは、自分の素顔と向き合えたのだ。

 

「聞いて!

全部伝えたとしても 離さないでほしい

大事にしてきたものよりも 大事なものできたよ

 

ヴェールが包む 隠れた私

驚かせちゃってほんとにごめんね

でもどうしても繋がりたいから!

スペシャル・マーガレット!」

 『Margaret』歌詞より       

 「大事にしてきたものよりも 大事なものできたよ」。

 ここは、少し難しい。かすみが大事にしてきたものとは何か。それは「かわいい」だろう。「かわいいだけは、負けるわけにいかない」。それがかすみの意地だった。唯一のアイデンティティーだった。しかし、それは同時に足枷でもあった。

 一番じゃなければいけないというこだわりは、結果の出なかったかすみを追い込んだ。かすみが唯一のアイデンティティーだと思っていたものは、崩れ去ろうとしていたのだ。

 しかし、かすみは気づいた。「完璧な、一番のかわいさ」ではなくても、かすみのことを肯定してくれる存在がいることに。それまで、かすみは自身のない、嫌いな素顔の自分をみせてしまったら、(それはもしかしたら昔のように)、みんなが離れていってしまうのではないかと怖がっていた。

 

 かすみは自分に魔法をかけた。かわいいの魔法を。

 

 完璧なかわいいを演じるかすみは、嫌いな自分と向き合わなくてよくなった。過去の自分と決別した。かすみは「かわいい」のヴェールを被った。それは、言い換えれば「殻」のようなものだった。かすみを守るためのものだった。

 しかし、「かわいい」のヴェールは、皮肉にもかすみを苦しめた。ヴェールを被ったかすみは、ほんとうのかすみではない。偽物のかすみがいくら褒められても、それはかすみにとってほんとうの自信にはならない。それに、素顔が見えないかすみは、人によっては魅力的に見えないと感じたのかもしれない。血が通っていないような怖さが、あったのかもしれない。だからこそ、かすみのファンクラブは、思ったより広がらなかった。

 

 しかし、かすみは変わった。かすみは、少しづつヴェールを脱ぎ始めたのだ。かわいいの魔法は、解け始めた。しかしそれは、かすみにとって不都合になってしまった「殻」を、脱ぎ捨てることでもあった。

 ともすれば、この曲の私にとってのイメージは、ウエディングドレスに身を包んだかすみが、そのヴェールを取り払う瞬間の、その瞬間のメロディーだ。ヴェールを取り払ったかすみが、どんな顔をしているかはわからない。いや、そんなことは問題ないのだ。どんなかすみの、とびきり魅力的でかわいいんだということを、そのままでいいんだということを、息が切れるまで伝えたい。かすみのすべてを、そのままに受け入れて抱きしめたい。その気持ちは、ようやくかすみに届くようになったのだ。

 

 

 ところで、「スペシャル・マーガレット」という歌詞。それから『Margaret』という曲名。どうしてマーガレットなのだろうか?

 マーガレットには花言葉がある。基本的なマーガレットの花言葉は、「真実の愛」とか、「信頼」というイメージだ。

 しかし、黄色のマーガレットには、「美しい容姿」という花言葉がある。これは、かわいいかすみちゃんには、ピッタリな言葉だと思う。「これまでのかすみ」を表すなら、これでぴったりだ。

 しかし、『Margaret』を歌うかすみは、きっと純白のドレスに身を包んでいるのだと思う。白のマーガレットの花言葉は、「心に秘めた愛」。かすみの素顔を、心の中の気持ちを表すには、こちらの方がぴったりだ。

 事実、今回のかすみのライブ衣装では、黄色はかなり少なくなっている。そして、かすみが着ているのは、ウエディングドレスに見えなくもない、フリルの綺麗な白のドレスである。

 ちなみに、よく見ると胸元のコサージュには、黄色のマーガレットが使われている。そして、ピンクやオレンジ(?)のマーガレットも。どうして白いマーガレットが無いのか。それは、白いドレスに身を包んだかすみ自身が白のマーガレットだからであろう。

 さらに、よく見ると、花弁の小さな白い花が添えられている。これはかすみ草ではないだろうか。

 かすみ草は、花嫁のブーケや花冠にも使われる。やはり今回の『Margaret』のイメージは、ウエディングドレスに身を包んだかすみなのだと思う。

 

 ヴェールを脱いだかすみを迎えに行くのは、私たちだ。待っている時間はない。素顔のかすみを全身で受け入れるための準備は、もうできているはずだ。

 

 

 

 最後の花言葉とかかすみ草とかは、ちょっと自信ないかなあ......。こじつけといえばこじつけかも。それでも私の中での『Margaret』のかすみは、純白のウエディングドレスを着てるんだけどねえ。

 ライブ当日の相良茉優さんのパフォーマンスも楽しみですね。相良さん、ほんとうにかすみちゃんそのものなんだよね。まさに一心同体と言うべきか......。『無敵級*ビリーバー』の相良さんも見れるんでしょ?こりゃ、いのちがいくつ必要なんだか.......。

 最後まで自分の妄想を引っ張りますが、2ndライブの『Margaret』ステージでは、相良さんがヴェールを被って出てきたら嬉しいなあ。曲が始まるとヴェールを脱ぐ相良さん。おっと、妄想はこのくらいまでにしておきましょうか。

 

 ライブまであと2日。今日は『Margaret』についておはなししてきました。

 もうすぐですね。楽しみだな。明日は生放送もあるみたいだしね。高まります。

 それではまた、明日お会いしましょう。

 ライブまで一日一日、頑張っていきましょうね!

 こばとん 

ニジガクカウントダウンウィーク! #3 やがてひとつの物語/Say Good-Bye 涙

 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会2ndライブまであと3日!

 5回目の「ニジガクカウントダウンウィーク!」。前回記事のエマちゃんは、たくさんの反響をもらえました!励みになります.......。まだ読んでない人は、下に置いておくので読んでね。

 

tsuruhime-loveruby.hateblo.jp

  今日9月9日は、桜坂しずく『やがてひとつの物語』、そして上原歩夢『Say Good-Bye 涙』。それでは、早速行ってみましょう!!

 

※本記事は、アプリ「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル オールスターズ」、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会2ndライブ公式パンフレット、雑誌『LoveLive!Days虹ヶ咲SPECIAL』、書籍『にじよん』などを参考にしており、それらの内容への言及、引用、ネタバレを含む場合があります。予めご了承ください。

 

M7:『やがてひとつの物語』  虚構の世界は、いつか真実への漸近線となる


【ニジガクみゅ〜じっくウィーク!〜3週目〜】やがてひとつの物語 / 桜坂しずく(CV.前田佳織里)

 「演技派」系スクールアイドルの桜坂しずくちゃん

 スクールアイドル同好会と演劇部、二足の草鞋を履くしずくちゃんは、演劇にかける情熱も相当のもの。空想することも好きらしく、白馬の王子を待つ乙女チックな面も。

 

 ところで、少し話は変わりますが、「アイドル」って不思議じゃないですか?

 俳優は、売り物にしているのは「演技」です。求められることは、演じるキャラクターになり切ること。もちろん、演技にはそれぞれの個性があり、哲学があり、表現方法があります。しかし、最終的に求められていることは一つ。それは、「脚本に描かれたキャラクターを、よりリアルに演じること、それだけです。

 しかし、アイドルはどうでしょう。一般的には、アイドルは「人格そのもの」を売り物にします。生身の売り物です。これは璃奈ちゃんの記事でも書きましたが、アイドルというのは「人格そのもの」が魅力であるとされるものです。

 パフォーマンス。さらには裏の努力や、果ては日常生活まで。アイドルはとにかく「生身の自分」を商売道具にします。ステージだけが表現の舞台というわけではないのがアイドルです。同時に、ファンはアイドルのすべてを求めます。隅から隅まで、自らの知るところとしたい。そのすべてを愛したいというのが、アイドルのファンの特性です。

 しかし、それはどこかで矛盾しています。アイドルは、「生身の自分」を売り物にしながら、どこかで「生身の自分」を演じているのです。

 「アイドルはお手洗いに行かない」というのも、また典型的なアイドルへのイメージです。いえ、決してアイドルがお手洗いに行かないわけではありません。アイドルとて人間ですから。しかし、多くの人間の愛情を、理想を、希望を力にして、その上に立っているアイドルに課せられているイメージというのは、結果的に人間離れしたものになります。それは「演じないと出せない」ものです。ニジガクでは、かすみがその最たるものと言えるかもしれません。もちろん、演じているうちに自分になっていくということもあります。しかし、やはりそれが「本来の姿」ではないことは疑いようがありません。

 もちろん、アイドルが十人十色であるのと同じようにファンも十人十色ですから、アイドルに求めるものは人によって違うでしょう。しかしやはり、アイドルというのはその根幹に矛盾した哲学を内包しているものです。そして、実はその幻影と矛盾こそが、アイドルをさらに輝かせる魔法になっていると思うのです。

 

 脱線が過ぎましたね。しかし、実はしずくも、この「アイドルの矛盾」の間で、悩んでいました。

 演劇を第一に生きるしずく。そんなしずくにとってスクールアイドル活動とは、「自分がすてきだと思うスクールアイドルを演じること」。しかし、それはアイドルとしては少し違和感のあることでもありました。「あなた」が、違和感を感じてそれをしずくに伝えたのも、すでに「アイドル」がどういうものか上で見てきたとおり、決して不思議なことではありませんでした。

 しかし、しずくの迷走はここから始まってしまったのでした。「自分自身を出す」ことを意識して臨んだライブ。お客さんの熱量は大きいものでしたが、しずくは不完全燃焼でした。しかし、Aqoursやμ'sのメンバーと話すうち、徐々にしずくは「自分の個性」がどこにあるかが分かってきました。そう、それは「演じること」。演じることそれ自体が、しずくそのものなのです。

 しかし、それは一方で、しずくの強みにもなり得るものでした。誰かを演じる。それは、より多くの経験を体験することであり、より多くの人生を生きることであり、さらに、それは表現に無限大の可能性があることを指しているのです。

 『オードリー』は、そんなしずくの可能性を示した曲でした。『オードリー』には、確かにしずく自身の気持ちが投影されていますが、しかし曲の主人公はしずく本人ではありません。

  「苦悩なんて見せちゃいけない

  そうよ、そうよわたしは大女優」

                『オードリー』歌詞より

  大女優に近づいているのは、しずくなのか、それともしずくの演じる誰かなのか......。どちらなのか、両方なのか。それは私たちにはわかりません。しかし、この曲は、しずくの苦悩を乗せた人物の物語です。そして、しずくはこの子になるために努力を重ねます。

 そう、いつか、この子としずくは完全に同一のものになります。しずくは、この子を完全に「演じる」ことを目指しているのですから。いまは50%、いや40%だったとしても、それはいつか99%に、限りない漸近線になります。

 アイドルというのは、素の自分と演じる虚構の自分の、微妙な隙間にあるのです。「理想の自分」を演じるしずくは、一見アイドルとしては不思議な姿に見えるかもしれませんが、むしろしずくこそ「アイドル」をしているのだとも、言えるかもしれません。

 

 1stライブでも、「しずくの強み」は、これ以上ないくらいに発揮されました。

 真っ赤なコートと傘を手にステージに表れたしずく役の前田佳織里さん。そこで見せた『オードリー』のパフォーマンスは.......。

 これは、言葉にするより、見てもらった方が早いかもしれません。下の動画を見てください。これが「ニジガクのライブ」です。


【ダイジェスト】ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 First Live “with You” Blu-ray Memorial BOX

 

 今度はミュージカルにハマったしずく。「好き」を力にすることが得意なしずくは、次のライブではミュージカルをテーマにすることを決めます。

 「演じること」。自分の道を見つけたしずくは、目指すスクールアイドル、そしてパフォーマンスも、少しづつ具体的なものになっていきます。

しずく「私がみんなに見せたい世界観というのは、「この世界は演劇そのもの」ということなのです。

     スクスタ しずくキズナエピソード 話より

 誰もがキャラクターを演じている......。だからこそ、なりたいと思えば、どんなキャラクターにもなれる。しずくが伝えたいメッセージは、決まりました。そしてこれは、しずく自身がステージの上で、いろいろな役を演じて「その人」になりきることで、みんなに伝わっていく。しずく自身が証明していける。そんな目標です。

 

 目指す場所のきまったしずく。そんなしずくは、「あなた」への想いを、次のライブで歌うことに決めます。主人公は、しずくであってしずくではない。しかし、これだけ具体性をもった、身近なテーマをもったキャラクターを演じることは、 それだけ『オードリー』の時よりも、しずくが自らの理想像に近づいたということも意味しています。

 ところで、この歌詞は「あなた」に向けて書かれたとしずくははっきり言っています。「重ねようあなたと私のストーリー」、「きっと一緒ならどんな結末でもハッピーエンドに終わる」、「想いを全て伝えられたらカーテンコールが起こる」......。これは完全に、しずくから「あなた」への、ラブレターといってもいい内容ではないでしょうか?

 もしかしたら、しずくが「誰かを演じて」いるからこそ、これだけの気持ちを伝えられるのかもしれません。それに、しずくに詰め寄ったとしても、「これは私であって私でないので......」と、はぐらかされてしまうかもしれません。

 しかし、この曲を披露し終わったあと、きっと歩夢とかすみは黙っていないでしょう。新ヒロインが名乗りを上げました。「第三章」は、物語の「転」の部分。どんなストーリーが、しずくと「あなた」を待ち受けているのでしょうか......?

 

 もちろん、2ndライブでの前田さんのパフォーマンスも注目です。今回はミュージカルですが、しずくの衣装も完全にそのイメージのもの。きっと舞台上でも、「ミュージカル女優」さながらの演技がみられることでしょう。セリフパートもあるこの曲。しかし、小さな体でも、信じられない表現力を見せてくれる前田さんは、まさにしずくちゃんそのもの。きっと、「大女優」として私たちを魅了してくれること、間違いなしでしょう!

 

M8:『Say Good-Bye 涙』 上原歩夢の「自立宣言」


【ニジガクみゅ〜じっくウィーク!〜2週目〜】Say Good-Bye 涙 / 上原歩夢(CV.大西亜玖璃)

 「まごころ」系スクールアイドルの上原歩夢ちゃん。

 今回のスクスタでは、スクフェスとは違い明確にプレイヤーとしての「あなた」がストーリーの根幹にかかわっています。そんな中、歩夢は「あなた」の幼馴染として登場する、ラブライブ!初の幼馴染キャラと言ってもいいでしょう。

 

 そんな歩夢は、これまでのラブライブ!のメインキャラクターとは一線を画す存在。イメージカラーも、髪色も、性格も、属性も。そのすべてが異なっています。

 歩夢はまさに、「普通の女の子」。特別な女の子ではなく、普通の女の子がスクールアイドルを目指す。もともとはスクフェスの「転入生」から選ばれた3人を始まりとしており、「スクスタ」だけをフィールドにしてアニメ化の予定もなかった「普通な」彼女たちにとっては、これ以上なく相応しいリーダーだと思います。

 

 歩夢の性格はまさに王道ヒロイン!しかし、「にじよん」でせつ菜が「好感度は上がりやすく下がりにくいタイプ」と評していますが、なかなかそう単純でもないようで......?

 そうなんですよ。もうひとつの歩夢の側面としてたびたびフィーチャーされるのが「メンヘラ」。これでは言葉が悪いですが、しかし、歩夢というキャラクターを理解する上で、この「愛の重さ」は外せないと思います。そう、歩夢は、「あなた」のことが、少し常軌を逸する時があるほどに大好きなのです......。

 

 「あなた」に誘われてスクールアイドルを始めた歩夢。しかし、それは決して歩夢自身が「スクールアイドル」になりたい!という強いパッションを持っていたわけではありませんでした。この点では、幼馴染の千歌と一緒に部活がしたかった曜と、まったく同じと言ってもいいかもしれません。

 しかし、「衣装好き」という側面をもつ曜に対して、歩夢は特に、スクールアイドルに直接つながっていくような「理由」を持っていません。そもそも、これまで明確に歩夢の趣味として特別言及されたのはスマホゲームだけ。あとは、家事にまつわることが大半。編み物に料理、アクセサリー作りなど、メインストーリ―では歩夢の日常生活にまつわるようなことに言及はありますが、「それ自体」が歩夢の趣味というわけではなさそう。これらを享受する人がいて初めて、歩夢はやりがいを感じているのではないか。そんな気がします。

 そう、上原歩夢という女の子は、99%が献身性で成り立っていたのです。そして、その献身性のほとんどは、「あなた」へと向かっています。言い方を変えれば、歩夢の意思決定は完全にあなたに依存している、といっても過言ではないでしょう。

 

 スクールアイドルすらも、歩夢にとっては「あなた」と一緒にいるための手段に過ぎなかったのでしょう。この問題は、歩夢自身のキズナエピソードにも、さらにはメインストーリーにも、深刻に関わってきます。

 歩夢がスクールアイドルに対する本質的な情熱を持っていなかったことは、キズナエピソードで示唆されます。

 スクールアイドルのイベントに出場した同好会メンバー。そして、このイベントは、ファンの投票によって勝ち負けの決まるシビアなもの。しかし、歩夢の努力を信じる「あなた」は、ここで歩夢がすこしでも勝ち上がって、自信をつけていくことに期待します。

 しかし、結果はまさかの一回戦敗退。同好会メンバーでも最下位の成績。ショックを受けていないかと心配する「あなた」ですが、歩夢はあっけらかんとします。

歩夢「あなたと一緒に頑張って、その成果を披露する。

それがとっても楽しかったから、順位とか勝ち負けとかは特に気にならないよ」

        スクスタ 歩夢キズナエピソード5話より

 たしかに、スクールアイドルは勝ち負けだけではないもの。しかし、全く悔しがらない歩夢に、「あなた」は違和感をおぼえます。

 

  もどかしいのは、「あなた」の歩夢の距離感です。他のメンバーに対しては、いつも鋭い「あなた」。しかし、幼馴染ですっと一緒にいる歩夢に対しては、どうも客観的な立場に立つことができません。

 本来、プロデューサーというのはアイドルにとって客観的な存在でなければいけません。アイドルの魅力を、状態を、知りながらにして客観視し、正しい方向にアイドルを導く。盲目的になってしまったら、正しい方向にアイドルを導くことはできません。

 

 しかし、歩夢が「あなた」に対してあまりに盲目的であるのと同じように、「あなた」も歩夢に対して盲目的なのです。結果として、歩夢と「あなた」は、時に激しくすれ違うのです。

 メインストーリ―では、「スクールアイドルフェスティバル」の成功に向かって、失敗を取り戻そうとのめり込む「あなた」と、自分の気持ちを分かってもらえなかった歩夢は激しくすれ違い、歩夢は遂にスクールアイドルを辞めると決断してしまいます。

 歩夢の背景が分かっていなければ、「スクールアイドルフェスティバルはそこまで大切なものなの?」と問いかけ、自分の気持ちが後回しになってしまったことに怒る歩夢は、あまりに自己中心的に見えてしまいます。しかし、そうではないのです。歩夢は「あなた」のためにスクールアイドルをしています。歩夢にとってのモチベーションは、「あなた」に見てもらえること。「あなた」と一緒にいられること。それだけなのです。それに、歩夢をスクールアイドルに誘ったのは「あなた」です。決して、歩夢自身が、強い意志をもってスクールアイドルになりたい!と考えていたわけでは無いのです。

 

 歩夢の持っている「普通の女の子」という特性は、確かに「スクールアイドルへの強い情熱」があるわけでもなく、「強い個性」があるわけでもない。そうなのですが、歩夢の心のなかにはあまりにも深い空虚が広がっています。歩夢の「献身性」は、歩夢自身の最大の魅力の一つですが、同時に「それに応えて、歩夢自身の空虚を埋めてくれる」存在を必要としているのです。

 

 メインストーリ―において、「あなた」と歩夢の関係を取り持ってくれたのは栞子でした。栞子は、当時同好会のメンバーではありませんでした。それに、歩夢とも、それから「あなた」とも、それぞれ個人的な関係を持っていました。

 栞子は、この二人の間の関係を取り持つには、まさに適任でした。そして実際に、栞子は歩夢に、「あなた」への想いを伝える場所を用意することによって、関係を修復し、さらにそれが「スクールアイドルフェスティバル」の成功へとつながったのでした。

 これは、第三者でなければなしえないことでした。10人目のメンバーとして遅れてやってきた栞子でしたが、むしろこの時点で同好会の内輪の人間だったとしたら、この問題は解決できなかったかもしれません。

 

 課題はまだ解決していません。この課題は、彼方と遥の間の課題と似ています。そう、歩夢に求められるのは「あなたからの自立」。スクールアイドルとしての独り立ち。それこそが、歩夢が次に目指す課題でした。

 幸い、ガーベラの花を使ったユニークな企画も奏功し、歩夢のファンはすこしづつ増えていきました。「あなた」にいつもしているように、「まごころ」を込めたファンサービスは、一歩一歩進む歩夢の速度に合わせて、少しづつファンを増やしていったのでした。

 

歩夢「あのね、今までの私って、いつも自信がなかったの。

なんでみんな、こんな私のこと応援してくれるのかなって、不思議に思ってた」

(中略)

「みんなが応援してくれる私のことを、私自身も好きになりたい。私、素敵でしょ?って自信を持って言えるようになりたいって思ったの」

                歩夢 キズナエピソード20話より

 まだまだ、歩夢の自立は始まったばかりかもしれない。しかし、ファンをふれあい、そのあたたかさを知ることによって、少しづつ「自信」が、歩夢の中の空虚を、満たしてくれるようになり始めた。いつか、自分で心の空虚を埋めることができるようになったら、その時歩夢は「あなた」への依存から解き放たれる。自分ひとりで歩けるようになる。

 

 これは、歩夢が一人で歩いていけるようになれるまでのストーリーなのです。

 

 『Say Good-Bye 涙』は、そんな歩夢の「独立宣言」ともいえる曲。

「いつもそんな気持ちの私だけど

あなたがくれる優しさに

寄りかかって 甘えていたのかな?

この足で踏みださなくちゃ」

             『Say Good-Bye 涙』歌詞より

 歩夢が作詞したこの曲は、まっすぐに歌う歩夢らしい曲。キズナエピソードのストーリーを歌詞でも丁寧になぞっています。

 そして、歌詞からもやはり、その「独立宣言」の強い意志が、しっかりと伝わってくるのです。涙を見せないのも、ため息をつかないのも、「あなた」にはもう、甘えたりなんかしないから。「あなた」に1から10までかまってもらえなくても、歩夢はひとりで歩けるから。

「頼りなくてごめんねなんて

 もう二度と言わないよ絶対」

             『Say Good-Bye 涙』歌詞より

  「二度と」、と「絶対」。強い否定を二度重ねることで、歩夢の強い決意はしっかりと私たちに伝わってきます。自分に自信のない女の子が、みんなから勇気を、自信を、愛情をもらって、一人で歩きだせるようになる。そう、歩夢の、ニジガクのストーリーは、こういうストーリーなのです。

「特別じゃない 普通の女の子

だって変われるんだ絶対」

              『Say Good-Bye 涙』歌詞より

 

 

 上原歩夢役の大西亜玖璃さん。彼女はまさに「上原歩夢」そのものであると言っていいほど、歩夢ちゃんとの共通点に溢れています。

 なにより、実力派の久保田さん、村上さん、鬼頭さん。それぞれに個性が強い前田さん、相良さん、楠木さん、指出さん、田中さんというメンバーの上に立つのが、大西さんであることが、「ニジガク」における歩夢ちゃんそのものとシンクロしています。それに、なにより、大西さんは努力を惜しみません。彼女がどれだけ成長したか、私たちはよく知っています。新メンバーも迎えたこのライブ。ニジガクキャストの「先輩」として、「リーダー」として、どんなパフォーマンスを見せてくれるか、今回も楽しみですね!

 

 

  ライブまであと3日。今日は『やがてひとつの物語』と『Say Good-Bye 涙』についておはなししてきました。

 どちらも「ヒロイン属性」のしずくと歩夢。「あなた」へまっすぐ想いを伝えるしずくと、「あなた」に甘えずに独立を目指す歩夢。アプローチは違いますが、より成長したふたりを、2ndライブで見ることができそうですね!

 それではまた、明日お会いしましょう。

 ライブまで一日一日、頑張っていきましょうね!

 こばと